27.1.2017
「ゼニス」の時計には2つの魅力がある!! ~其の二、男心をくすぐるデザイン「1969ダイヤル」「オープン」~
Komehyo
ブログ担当者:前川
前回の投稿
「ゼニスの時計には2つの魅力がある!! ~其の一、名機“エルプリメロ”~」
で、ゼニスの時計には2つの魅力があると紹介しました。そして、その一つの要素「名機“エルプリメロ”」について書かせていただきました。
今回は、ゼニスの魅力のもう一つの要素である「男心をくすぐるデザイン」について述べさせていただきます。もちろん様々なデザイン面の魅力を持つメーカーですが、以下の2つは現在のゼニスを代表する人気デザインです。
<現在のゼニスを代表するデザイン>
① 1969ダイヤル
② オープン
今週はこの2つのデザインについて紹介いたします。
■“1969ダイヤル”の登場
前回書かせていただきましたが、かつてよりゼニスはムーブメント製造に長けた時計メーカーでした。その代わり、外装のデザインは比較的シンプルでスタンダードなものが中心でした。
↑ヴィンテージゼニスはシンプルデザイン
しかし、1960年代から1970年代にかけて、時計業界ではアバンギャルドなデザインが流行します。もちろんゼニスのデザインにも影響がありました。そんな中で生み出されたゼニスの名作デザインがあります。それは初期のエルプリメロ搭載モデルに採用された“1969ダイヤル”と呼ばれる文字盤です。これは1969年に登場した初期のエルプリメロ搭載モデルに採用されたデザインですので、そのような通称で呼ばれます。
クロノグラフは“経過時間を計る”機能です。そのため、経過時間を示すための針である“積算計”があり、通常のシンプルな時計よりも針が多く設けられます。針のいくつかは文字盤上で“小さな針”として存在し、その“小さな針”の周りに目盛りが与えられます。つまり、文字盤の上にもうひとつの“小さな文字盤”があるような状況になり、これらを“インダイヤル”と呼びます。このインダイヤルが時計の文字盤上で“目”のように見えますので、時計業界ではしばしば“2つ目”や“3つ目”などと表現さます。
エルプリメロは“3つ目”デザインになることが一般的ですが、その“3つ目”の色を「青・濃いグレー・薄いグレー」という異なる3色にしたものが“1969ダイヤル”です。他のメーカーには見られない、個性的でありながらデザインにまとまりをもつ傑作デザインです。
↑かつての雰囲気を再現した“1969ダイヤル”モデル
※ニューヴィンテージ1969オリジナル
(2009年)
この1969ダイヤルは一度エルプリメロが生産終了となっていることもあり、ゼニスでしばらく採用されることはありませんでした。しかし、2009年に限定モデルのニューヴィンテージ1969オリジナルで再現されると、再び陽の目を浴びることとなります。そして、現在のゼニスではレギュラーモデルに採用され、“ゼニスを象徴する文字盤色”として押し出しをしています。
↑現行モデルのエルプリメロ・オリジナル1969
※旧名称:エルプリメロ36000VPH
■“オープン”の登場
1984年のエルプリメロ復活以降、ゼニスは様々なモデルを登場させます。しかし、クロノマスターやレインボーフライバックなど一部“華のあるモデル”はあったものの、1980~90年代のゼニスはオーソドックスなデザインでした。
↑1990年代までのエルプリメロ搭載モデル
しかし、ゼニスに転機が訪れます。
それは、2002年のティエリー・ナタフ氏のCEO就任です(※1)。
ナタフ氏はイタリア出身のフランス人なのですが、パッションのある饒舌なスポークスマンで、非常に個性的な人物でした。モノへのこだわりも強く、ゼニスの“モノ作り”にディテールへのこだわりを求めます。そして、彼が就任して誕生した傑作デザインが、文字盤の一部をくりぬいてムーブメントを見せる“オープン”です。
↑クロノマスターXXTオープン
↑グランドポートロワイヤルオープン
くりぬかれた文字盤から見えるものは、ムーブメントの心臓部でありダイナミックな動きのある“調速脱進機”です。文字盤を全てシースルーにしてムーブメントを見せる手法は従来からありましたが、オープンのキモは“チラ見せ”であることです。ムーブメント全てを文字盤から見せる場合、どうしても時刻が読み取り難くなります。さらにその外観は“実用的な腕時計”というよりも“芸術作品”という雰囲気になり、一般受けではなくなります。
↑ムーブメントを全て見せると
芸術作品の雰囲気になる
その点でもオープンであれば一部以外は通常のシースルーではない文字盤ですので、時刻の読み取り易さも確保しています。さらに、外観は“実用的な腕時計”という範疇を保ったまま、ダイナミックな動きのある“心臓部”だけを見せ、機械式時計の芸術性も堪能することができます。つまり、オープンは実用時計と芸術作品の間を取った“二兎追いデザイン”なのです。オープンと同様の外観は、超高級機構のトゥールビヨンでも見られます。しかし、オープンはゼニスのフラッグシップモデルで採用されており、一般ユーザーにとって手の届く存在だったことも大きなポイントです。
ナタフ氏の率いるゼニスは、その後もその他の男性用モデルにオープンを広げただけでなく、女性が使えるモデルにも採用しました。特に、クロノマスタースターはキュートなデザインに仕上がっています。かつてはのゼニスは「ムーブメントにこだわる男性向けの時計メーカー」というイメージでしたが、ナタフ氏が率いてからのゼニスは「男女に訴える洒落た高級時計メーカー」というイメージになりました。ただし、以前より価格が上昇してしまったことは事実です。
↑女性が使えるモデルにもオープンを採用
※クロノマスター スター オープン
■最後に
今回はゼニスの2つのデザインを紹介させていただきました。“1969ダイヤル”も“オープン”も非常に魅力的なデザインです。前回の投稿でも紹介しましたが、本来、ゼニスは外装デザインではなくムーブメントに強みのあるメーカーでした。その状況も現在では変わり、とうとう外装までもを長所にしました。つまり、ムーブメントと外装デザインの両方を強みにするのが、現在のゼニスです。
最期にひとつ作品紹介です。
○エルプリメロ・クロノマスター1969
↑型式:03.2040.4061/69.C496
なんと、“1969ダイヤル”と“オープン”を融合したデザインです。2012年に発売されましたが、販売時から生産が間に合わず、品薄が続いたモデルです。まさに、デザインで男心を掴んだ好例です。
現在のゼニスの作品力には驚かされます。是非、皆さんも注目していただきたい時計メーカーです!
※1・・・ゼニスのCEOについては以前の投稿でも話題にしております。ご参照ください。
↓↓↓
「ロレックスの新CEOジャン・フレデリック・デュフール ~ゼニスからロレックスへ~」
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