29.1.2017
クロノグラフによってできることが違う? ~「タキメーター」などのメーターの種類と役割~|(2017.1/29更新)
Komehyo
ブログ担当者:須川
腕時計の中には便利な機能がついたものがいろいろありますが、最も人気のある時計の機能はクロノグラフだと思います。いわゆるストップウォッチ機能がついた時計です。
そのクロノグラフの中には外周部分に、数字と目盛りが書いた“メーター”がついているモデルがあります。例えば、ロレックスのデイトナ、オメガのスピードマスター、タグホイヤーのカレラ、ブライトリングのクロノマットなど、有名なクロノグラフには外周部分にメーターが付いています。
実はその「メーターの種類によってクロノグラフのできることに違いがある」ということをご存知でしたか?今週はそのクロノグラフのメーターについて書かせていただきます。
↑クロノグラフは「メーター」によってできることが違う
◆何のために時間を計るのか?
まず、クロノグラフの基本的な機能をおさらいします。「経過時間を計り、計測している針をストップすることで時間を記録する」ことがクロノグラフの基本機能です。そもそもクロノグラフという言葉の語源も、ギリシャ語で「時間を記録する」という意味だったと記憶しています。
ここで大事になるのは、「何のために時間を計るのか?」という点です。その問いを考えてみることが、今回のテーマの答えにつながります。下にクロノグラフを使う用途とそのためのメーターをまとめました。
<クロノグラフを使う用途とそのためのメーター>
※文字盤中央軸にある“クロノグラフ秒針”用のメーターについてです
①経過時間を知る=
a.「時計用と同じインデックスを利用」(60進法)
↑通常時刻読み取りと同じインデックスを利用
(ブルガリ:ブルガリブルガリ)
b.「デシマルメーター」(10進法)
↑デシマルメーター
(ブライトリング:モンブリラン)
②速さを測るため=「タキメーター」
1キロ移動時の経過時間で時速を割り出す
↑ロレックス:デイトナ
③距離を測るため=「テレメーター」(キロ、マイル)
光と音の速度差を利用して距離を割り出す
↑タグホイヤー:カレラ テレメーター グラスボックス
④脈拍数を測るため=「パルスメーター」
目盛りに基準値として書かれた脈拍数を打った時点の経過時間で割り出し
↑オメガ:スピードマスター・トリノオリンピック
腕時計にクロノグラフを搭載するわけですから、「時計用と同じインデックスを利用」という使い方はすべてのクロノグラフでできます。つまり、“60進法(1分を60秒として)の経過時間”を知ることは全てのクロノグラフで可能です。しかし、“10進法(1分を100等分した単位)の経過時間”・“速さ”・“距離”・“脈拍数”を知るという用途のためにクロノグラフを利用する場合は、その該当のメーターが設けられている必要があります。つまり、“60進法の経過時間を知る”以外にクロノグラフを利用する場合は、“専用のメーター”が設けられていることが必要です。
ちょっとしたメーターに関わるエピソードですが、1980年代までオメガのスピードマスタープロフェッショナルはベゼルを選ぶことができました。“タキメーター”・“テレメーター”・“パルスメーター”・“デシマルメーター”の4種類です。現行モデルではタキメーターしかラインナップにありませんので、その他のベゼルのモデルは今見かけると新鮮に感じます。その他に、ロレックスのデイトナ16520には通称“200タキメーターベゼル”というモデルがあり、メーターの仕様により希少性の高い個体があることも有名です。つまり時計業界では、“クロノグラフのメーター”という要素だけでも話題になり得るということです。
では、数種類あるクロノグラフのメーターの中で“、最も多くのクロノグラフに採用されているメーターはどれでしょうか?それはある程度のクロノグラフ搭載の時計を見ていただくと分かりますが、圧倒的に“タキメーター”を採用するモデルが多いのです。
◆メーターの本当の“ねらい”とは?
タキメーターとは簡単に言うと“時速を計る”メーターです。1キロ移動した時点でクロノグラフをストップすると、その秒針が指し示すタキメーターを読み解くと平均時速がわかります。かつてモータースポーツのジャンルで活躍したと聞きます。しかし、現代の私たちが“「自分が1キロ移動した」ということを知る状況はあまりなく、実際に使うことはないと思います。他のメーターにも言えることですが、“デザインとしてのメーター”という要素が強いと思います。例えばテレメーターも、本来は戦時中に大砲の発砲光と音を計り距離を推測する用途でした。今は雷の距離を計るぐらいしか用途はないと思います。
つまり、メーターの本当の“ねらい”は、デザイン上ののアクセントなのです。クロノグラフという機能を設けたことを、外装の雰囲気からも感じてもらうことがメーカー側の意図なのだと思います。下のタグホイヤーのカレラの例でも、メーターの有無での印象の違いは明らかです。
↑タキメーターの有無での印象の違い
更に、別の見せ方として、“タキメーター以外を採用する”という手段があります。最もメジャーであるタキメーター以外を採用すれば、“最近は見ないメーター”としてヴィンテージテイストなクロノグラフという見せ方ができます。好例がユンハンスのマイスターテレメーターです。このモデルはタキメーターと併せてテレメーターも採用しており、かつて度々見られたヴィンテージデザイン“タキテレ”を再現しています。
↑赤い字がテレメーター
(ユンハンス:マイスターテレメーター)
あまり注目されることの少ないクロノグラフのメーターではありますが、用途が理解できるとおもしろいものです。クロノグラフを見かけたら、「どのメーターかな?」とチェックしてみてはいかがでしょうか。少しマニアックな視点で見ることができるかもしれません。
※2015.6/12初投稿
※2017.1/29更新:画像をより見やすいものに変更しました
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