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24.7.2022

オリス「アクイス デイト キャリバー400」は、チューダー「ブラックベイ」の牙城を崩せるか?

Komehyo

ブログ担当者:須川

 

■オリス「アクイス デイト キャリバー400」は、チューダー「ブラックベイ」の牙城を崩せるか?

 

現在、時計業界で“40万円前後のダイバーズウォッチ”に関しては、チューダーの「ブラックベイ」シリーズの一人勝ち状態と言ってよいでしょう。確かにブラックベイシリーズは、外装もムーブメントも内容が素晴らしく、そこに“ロレックスの弟ブランド”という背景も加わり、多くの方に支持されるのも頷けます。

 

しかし、2020年、ブラックベイの牙城に挑戦するモデルが登場しました。

 

それが、

 

オリス

「アクイス デイト キャリバー400」

です。

 

アクイスデイトキャリバー400は、メーカー価格が約40万円ほどで、確かにチューダーのブラックベイに近い価格です(※)。そして、アクイスデイトキャリバー400は、「高級時計としてヒット作になるポイント」を隈なく押さえており、まさに“オリスの会心作”です。

 

※アクイスデイトキャリバー400もブラックベイも、登場当時より今は価格が上がっています。今回は、現在の価格帯をベースに話しています。

↑ブラックベイの価格は40万円前後~

 

今回は、この“オリスの会心作”である、アクイスデイトキャリバー400を紹介し、皆さんにその魅力を知っていただきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

■「アクイス」とはどんなモデル?

 

まずは、オリスの「アクイス」についてご存じない方もいらっしゃるかもしれませんので、少しアクイスについて説明しておきます。

 

アクイスは、その名称の「Aquis=水」という言葉が示唆するように、オリスのダイバーズウォッチシリーズとして2011年に誕生しました。その頃は、ロレックスを中心にベゼル部品を「セラミック」に進化させる流れがありました。その背景もあり、アクイスもトレンドに乗り、“セラミックベゼルをもつダイバーズウォッチ”として誕生しました。

↑2011年に登場した第一世代アクイス

 

アクイスはオリスの理念もあり、良心的な価格でリリースされたので、そのコストパフォーマンスの高さから、スマッシュヒットとなりました。その後、2017年新世代モデルに変わった後も人気を維持し、今もオリス屈指の人気モデルとして君臨しています。

↑2017年以降の第二世代アクイス

 

アクイスがヒットしている理由には、“良心的な価格”という要素があります。その“良心的な価格”を実現できる理由ですが、これはオリスが一般モデルには「汎用ムーブメント」を使っていることが大きいでしょう。例えば、オリスの場合は、セリタのCal.SW200を採用することが多いです。セリタのムーブメントは、現在の多くのスイスメーカーに採用されていることもあり、評価面で見ると安心感があります。

↑一般モデルにはセリタのムーブメントを採用

 

“良心的な価格”の具体例を挙げると、現行「アクイスデイト」の一般モデルのメーカー価格は、以下の通りです。

 

・43.5㎜・41.5㎜・39.5㎜径/SSモデル(メタルバンド)

→264,000円

 

・43.5㎜・41.5㎜・39.5㎜径/SSモデル(ラバーバンド)

→257,400円

 

 

 

 

 

 

■新たな冒険作「アクイス デイト キャリバー400」

 

ここまではアクイスの“一般モデル”の話でしたが、ここからが本題の「アクイス デイト キャリバー400」の話です。

↑アクイスデイトキャリバー400(2020年~)

 

先の説明でもありましたが、一般的なアクイスデイトはメーカー価格が20万円台でした。しかし、2020年、オリスは価格が40万円前後のアクイスを発表しました。それが、アクイスデイトキャリバー400です。これは、オリスにとっては“チャレンジ価格”にになるでしょう。それは、冒頭でも触れましたが、「チューダーのブラックベイに挑む価格」になるからです。

 

具体的なメーカー価格は下の通りです。

 

・43.5㎜・41.5㎜径/SSモデル(メタルバンド)

→407,000円

 

・43.5㎜・41.5㎜径/SSモデル(ラバーバンド)

→396,000円

 

 

この価格を見ても、一般モデルより10万円以上も上のプライシングをしたのですから、まさに“冒険作”と言えるでしょう。

 

では、このアクイスデイトキャリバー400は、一般モデルのアクイスとどう違うのでしょうか。一見、現行の第二世代のアクイスの外観と同じように感じますが、よく見ると、その違いのヒントが文字盤にあります。

上の画像を見ていただくと、一般モデルと比べて日付位置が変わっている点も気になると思いますが、注目して欲しいポイントは「5 DAYS」の文字です。つまり、パワーリザーブ(ぜんまい持続時間)が「5日間」になっているのです。一般モデルのアクイスのパワーリザーブが約1日半(38時間)ですので、「1日半→5日間」と、大きな変化です。

 

もちろん、このパワーリザーブはセリタのムーブメントでは得られないスペックです。これは、モデル名にもあるように、「キャリバー400」という自社製ムーブメントを搭載したから得られたものです。

↑キャリバー400

 

私の目から見ると、このキャリバー400を搭載したアクイスデイトは、「高級時計としてヒット作になるポイント」が満載です。別の表現をすると、「今のトレンドを押さえまくっている」のです。この点を少し説明します。

 

 

 

<トレンドを押さえている要素>

 

①ロングパワーリザーブ

→5日間

 

②シリコン部品を採用

→アンクル、ガンギ車がシリコン製

 

③耐磁性能が高い

→2250ガウスの磁気でも精度を維持

 

④グラデーション文字盤

→文字盤の中央と周りで濃淡をつける

 

⑤インターチェンジャブルバンド

→バンドが簡単に付け替えできる

 

⑥セラミックベゼル

→ベゼルに傷に強いセラミックを採用

 

 

 

ここで挙げた要素は、現在の時計業界のトレンドです。しかも、アクイスデイトキャリバー400は、これらを高水準で押さえています。他社同様ではなく「他社越え」を狙ってくる点は、オリスがチューダーのブラックベイなどと勝負するには、必要なことなのでしょう。

 

例えば、ロングパワーリザーブを採用する場合の今のトレンドは60~72時間ですが、キャリバー400はツインバレル(主ゼンマイを2つ搭載)により、「120時間」を実現しています。これは、十分にライバルたちを越えている基準です。

さらに、耐磁性能が2250ガウスもある点も、大きなアドバンテージです。おそらく、皆さんの多くはこの数値にピンとこないかもしれませんので、補足します。

 

例えば、耐磁時計として有名なロレックスのミルガウスの名前は、「1000ガウス」から来ています。これは、約8万A/mの耐磁性能を意味し、IWCのインヂュニアも同等の性能で耐磁時計を謳っていました。つまり、「1000ガウス」でも相当な耐磁時計なのです。しかし、アクイスデイトキャリバー400は、その倍以上の数値で、「2250ガウス」の耐磁性能があります。これは、脱進機にシリコン部品を使った効果とも言えるでしょう。

 

このように、高水準で「トレンドを押さえまくっている」ところが、アクイスデイトキャリバー400の大きな魅力なのです。

 

 

 

 

 

 

■最後に

 

もしかすると、アクイスデイトキャリバー400にこれだけのスペックが詰め込まれていることを知ると、逆に40万円前後で販売されていることが安く思えるかもしれません。

 

しかし、ベンチマークしなければならない存在のチューダーのブラックベイは、かなり強敵です。オリスは1904年創業なので、1926年創業のチューダーより“先輩”ということになりますが、それでも、「ロレックスの弟ブランド」という壁は高いと思います。だからこそ、オリスはアクイスデイトキャリバー400を「ブラックベイより少しだけ低い価格」に設定し、「ブラックベイに勝る要素」を作ったのでしょう。

アクイスデイトキャリバー400の登場は2020年とはいえ、まだ認知を高める段階です。そのため、この挑戦がどのようになっていくか、私も見守っていきたいと思います!

 

 

 

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