3.9.2021
【2021年新作紹介】オメガ「スピードマスター ムーンウォッチ」の最新版をチェック
Komehyo
ブログ担当者:須川
■【2021年新作紹介】オメガ「スピードマスター ムーンウォッチ」の最新版をチェック
2021年の新作は話題作がいろいろありましたが、その中でも、
オメガ「スピードマスター ムーンウォッチ」のモデルチェンジ
は大きな注目を集めています。
↑新しいスピードマスタームーンウォッチ
※画像は310.30.42.50.01.002
皆さんも、「新しいスピードマスターはどのようなモデルなのか」気になるのではないでしょうか。そこで今回は、この2021年の新型スピードマスタームーンウォッチについて解説をしたいと思います。
■2021年のスピードマスタームーンウォッチはどんなモデルなのか?
2021年に登場したスピードマスタームーンウォッチ(別名スピードマスター プロフェッショナル)は、メジャーな世代カウントで言うと、「8世代目(8th)」に当たります。
↑第8世代のスピードマスタームーンウォッチ
今回のスピードマスタームーンウォッチも、これまで同様にバリエーションがあり、
・通常モデル
(型式:310.30.42.50.01.001)
※メーカー価格:737,000円税込み
・シースルーバックモデル
(型式:310.30.42.50.01.002)
※メーカー価格:847,000円税込み
の2タイプが用意されています。
通常モデルとシースルーバックモデルには、かつてより“仕様差”がありました。それは、風防(ガラス)です。それに加えて今回は、ブレスレットにも仕様差がつけられています。その仕様差を、下に、まとめました。
<バリエーションによる仕様差>
・通常モデル:
→プラスチック(ヘサライト)風防
→「サテン仕上げ」ブレスレット
・シースルーバックモデル:
→サファイアガラス風防、
→「サテン&ポリッシュ仕上げ」ブレスレット
このように、通常モデルとシースルーバックモデルには仕様差があります。しかし、全体としては、同じ“8世代目モデル”です。では次に、この8世代目のモデルがどのようなモデルかを紐解いていきます。今回は、「外装」「内部」「制作意図」という3つのポイントに分けて説明します。
<8世代目モデルの3つのポイント>
①外装
外装の特徴をつかむためには、先代モデル(7世代目)との違いを知ることが良いでしょう。
まず、真っ先に違いを感じる点は、ブレスレットのデザインでしょう。部品の一つ一つが小さくなり、一駒一駒が小さくなりました。また、ブレスレットのテーパーの角度が深くなり、全体の印象としてブレスレット幅が細くなっています。さらに、クラスプのデザインも変更になっており、ストライプデザインが入った留め具になりました。
また、フェイス部にも変更点があります。文字盤の外周部に“段差”が設けられ、タキメーターのデザインも変更がありました。タキメーターはわかり難い変更点かもしれませんが、「70」と「90」の数字部分の近くにあるドットの位置が変わっています。
そして、文字盤ロゴにも変更があります。プリントされる文字のサイズが少し変更になっており、さらに、シースルーバックモデルに関しては「Ω」ロゴがプリントから植字に変わっています(※通常モデルはプリントロゴのままです)。
おそらく、フェイス部の変更は細かな点ですので、マニアックに見ない限りはわからないかもしれません。そのため、皆さんが最もわかる8世代目モデルの外装の特徴は、「ブレスレット」と言ってよいでしょう。
②内部
内部にも特徴があります。それは、ムーブメントが新スペックになっている点です。その追加されたスペックは、大きく以下の2点でしょう。
・コーアクシャル脱進機
→「脱進機」とはムーブメントの心臓部に当たる部分で、機械式時計においては“計時のペースメーカー”のような存在です。その機構の正確な動きこそが、高精度を生み出す鍵となるのです。この脱進機の“改良種”が、エネルギー回収率に優れた「コーアクシャル脱進機」です。これは、トルクの伝導効率が良く、理論上は高精度を維持しやすい仕組みです。また、油切れが起こりにくい利点もあります。現在、この脱進機はオメガの専売特許のような状況になっており、オメガの代名詞のような存在です。
しかし、これまで、クラシカルスタイルを維持するムーンウォッチには、この革新的なコーアクシャル脱進機は採用されていませんでした。しかし、2019年に一部のモデルで採用されるようになり、この8世代目のムーンウォッチで、ようやくレギュラーモデルにも採用されるようになったのです。
・15000ガウスの耐磁性能
→内部は「マスタークロノメーター」という外部機関による検査を通過したムーブメントになっており、15000ガウスの耐磁性能、日差0秒~5秒以内の誤差、という基準をクリアしたことになっています。このマスタークロノメーターの取得は、7世代目モデルまではなかったことなので、大きな変更と言えます。
“日差0~5秒”というスイス公式クロノメーターを越える精度基準をパスしている点も凄いですが、“15000ガウス”に耐えうる耐磁性能は、もはやオーバースペックと言っても良いレベルです。ロレックスの耐磁時計「ミルガウス」が1000ガウスですので、その15倍の数値です。私たちが受ける日常の磁気は全く大丈夫でしょう。
これらの新スペックの追加により、ムーブメントは従来のCal.1861からCal.3861にキャリバー名を変えました。内部の変化は一般ユーザーにはピンとこない所かもしれませんが、磁気に強くなった点は、携帯電話などの電子機器に囲まれた私たちにとっては有難い変更点でしょう。
↑Cal.3861
③制作意図
では、ムーンウォッチを8世代目へ進化させる理由とは、何だったのでしょうか?つまり、2021年モデルの「制作意図」についてです。これを、個人的な見解として紐解いていきます。
私が感じる点として、以下の2つの点があります。
・「コーアクシャル脱進機」化、「マスタークロノメーター」化の推進
オメガは、高級時計業界のリーディングカンパニーのひとつであり、“実用高級時計”という切り口から見ると、王者ロレックスをライバルにしていると思われます。その「実用性」を優位にする武器の第一の矢が「コーアクシャル脱進機」であり、第二の矢が「マスタークロノメーター」なのです。
この2つの武器を、オメガの機械式時計の全てに搭載することが、近年のオメガの目標のひとつとなるでしょう。この2つの武器をオメガ製品に搭載し、「高精度」「高耐磁性」を上手にアピールすることで、業界内での競争を優位することができます。
コーアクシャル脱進機については、1999年から地道に取り組んできましたので、すでにほとんどの自動巻きモデルに搭載が完了していました。そして、マスタークロノメーターについては、2015年のグローブマスター以降、積極的に採用を広げていっている最中です。この状況で、満を持して、オメガ最大のフラッグシップである「スピードマスタームーンウォッチ」にも、この2つの武器を投入したのです。
↑グローブマスター
・ヴィンテージ人気へのニーズ対応
最近の高級時計業界では、“ヴィンテージ品”が人気です。これは、高級時計の普及が進みユーザーのリテラシーが上がったこと、そして、消費者が“マス”商品でなく“ニッチ”商品を求めるようになったことが関係しているように感じます。
この「ヴィンテージ」というニーズに応えることが、最近の時計業界のトレンドです。
そのニーズへの応え方は、「ヴィンテージ品の復刻モデル」という方法が定番でした。実際に、オメガもヴィンテージのムーンウォッチの復刻モデルを発表していました。しかしより最近では、「現行モデルにヴィンテージ時代のエッセンスを取り込む」という手法も増えてきました。例えば、チューダーの「ブラックベイ」などは、この手法で成功している好例でしょう。
そして、今回のムーンウォッチの8世代目モデルも、この後者の手法を取り、ヴィンテージ時代のエッセンスを取り込みました。先に紹介したベゼルや文字盤のディテール変更は、まさに、ヴィンテージ時代のエッセンスです。そして、ブレスレットのデザインは、まさにクラシカルな印象を狙っています。
通常、バンドのラグから留め具にかけてのテーパーは、「約2㎜」の幅分を細めていくことが一般的です。実際に、最近までのムーンウォッチのブレスレットもそうでした。しかし、8世代目のムーンウォッチは、「約5㎜」も幅を細めてテーパーしたブレスレットを採用しています。そのため、腕に装着した印象として、手首の内側からの見た目がやや華奢な印象になり、ヴィンテージの時代のブレスレットのような感じがします。
実は、5世代目モデルの時代のブレスレットもやや細身で、「約4㎜」幅のテーパーでした。しかし、8世代目モデルの「5㎜」テーパーはそれより細身で、かなりヴィンテージを意識していることは、明らかです。
まとめると、8世代目モデルの制作意図は、
「外観はヴィンテージ、内部は最新の実用スペック」
というものなのです。
私の個人的な意見とても、スピードマスタームーンウォッチの最新版は、かなり面白い試みだと思います。なぜなら、これまでの「大きく変化をしない路線」を破り、外観にも内部にも変化を与えたからです。是非、皆さんにも、一度、実物をチェックしていただきたい逸品です!
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