20.3.2020
実はあまり理解されていない!? オメガの「シーマスター」とは何なのか? ~シーマスターを分かりやすく解説~
Komehyo
ブログ担当者:須川
■実はあまり理解されていない!? オメガの「シーマスター」とは何なのか? ~シーマスターを分かりやすく解説~
オメガ(OMEGA)の人気モデル「シーマスター」。
きっと多くの方は、シーマスターを「オメガの“ダイバーズウォッチ”の名前」と思っているのではないでしょうか。
しかし、厳密に言うとこれは間違いです。
例えば、
この画像のモデルも「シーマスター」ですが、どう見ても“ダイバーズウォッチ”には見えないでしょう。
さらに、「スピードマスター(クロノグラフ系)やデ・ヴィル(ドレス系)は、シーマスターからの派生モデルである」という事実があります。皆さんも、スピードマスターやデ・ヴィルを見て、「ダイバーズウォッチの要素がある」とは思えないでしょう。
つまり、
世間で、「シーマスターは何なのか」はあまり理解されていない
のです。
そこで、今回は、「シーマスターは何なのか」を分かりやすく解説させていただきます。
■シーマスターは「一般より防水性のあるケース」を採用した時計!
今回は、「シーマスターとは何なのか」を分かりやすく説明します。
先に結論を言っておきます。
「オメガにおいて、シーマスターは“一般より防水性のあるケースを採用した時計”です」
つまり、ダイバーズウォッチのような“極端に凄い防水性”までなくてもOKなのです。
例えば、1948年に登場した“最初のシーマスター”は、本格ダイバーズウォッチではありませんでした。外観も、回転ベゼルを持たず、時間を読むだけの一般的なラウンドタイプです。防水性は今の基準で考えると、“日常生活強化防水”クラスの性能で、1954年のスイス時計研究所の検査では「60m防水クリア」というものでした。
そして、そもそも、皆さんがイメージするような“ダイバーズウォッチのシーマスター”の誕生は、1955年(公式は1957年)の「シーマスター300」以降です。つまり、最初のシーマスターが誕生してから何年も後のことなのです。
では、“一般より防水性のあるケース”とは、どんなものなのでしょうか?
実は、オメガは第二次世界大戦の際に、イギリス軍に「防水軍用時計」を提供しました。これが、シーマスターのルーツとなるもので、その防水構造を礎に作られたモデルが、1948年の“最初のシーマスター”なのです。
その構造は、下の要素を満たすものでした。
①「ねじ込み式裏蓋」と「O(オー)リング」
→裏蓋の隙間から水が浸入しない
②「スチール製リング」で留められた丈夫な風防(ガラス)
→温度が上がるとリングが膨張し、ガラスの収縮に対応する
これが、“一般より防水性のあるケース”です。この構造により、“最初のシーマスター”は、前述した60m防水の検査にクリアできたのです。その後のモデルは、ワンピースのケースやサファイアガラスの採用など、別の構造をもつこともあります。ただ、「一般より防水性のあるケース」を採用していたならば、それで、“シーマスターである条件”が整うのです。
■シーマスターは3タイプある!
さらに、シーマスターを分かりやすく理解するポイントを加えます。
それは、
「シーマスターは、大きく分けると“3タイプ”ある」
という点です。
その3つのタイプを知れば、「シーマスターとは何なのか」が、より理解できます。
<シーマスターの3つのタイプ>
①スタンダード系
このタイプは、先に登場した“最初のシーマスター”の系統です。「自動巻」、「手巻」、「日付あり」、「日付なし」など、さまざまな種類がありますが、シンプルな外観は共通しています。これが、「本来のシーマスター」です。“伝統スタイル”と言っても良いでしょう。防水性は、ダイバーズほどは高くありません。
※該当モデル
シーマスター、シーマスターデイト、シーマスターデイデイト、シーマスタークロノメーター、シーマスターカレンダー、シーマスター・デ・ヴィル、シーマスター30、シーマスター600、シーマスタークロノグラフ、シーマスター120(1993年~)、シーマスターアクアテラ
②ダイバーズ系
これは、1950年代以降に登場する、“本格ダイバーズウォッチ”の系統です。回転ベゼルに加え、高い防水性があります。初期のものは、ナイアス耐圧式リューズ、強化O(オー)リング、アーマードガラス(強化風防)で防水を確保した、「シーマスター300」が有名です。このモデルは、復刻デザインが登場して話題になりました。
※該当モデル
シーマスター300、シーマスター200、シーマスター600プロプロフ、シーマスター1000m、シーマスタープロダイバーズ300m(プロフェッショナル)、シーマスタークロノグラフ、シーマスターアプネアマイヨール、シーマスタープラネットオーシャン
③イノベーション系
シーマスターは、時代に合わせて“革新性”を追求しており、一部のモデルでその時代に合った“挑戦的デザイン”をもつモデルを作ります。特に、音叉時計やクォーツ時計が登場した時期は、顕著に“挑戦的デザイン”に振った印象があります。もちろん、機械式時計の時代にも、“挑戦的デザイン”はあります。
※該当モデル
シーマスター120(初期)、シーマスタークロノストップ、シーマスターコスミック、シーマスターコンプレッサー、シーマスターメモマチック、シーマスタークロノグラフ(2nd~)、シーマスターハードメタル、シーマスター60、シーマスターコスミック2000、シーマスターオートマチッククロノグラフ、シーマスターオートマチック120m、シーマスターエレクロトニック、シーマスターメガソニック720Hz、シーマスターメガクォーツ32kHz、シーマスタークォーツ(マリナーⅠ~Ⅲ、マリーン、ニミッツ、カリプソⅠ~Ⅲ、サーメット、ポラリス、レシフェ、ダイナミック、シェル)
この3つのタイプが分かれば、多種多様なシーマスターが理解できます。
つまり、
①スタンダード系
→「時計らしい」デザインの腕時計を使いたい人向け
②ダイバーズ系
→プロ向け、スポーティな腕時計を使いたい人向け
③イノベーション系
→「人とは違った目新しいもの」を使いたい人向け
と、理解するのです。
このように、3者3様のシーマスターを用意して、幅広いユーザーを獲得したい意図がシーマスターにはあるのです。
■最後に
今回は、「シーマスターは何なのか」を理解していただこうと、解説をしました。
「シーマスターは“一般より防水性のあるケースを採用した時計”」
これがシーマスターの条件なので、デザインはダイバーズウォッチでなくてもOK。
そして、
「シーマスターは、異なる3つのタイプがあり、デザインの幅が広い」
この特徴があるので、シーマスターに色々な種類があるのも当然。
これらのことを、皆さんはもう理解できるはずです。
また、冒頭で「スピードマスター とデ・ヴィルがシーマスターの派生である」ことに触れましたが、これも補足しておきます。
シーマスター1948年に登場しますが、1960年、より薄型の「シーマスター・デ・ヴィル」が登場します。その後、薄型時計の需要も拡大し、1973年のラインナップ整理の際に、デ・ヴィルは一つのシリーズとして独立します。
また、1955年(1957年)に初代シーマスター300を生み出す過程において、フェイスとケースのデザインを流用して、「スピードマスター」と「レイルマスター」という兄弟機が生まれます。まさに、「三つ子の長男がシーマスター300」というイメージです。
このように、オメガは“多種多様なシーマスター”を作り続けることで、派生モデルを生み出し、オメガの人気を不動のものにしてきました。
その意味では、オメガにとって「シーマスターを作り続けること」こそが成長の原動力なのです!
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