高級腕時計の時計通信

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20.9.2019

「時計とは何か」をスマートに説明できますか? ~クォーツ、テンプ、ヒゲゼンマイの意味を知る~

Komehyo

ブログ担当者:須川

 

■「時計とは何か」をスマートに説明できますか? ~クォーツ、テンプ、ヒゲゼンマイの意味を知る~

 

「時計とは何?」という質問を受けることは、通常の生活ではあまりないでしょう。ただ、もし聞かれても、私たちは、「時間がわかる道具」と簡単に答えられます。

 

では、皆さん、

 

そもそも、時間がわかる“時計という道具”はどういうもの?

 

という質問に、答えられるでしょうか。

きっと、この質問への回答は難しいはずです。なぜなら、この質問が、「時間がわかる道具」という内容以上の答えを求めているからです。

 

そこで今回は、皆さんが「時計とは何か」をスマートに説明できるようにすべく、“時計の本質”について説明します。そして同時に、“時計の本質”がわかるようになると、「クォーツ」「テンプ」「ヒゲゼンマイ」といった時計用語の意味がわかるようになります。是非、最後までご覧ください。

 

 

 

 

 

 

■時計とは何か?

 

では、“時計の本質”を理解できるように説明します。そのためには、先の「そもそも、時間がわかる“時計という道具”はどういうもの?」という質問に答えることが近道です。

 

では先に、この質問の回答をしましょう。

 

時計とは、

 

“常に規則正しく動くもの”を用意し、その一定期間の動きを、我々の時間に当てはめて表示する道具

 

です。

 

少し説明をします。まず、きっと多くの方は、「常に規則正しく動くもの?」と疑問をもつでしょう。これは例えを出すとすぐわかるはずです。例えば、「振り子」や「メトロノーム」が、わかりやすい“常に規則正しく動くもの”だと思います。

振り子やメトロノームは、「錘(おもり)が端からスタートして、同じ端に戻ってくる動き」を繰り返す道具です。この動きのひとつを「周期」と呼びますが、振り子やメトロノームは、錘の揺れが大きい場合も、小さい場合も、その周期は同じです(※1)。つまり、揺れが激しいときも緩やかなときも、ペースが同じなのです。まさに、“常に規則正しく動くもの”と言えるでしょう。

 

そして、「この“常に規則正しく動くもの”が、一定期間動いたら、“1秒”」という具合に、計算して表示する仕組みを作れば、“時計という道具”ができあがるのです。

 

例えば、17世紀に登場する「振り子時計」は、わかりやすい例でしょう。振り子時計は、その名の通り、“常に規則正しく動くもの”に振り子が採用されています。秒振り子の時計であれば、「振り子が1つ振動したら、“1秒”」という仕組みで、時間を計算し表示しています。

そして、この仕組みが理解できると、「振り子が正確であれば、正確な“1秒”が刻める」ことがわかるはずです。

 

これが、“時計という道具”の本質で、

 

“常に規則正しく動くもの”がどれぐらい正確か

 

が、時計にとって大きなテーマであることが理解できるでしょう。

 

 

 

 

 

 

■「クォーツ」「テンプ」「ヒゲゼンマイ」を知る!

 

では、もう少し“常に規則正しく動くもの”を説明します。

 

実は、現在の時計の“常に規則正しく動くもの”は、「振り子」ではないものがほとんどです。ここからは、振り子に代わる“常に規則正しく動くもの”を紹介します。

 

懐中時計や腕時計などの“現在の時計”は、持ち出して使うことのできる“携帯時計”です。しかし、この“携帯時計”を作るには、さまざまな困難があります。ひとつは、携帯時計は頻繁に動かされるために、「固定されて使われること前提の“振り子”は、携帯に向かない」点です。さらに、「振り子時計は小型化が難しい」点もあります。

 

では、懐中時計や腕時計などの“現在の時計”は、どのような仕組みなのでしょうか?実は、現在の時計では、“常に規則正しく動くもの”に、「テンプ(ヒゲゼンマイで動く)」と「クォーツ(水晶振動子)」を使っています。

 

 

 

①テンプ&ヒゲゼンマイ(レバー脱進機)

現在の時計のうち、「機械式時計」と呼ばれるものは、振り子(振り子式脱進機)の代わりに、「ガンギ車・アンクル・テンプ・ヒゲゼンマイ」で構成されるレバー脱進機を使っています。

 

輪状の部品である「テンプ」には、渦状のゼンマイ「ヒゲゼンマイ」が取り付けられています。ヒゲゼンマイは、収縮と拡張運動をすると、車のハンドルを繰り返し左右交互にきるかのような動きで、テンプを左右に動かします。このテンプが、振り子の代わりになるのです。これが、現代の機械式時計の“常に規則正しく動くもの”です。

 

一般的には、「テンプが8回振動したら、“1秒”」という8振動(4ヘルツ)タイプが多いです。

↑レバー脱進機を採用するロレックス

 

 

 

②クォーツ(水晶振動子)

現在の時計であれば、電気(電池)で動くものは、ほとんどが「クォーツ式時計」です。「クォーツ」とは水晶のことです。

 

実は、水晶は「電圧を掛けると規則正しく振動する」という特性があります。クォーツ式時計は、この特性を利用しているのです。

 

具体的には、時計内部に備えられた水晶(水晶振動子)に電圧を与え、その振動数をIC回路で計算し、正確な“1秒”を割り出しています。つまり、クォーツ式時計の“常に規則正しく動くもの”は、振り子ではなく、「水晶」なのです。

 

一般的には、「水晶振動子が32,768ヘルツ振動したら、“1秒”」という仕組みをとります。

↑クォーツ式のグランドセイコー

 

 

 

 

 

 

■正確さを追求する「テンプ」と「クォーツ」

 

ここまでで紹介したように、“現在の時計”は、振り子ではなく「テンプ」や「クォーツ」を“常に規則正しく動くもの”として使っています。これは、先に説明したように、「振り子では携帯時計が難しいから」という理由があります。

 

しかし、それだけではありません。テンプやクォーツを使うのには、「正確さを追求するため」という理由もあります。

 

実は、“常に規則正しく動くもの”を、より正確にするには、「動きを速くすること」が有効です。つまり、「振動数を増やすこと」が重要なのです。

 

例えば、“コマ回し”を想像してください。コマを回した最初のころは、勢いがあり、コマが安定しているでしょう。しかし、コマの回転が落ちてくると、コマはふらふらして安定感がなくなります。つまり、「動き(回転)が速いと、動作が安定する」のです。

このコマ回しの例と同じで、「振り子より速く動くもの」を、“常に規則正しく動くもの”に採用すれば、より高い精度が得られるのです。

 

レバー脱進機の機械式時計は、振り子より高い振動をもつ「テンプ」をもちます。そのため、振り子時計より高い精度を出せるようになりました。

 

先ほども紹介しましたが、一般的なテンプは「1秒間に8振動(4ヘルツ)」です。この振動数のおかげもあり、現在の機械式時計は、「日差数秒~数十秒の誤差」の精度を持ちます。

↑1秒間に8振動(4ヘルツ)

 

さらに、クォーツ式時計は、凄い精度を出します。こちらは、なんと「1秒間に32,768ヘルツ」です。このとんでもない高振動により、クォーツ時計は1日ぐらいではほぼ誤差がでず、「月差15秒ほどの誤差」という高精度をだします。本当に“現在の時計”は凄いのです。

 

 

 

 

 

 

■最後に

 

冒頭で、

 

時計とは、

 

“常に規則正しく動くもの”を用意し、その一定期間の動きを、我々の時間に当てはめて表示する道具

 

と説明しました。

 

これが、「時計とは何か?」という質問への、私なりのスマートな回答です。

 

そして、この“時計の本質”がわかれば、時計にとって、“常に規則正しく動くもの”を確保することが、いかに重要かがわかるでしょう。

 

だからこそ、しばしば時計業界で、

 

「振動数が…」

「最新のヒゲゼンマイを…」

「テンプへの衝撃を吸収…」

 

といった、“規則正しい動き”を追求する会話が飛び交っているのです!

 

 

 

※1・・・「錘の揺れが大きい場合も、小さい場合も、その周期は同じ」という特徴は、「等時性」と呼ばれます。ただし、振り子やメトロノームの周期は、厳密に言うと、多少の誤差があります。そのため、振り子やメトロノームは「近似値的に等時性がある」というニュアンスです。

 

 

 

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