13.9.2019
オメガ「セドナゴールド」はロレックスに認められたのか? ~セドナゴールドとは何のこと?~
Komehyo
ブログ担当者:須川
■オメガ「セドナゴールド」はロレックスに認められたのか? ~セドナゴールドとは何のこと?~
高級時計の外装素材のメジャーなものは、「ステンレス」と「ゴールド(金)」です。
後者のゴールドには、いくつかカラーバリエーションがあります。最もメジャーな「イエローゴールド」、落ち着きと上品さのある「ホワイトゴールド」、大人の洒落感のある「ピンクゴールド」などです。
分かりやすいように、下に画像を用意しました。これはロレックスの「トリドール」と言われるタイプのブレスレットの画像で、イエロー、ホワイト、ピンクの3種類のカラーが同時採用されています。これは、ゴールドの色味の違いが非常に分かりやすい例でしょう。
↑3種類のゴールドを同時採用するブレス
※画像はロレックスのトリドール
そのゴールドのカラーバリエーションの中でも、とりわけ時計業界では「ピンクゴールド」が注目されています。ロレックスが2005年に、“改良版ピンクゴールド”である「エバーローズゴールド」を開発したことを皮切りに、オメガやウブロなども“改良版ピンクゴールド”を発表しました。
以前の投稿
「ほんとに凄いの!? ロレックスの「エバーローズゴールド」~エバーローズゴールドの実力~」
で、ロレックスの「エバーローズゴールド」については既に紹介しました。
そこで今回は、オメガの“改良版ピンクゴールド”、「セドナゴールド」を紹介しましょう。そして、最近、ロレックスもピンクゴールドに対して面白い動きをしていますので、併せて紹介します。
↑セドナゴールドを採用するモデル
※シーマスター300
■「セドナゴールド」とは?
まずは、2013年に登場した「セドナゴールド」とはどのようなピンクゴールドなのか説明します。
オメガの公式ホームページ(こちら)には、
“オメガの18Kセドナ™ ゴールドは、ゴールド(75%以上)、銅、パラジウムを混ぜた合金です。長期間色あせることのない、独自の赤みを帯びたカラー特徴です。その名前は、太陽系で最も赤いと言われている小惑星「セドナ」に由来します。”
と、説明されています。
つまり、セドナゴールドは、「長期間色あせることのない」という点が、大きな特徴なのです。
上の画像をご覧ください。実は、従来のピンクゴールドは変色してしまう欠点がありました。つまり、従来のピンクゴールドは、新品のときは美しかった外観が、どんどんと失われていくのです。そして、その欠点をなくそうと登場した発明が、ロレックスの「エバーローズゴールド」であり、オメガの「セドナゴールド」なのです。
↑変色に強いセドナゴールド
少し説明します。一般の製品に使われるゴールドは、純金(100%金)ではなく、混ぜ物を入れた合金です。通常、75%が金で、残り25%に別の素材を入れます。ピンクゴールドは、この“残り25%”に「銅」が多く含まれているために変色を起こします。そこで、ロレックスやオメガは、“残り25%”のレシピを工夫をしたのです。下に、まとめます。
<ロレックスとオメガの改良版ピンクゴールドへの工夫>
・ロレックス
→“残り25%”にプラチナを加えた
・オメガ
→“残り25%”にパラジウムを加えた
“改良版ピンクゴールド”に、ロレックスはプラチナを使い、オメガはパラジウムを使っています。つまりロレックスとオメガは、異なった素材を利用して、「変色を抑える」という目的にアプローチしているのです。
実は、プラチナとパラジウムは同じ白金族の仲間です。そしてこの2つは用途も近く、そもそもこの2つを合金にすることも主流なほどです。そのため、プラチナとパラジウムで、同じような効果が得られることは想像できます。おそらく、先行して“改良版ピンクゴールド”を開発したロレックスに追随するために、オメガはプラチナを避けてパラジウムを使ったのでしょう。
登場した2013年、セドナゴールドはコンステレーションで採用されました。現在では展開を広げており、ついにスピードマスターシリーズにも採用され始めています。今後も、オメガはどんどんと展開を広げていくでしょう。そして、2019年、オメガはイエローゴールドの改良版「ムーンシャインゴールド」を投入し、セドナゴールド以外にも、新たなゴールドにチャレンジしています。
↑セドナゴールドを使ったスピードマスター
※ダークサイドオブザムーンセドナブラック
■ロレックスは、セドナゴールドを認めたのか?
ロレックスが最近申請した特許に面白いものがあります。それは、「ローズゴールド合金から作成される時計」というものです。
この内容は、なんと“残り25%”にパラジウムを使うピンクゴールドです。具体的には、金と銅以外に、3.5~4%のパラジウムと、1~1.6%のインジウムを配合するものです。
つまり、ロレックスは今後の開発で、オメガの“セドナゴールド系”のレシピを検討しているかもしれません。これが実現すると、ロレックスは、後発のパラジウムを使う“セドナゴールド系”の利点を認めたことになります。
今後、この特許を本当に活用するかどうかは不明ですが、もし使うとなると、疑問が浮かびます。
それは、「なぜ、すでにエバーローズゴールドがあるのに、新たな“改良版ピンクゴールド”を開発するのか?」という疑問です。
↑エバーローズゴールドはどうする?
※ロレックス「GMTマスターⅡ」
この疑問の答えについて、私なりの仮説をたてます。
仮説のひとつは、ロレックスの“セドナゴールド系”が
「エバーローズゴールドを超える利点があるため」
というものです。
ただ、その特許内容を読むと、目的が「変色への対策」にあるようです。つまり、ロレックスの“セドナゴールド系”の目的は、エバーローズゴールドと同じです。そのため、「変色に強い」以外の利点があるとは思えません。
2つ目の仮説は、ロレックスの“セドナゴールド系”が
「エバーローズゴールドとは違う特徴があるため」
というものです。
つまり、ロレックスの“セドナゴールド系”に、「私たちが未だに知らない新たな利点がある」可能性です。
例えば、「色味の違い」です。実際、エバーローズゴールドのプラチナ含有率は1.5〜3%で、ロレックスの“セドナゴールド系”のパラジウム含有率は3.5〜4%です。ここから読み解くと、「ロレックスの“セドナゴールド系”の方が銅の含有率が低く、より優しい色味のピンクゴールドになる」と予想できます。
さらに別の仮説ですが、
「プラチナとパラジウムを、コスト面で使い分けるため」
という可能性もあるかもせれません。
つまり、「エバーローズゴールドも、ロレックスの“セドナゴールド系”も効果は同じ」という前提の中で、コスト面で2つの選択肢をもち、それを使い分ける用途です。
例えば、プラチナもパラジウムも自動車産業で大量に使われていますが、作る自動車の種類で、それぞれ使用量が違います。より詳しく言うと、「ディーゼル車をたくさん作れば、プラチナを大量に使う」「ガソリン車をたくさん作れば、パラジウムを大量に使う」という状況があります。そのため、自動車の需要の変化により、パラジウムやプラチナは需要が変動するのです。
つまり、自動車の需要に連動して、プラチナ価格やパラジウム価格は変動します。そのため、ある時はプラチナの方がパラジウムより高かったり、安かったりするのです。
その価格変動、つまり、「プラチナとパラジウムのコスト変動リスクに柔軟に対応するために、ロレックスの“セドナゴールド系”とエバーローズゴールドを使い分ける」という発想です。
ただしロレックスは、「実用性をどんどん改善する」姿勢で、常に業界をリードしてきた存在です。そのロレックスが、「コスト面」という“実用性改善なしの進化”を、今さら選ぶでしょうか。この説は、あまりにもロレックスの姿勢とかけ離れているかもしれません。
いかがでしたか?これらは、あくまで私の個人的な考えですので、実際はどうなるかは分かりません。どのような答えになるかは、ロレックスの新作を待ちましょう!
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