24.7.2017
【ディープなトケイ通信】モリッツグロスマンはランゲ&ゾーネの牙城を崩せるか?(中編) ~モリッツグロスマンとランゲ&ゾーネの価格と製品を比較~
Komehyo
ブログ担当者:須川
前回、より深い時計の世界をお届けする“ディープなトケイ通信”として、
「モリッツグロスマンはランゲ&ゾーネの牙城を崩せるか?(前編) ~モリッツグロスマンの良さ~」
を投稿いたしました。
今回は中編として、本題の「モリッツグロスマンはランゲ&ゾーネを越えられるのか?」という点を具体的に見ていきます。そのために、モリッツグロスマンとランゲ&ゾーネを、“価格”と“製品”で比較し、どちらが優れているか考察していきます。
↑モリッツグロスマン vs ランゲ&ゾーネ
※左:「ベヌー」、右:「ランゲ1」
■モリッツグロスマンとランゲ&ゾーネの価格比較
「モリッツグロスマンはランゲ&ゾーネを越えられるのか?」という点を紐解くために、その2者の比較をしていきたいと思います。まずは、“価格”の比較です。
<価格比較①> ※執筆時点のメーカー税込み価格
○代表モデル(K18RG)
・モリッツグロスマン「ベヌー(日本限定)」
⇒¥3,024,000
・ランゲ&ゾーネ「ランゲ1」
⇒¥3,834,000
○エントリーモデル
・モリッツグロスマン「テフヌート(ステンレス製)」
⇒¥1,350,000
・ランゲ&ゾーネ「サクソニア(K18RG/WG)」
⇒¥1,846,800
上の比較は代表モデルとエントリーモデルの比較です。しかし「ランゲ1」は、日付とパワーリザーブ表示があり、「ベヌー」はサイズがランゲ1より大きいため、純粋な比較はできません。また、エントリーモデルは素材が異なります。こちらも、純粋な比較はできません。そこで、サイズと機能を近づけて、比較してみます。
<価格比較②> ※執筆時点のメーカー税込み価格
○約40mm径の3針手巻(K18RG)
・モリッツグロスマン「アトゥム」
⇒¥3,780,000
・モリッツグロスマン「テフヌート」
⇒¥3,348,000
・ランゲ&ゾーネ「リヒャルトランゲ」
⇒¥3,618,000
・ランゲ&ゾーネ「サクソニアフラッハ(40mm)」
⇒¥2,592,000
○約35~36mm径の3針手巻(K18WG)
・モリッツグロスマン「テフヌート(日本限定)」
⇒¥3,132,000
・ランゲ&ゾーネ「サクソニア」
⇒¥1,846,800
○約41mm径のパワーリザーブ表示つき(K18RG)
・モリッツグロスマン「アトゥム・パワーリザーブ」
⇒¥4,212,000
・ランゲ&ゾーネ「グランドランゲ1」(日付表示付き)
⇒¥4,590,000
上の比較を見ると、約40mmサイズでは、ほぼ同じ価格、またはモリッツグロスマンの方が高価な設定です。やはり、モリッツグロスマンは、ベンチマークするランゲ&ゾーネと金額面で対等以上に勝負しています。
しかし、約35~36mmサイズでは、モリッツグロスマンの方が遥かに高価な設定になります。つまり、モリッツグロスマンは、ケース径を小さくするだけでは安くならないのです。これは、エントリーモデルへの考えの違いかもしれません。ランゲ&ゾーネは、エントリーモデルを“ケース径の小さなモデル”で実現します。一方、モリッツグロスマンは、エントリーモデルを“ステンレスケース”と“コストダウンムーブメント”で実現します。そのため、両者のエントリーモデルの価格に差があります。モリッツグロスマンのエントリーモデルの方が、約50万円安いのです。
モリッツグロスマンはまだまだ“新星”という立ち位置ですので、エントリーモデルの価格で優位に立とうと考えているのでしょう。
■モリッツグロスマンとランゲ&ゾーネの製品比較
次は、モリッツグロスマンとランゲ&ゾーネの“製品”の比較です。ここでは、「品質」と「デザイン」に分けて紹介します。
<品質>
前回の投稿でも紹介しましたが、モリッツグロスマンは“ムーブメントの製造”において、ランゲ&ゾーネと同じような仕様が見られます。「テンプ受けへの彫刻」、「ゴールドシャトン」、「洋銀(ジャーマンシルバー)」の採用、そして「ムーブメントの2度組み」を行う点も、ランゲ&ゾーネ同様です。
しかし、モリッツグロスマンの針やネジへのこだわり、ムーブメントへの細部へのこだわりは、ランゲ&ゾーネを越えているように感じます(詳細は、前回の“前編”をご確認ください)。後発メーカーがゆえに、ランゲ&ゾーネを研究して、“ランゲ&ゾーネ+αの仕様”になっています。しかし、先ほど見たように、価格面ではランゲ&ゾーネより高価になることもあります。
↑品質はモリッツグロスマンに軍配か
<デザイン>
“外装デザイン”は、嗜好の部分がありますので評価するのが難しいところです。個人的な見解では、ランゲ&ゾーネの方が優れているように感じます。
↑左:モリッツグロスマン、右:ランゲ&ゾーネ
上の画像は、同じアラビア数字のアワーマーカーをもつモリッツグロスマン「ベヌー」とランゲ&ゾーネ「1815」です。現代の腕時計は直径が40mm近くありますので、「いかに文字盤の“間延び感”を消すか」が大事だと思っています。
「ベヌー」は、41mmの直径があるにも関わらず、ベゼルを細く絞って文字盤を広くしています。さらに、針は細くデザインしています。そのため、文字盤の中央やインデックス数字の周りに大きな空間を感じ、より一層“間延び感”を感じてしまいます。
一方「1815」は、ベゼルを適度に太くし、文字盤のレイルウェイやインデックス、さらに文字盤内の段差などを秀逸に配置し、空間を上手に埋めることで“間延び感”を消しています。上の画像の矢印箇所は、「ベゼル外周」、「ベゼル内周」、「レイルウェイ」、「インデックス」、「文字盤の段差」です。この矢印の間隔を見ると、いかに「1815」の間延び感の消し方が秀逸かが分かります。また、「1815」は、適度な太さをもった針です。
このような理由で、私は外装デザインはランゲ&ゾーネに軍配を上げます。しかし、これも好みの問題ですので、あくまで私見です。逆に私は、裏から見える“ムーブメントデザイン”に関しては、モリッツグロスマンに軍配を上げます。特にモリッツグロスマンの「テフヌート」に搭載されるCal.102.0は、輪列を隠すドイツメーカーらしからぬ、“輪列を魅せるムーブメント”として面白い存在です(ドイツ式の受けとしては、比較的輪列が見える)。総じて、私はモリッツグロスマンのムーブメントからは、「美しさ」を感じます。
↑輪列を魅せるCal.102.0
ここまでのモリッツグロスマンとランゲ&ゾーネの比較をまとめると、以下のようになります。
~価格~
・同等またはモリッツグロスマンが高価
・エントリーモデルではモリッツグロスマンが優位
~製品~
・“品質はモリッツグロスマン優位
・外装デザインはランゲ&ゾーネ優位
・ムーブメントデザインはモリッツグロスマン優位
製品については、あくまで私見での評価ですが、細部までチェックをして判断をしております。
今回は、「モリッツグロスマンはランゲ&ゾーネの牙城を崩せるか?」という疑問に向き合う続編として、モリッツグロスマンとランゲ&ゾーネを価格と製品面で比較しました。今回の比較から見ると、「モリッツグロスマンはランゲ&ゾーネと対等に張り合える」ように感じたのではないでしょうか。
しかし、私は「モリッツグロスマンには、決定的に足りないものがある」と考えています。
それについては、また別の投稿で続編をお届けします。続編では、「モリッツグロスマンの課題」について触れたいと思います。
次回:「モリッツグロスマンはランゲ&ゾーネの牙城を崩せるか?(後編)
↓↓↓
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