26.2.2017
【番外編】筆記具の超人|モンブランの3つの魅力を考察する
Komehyo
ブログ担当者:那須
本日は番外編として少し時計から離れ、筆記具のトップメーカーである「モンブラン」を取り上げてみたいと思います。
ぜひお付き合いください!
◆筆記具界をけん引するトップメーカー「モンブラン」の魅力を探る!
筆記具のトップブランドとして知られているモンブラン。筆記具にそう詳しくなくとも、高級万年筆の代名詞として耳にしたことがあるのではないかと思います。
モンブランをそこまで有名にした、その魅力はいったいどこにあるのでしょうか。
私は、その答えとして「持ち主の所有欲を満たす重厚な存在感と機能性」「マニア心をくすぐる限定商品の開発」「時代の変化に対応する企業の攻めの姿勢」の3つがあげられると考えます。
一つ一つ紐解いていきましょう。
◆格調高いデザインとすぐれた機能性を持つモンブランの筆記具
日本にも優れた性能を持つパイロットなどの筆記具ブランドが存在しますが、モンブランはそれらとは「ブランドの立ち位置」という点で全く異なっているように思います。 車に喩えるならパイロットが「トヨタ」、モンブランが「メルセデスベンツ」のようなイメージでしょうか。パイロットの製品が現代の用途に合わせた優れた性能を持ち、実用面で長けているのに対し、モンブランは格調高く重厚感があり、実用品としてだけでなくステータスシンボルとしても使う側の所有欲を満たしてくれます。
「モンブランの万年筆を持つ」ということがステータスシンボルであることは明らかです。では、なぜモンブランはそのような存在になることができたのでしょうか?
それは、モンブランが大きな影響力を持つ著名人によって愛用されてきたからでしょう。
もちろん何も魅力がないのに多くの著名人から愛されるはずがありません。モンブランは、次の2つの圧倒的な価値を彼らに提供してきたのです。
①デザイン
モンブランの代表モデルといえば、真っ先に「傑作」の名をもつ「マイスターシュテュック」が挙げられます。漆黒のボディに金やプラチナの3連リング、キャップ先端にはモンブランのシンボルマークである「ホワイトスター」を冠したこのモデルはシンプルながらも洗練され、フォーマルな場にふさわしい圧倒的な存在感を放ちます。現在私たちが「万年筆」と聞いて思い浮かべるデザインを形作ったのもこのモデルだと言われているほどに、マイスターシュテュックの登場は衝撃的なものだったのです。
↑マイスターシュテュック149(写真は90年代のもの)
②機能性
多数の作家から支持される機能性もモンブランの強みです。オリジナル配合のプレシャスレジンを使用した本体は手に吸い付くようになじみ、ヨーロッパの最高峰であるモンブランの標高「4810」が刻まれた少し大きめのペン先は安定した書き心地を実現します。計算しつくされた重量バランスが、執筆のような長時間の作業も可能にしました。
このように、デザインと機能性の両方を兼ね備えたモンブランは、その価値に魅せられた各界の著名人に権威づけられながら、現在のステータスシンボルとしての地位を確固たるものにしてきたのです。
◆筆記具好きにはたまらない!モンブランの作家シリーズ・パトロンシリーズ
私はこのシリーズものの存在こそが、モンブランの筆記具としての市場価値を高めている部分だと感じています。
作家シリーズ・パトロンシリーズは、文豪と呼ぶに相応しい世界的著名人や芸術文化の発展に貢献してきた偉人へのオマージュとして、毎年限定発売されているものです。
それぞれ本数が限られており市場に出回る量が少ないことから、販売終了から数年後には高額で取引される事も少なくありません。
↑作家シリーズ初年度の1992年に発売されたヘミングウェイモデル
作家シリーズ・パトロンシリーズは当然ながら毎回デザインが大きく異なり、どれも非常に緻密で個性的なディテールが特徴です。具体的には、本体の軸の部分にレジンと呼ばれる素材で様々な色や模様を表現したり、925スターリングシルバーを全面に使用し彫刻を施したり、といった具合です。まるで現代の大量生産方式に逆らうような、温もりや趣向性の高さと芸術と言えるほどの美しさは他に類を見ません。
毎年発売される趣向を凝らした逸品の数々は、筆記具好きの収集欲に火をつけるのに十分な魅力を持っています。定番商品のラインナップに加えてこのような限定商品を発表し続けることが、筆記具ファンを絶えず惹きつけ、ブランドの付加価値を向上させている要因ではないでしょうか。
◆リシュモングループによってもたらされたブランド戦略の方向転換
創業から約90年後の1993年、モンブランはリシュモングループに買収され、リシュモン傘下となります。これ以降、モンブランは従来の事業内容に捉われず、筆記具以外の事業にも進出するようになりました。
そのラインナップは腕時計、バッグやベルトなどの革製品やカフスといったメンズアクセサリー、フレグランスなどと多種多様で、総合ブランドとして再出発を切った同社の意気込みが強く感じられるものとなっています。
↑モンブランの時計・革製品
実際に同社の2013年度の売上の6割弱は筆記具以外のこうした事業からなっており、筆記具は売上割合から考えれば非中核ビジネスという位置付けへと変化したことが見て取れます。時計に関して言えば、トゥールビヨンと呼ばれる複雑機構を持つ時計の開発にも成功しており、その技術力の高さをうかがい知ることができます。
こうした方向転換の背景には、新たに若い世代の客層を取り込もうという企業戦略があるのかもしれません。実際、デザイン面においては筆記具と大きく趣きが異なり、スポーティで流行を適度に取り入れたテイストが特徴的となっています。
今の時代に筆記具だけで経営を成り立たせることが容易でない事は想像できますが、古くからの伝統ある事業を継続させつつ、こうして新しい客層を取り込んでいく姿勢は新しいモンブランの大きな可能性を感じさせてくれます。
いかがでしたでしょうか?
このようにモンブランは、著名人からの支持を得て万年筆メーカーとして不動の地位を確立しながらも、万年筆に捉われない商品開発による新たな客層の取り込みにも積極的な姿勢を示しています。
一方で、毎年限定発売される作家シリーズ・パトロンシリーズの存在により、往年の筆記具ファンの心をガッチリ掴むことも忘れてはいません。
これら各方面へそれぞれフォーカスした「攻め」の販売戦略が、モンブランをこれからも躍進させていくことでしょう!
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