29.10.2016
中古時計のコンディションはこう見る! ~風防、ケース・ブレスレット、ムーブメント~
Komehyo
(前回からのつづき)
前回:「中古時計のコンディションはこう見る! ~中古品の腕時計を買うときのコツ~」
↓↓↓
②風防(ガラス)
↑無反射ガラスコーティングの
剥がれ(傷のように見えます)
次は風防(ガラス)です。ガラスといっても時計に使われているガラスはいくつかあります。ここでは高級時計でよく使われているサファイアガラスとして考えていきます(※1)。
ガラスの傷は2種類あります。まずは、ガラス本体に傷がある場合です。ガラスの縁はぶつけやすいので、サファイアガラスでも欠けてしまうことがあります。よくある例として、サイクロップレンズ(日付拡大のための凸レンズ部分)の当たり傷や、ガラスのフラット面につく引っかき傷のような線傷があります。
もう一つは、ガラス表面にあるコーティング剥がれです。多くの場合、このコーティング剥がれがガラスの傷のように見えます。少し解説します。高級時計の中には光の反射を抑えるために、無反射ガラスコーティングが採用されることがあります。このコーティングは、ガラスの裏面または両面に施されます。 両面にされている場合、裏面が剥がれることは稀有ですが、表面は剥がれることがあります。例えば、ブライトリングのクロノマットはパイロットのために作られた時計なので、 太陽光の反射を防ぐ目的でガラス両面にコーティングがされています。 裏面だけの片面コーティングより両面コーティングの方が反射を抑える効果が高いので、両面の方が優れたコーティングです。その反面、外部にさらされている表面にコーティングを施すことになるので、コーティング剥がれを起こすリスクがあるのです。
コーティング有無の見分け方としては、ガラスに白い蛍光灯の光を反射させてみて、白く蛍光灯が反射すればコーティングされていません。もし青色や緑色が現われたら、コーティングされています。
コーティングが剥がれているものを再コーティングすることは難しいとされています。ガラス交換をするか、あえてコーティングを全て剥がしてしまうという方法もあります。 あまりに大きな傷やコーティング剥がれがひどい個体は、見た目が悪くなるためあまりお勧めしません。
③ケース、ブレスレット
↑裏蓋やベゼルは文字があるために
傷消しできないことが多い
次にケース(本体)とブレスレットです。一番大事なのは、大きな打痕がないか確認することです。細かい傷はポリッシングで消すことができますが、大きな傷は消すことはできません。さらに、ケース打痕があるということは、強くぶつけた、または落としてしまったと考えられます。精密は時計のムーブメントにダメージがある可能性があります。店頭で売られている時計であれば、当然内部までメンテナンスしてあると思いますが、一応メンテナンス状況を確認した方が良いでしょう。
金属ブレスレットに関しては、“伸び”に注意する必要があります。“たるみ”と言ってもよいかもしれません。腕にきつく装着されていた場合や、長期間使用された経年劣化で起こります。時計のケースを持って横にしてみましょう(リューズ先を上か下に向ける向きで)。ブレスレットがその重みで曲がりますが、どの程度曲がるかを確認することができます。コマが細かいブレスレットは、構造上よく曲がる傾向にあります。しかし、劣化によって伸びてしまった個体は明らかに過度に曲がり、腕に装着した時も見るからに不恰好です。
↑ブレスレットが伸びてしまった様子
“伸び”がある場合は直すことはできないので、ブレスレットを一式交換するしかなくなります。ポリッシングされ、一見きれいに見えるブレスレットでも、この“伸び” を確認することでどのくらい使用されたか想像することができます。
その他のポイントとして、サイズ調整する際に触るブレスレット側面のネジも確認すると良いでしょう。場合によっては、ネジ式ではなく貫通している棒をたたいて外すタイプもあります。以前のサイズ調整で、雑に調整されているとネジ山がつぶれていることがあります。見た目も悪いですが、あまりにひどい場合は、今後ネジを回せなくなってしまうこともあります。一度確認しておきたいポイントでもあります。
④ムーブメント
↑機器にて計測中(日差+4秒、振り角304°)
※この例はサンプルです
(拘束角は合っていません)
時計の内部であるムーブメントの状態は、外から確認するのは難しいです。ただし、時計の精度を測る機器を使用し、だいたいの状態を確認することはできます。店頭のスタッフに確認してもらいましょう。日差は機械式時計だと、±30秒ぐらいが許容範囲です。高級ブランドだと、±10秒ぐらいが目安になります 因みに、日差+5秒だと1日に5秒進むという意味です。
後は、振り角という数値を見ます。感覚的な表現にすると“勢い”とも言えます。例えば、コマ回しを想像してください。最初は勢いのあるコマも、時間と共に勢いがなくなります。勢いがあるうちは安定しているコマも、勢いが落ちてくると不安定な姿勢になり、やがて止まります。ゼンマイで動く機械式時計も同じです。勢いがないと、時計を携帯した時の精度が落ちます。ムーブメントにもよりますが、標準的な男性用自動巻なら250~300°ぐらいあると安心できます。ただし、振り角には注意が必要です。拘束角という設定を正確にしないと正しい数値が出ないのです。有名でないムーブメントの場合、店頭では正しい拘束角が分からず、正確な振り角が出せないことがあります。
いかがでしたか?コンディション見極めのポイントも色々あることがお分かりいただけたでしょうか。これを中古品選びのコツとして掴んでいただければと思います。もちろん中古品は価格が魅力で、選択肢の幅が増えるという点で非常にお勧めです。しかし、コンディションを見極める力があったとしても、実際に購入する時は少し不安になるかもしれません。やはり信頼できるお店で、時計の状態について説明を受けたうえで、納得できる1点を選ぶことができれば非常に良いお買い物になります。
また、最初はきれいだった時計も、購入後の使用方法によってコンディションを落としてしまう場合もあります。状態を見極めてよい時計を選べるということは、購入後もコンディションを落とさないように気を配れることにも繋がります。
是非、時計のコンディションを見極める力を身につけてみてください!
※1・・・風防の種類については、過去の投稿「注目を浴びるサファイアクリスタルについて知ろう ~サファイアガラスと呼ばれる素材とは?~」をご参照ください。
※おすすめ投稿記事
「【腕時計の基礎知識】「ピンバックル」「フォールディングバックル」とは何のこと? ~尾錠とDバックルのメリット・デメリット~」
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