10.6.2016
今でも時計愛好家に人気のあるIWC「GSTシリーズ」の魅力とは? ~GSTクロノ、GSTアクアタイマー、GSTアラームなど銘品揃い!~
Komehyo
ブログ担当者:萩原
現在のIWCの商品の主要ラインは6つあります。パイロットウォッチ、ポルトギーゼ、アクアタイマー、ポートフィノ、インヂュニア、ダ・ヴィンチです。高級時計に興味をお持ちの方であれば、それらのモデルのデザインがすぐに思い浮かぶのではないでしょうか。
では、「GSTシリーズ」はいかがでしょうか?GSTクロノやGSTアクアタイマーなどがすぐに思い浮かぶ方は、おそらく時計が好きな方だと思います。なぜならば、GSTシリーズは既に2003年ごろに生産終了になっており、現在の主要ラインには存在しないからです。そのため、現在このGSTシリーズを好んで購入する方の多くは、「時計愛好家」の範疇に属する方です。
では、なぜ愛好家の方は生産終了になった今でもGSTシリーズに魅力を感じるのでしょうか?私はその理由を「GSTシリーズがIWC流スポーツウォッチの『産みの情熱』を持っているから」だと考えています。
今週は、GSTシリーズの魅力について述べさせていただきます。
↑GSTシリーズの魅力に迫る
◆GSTシリーズとは?
まずはGSTシリーズについてです。GSTシリーズは1997年に発表されたました。なぜ「GST」というアルファベットが名称なのか疑問に感じませんか?実は「GST」は、金、ステンレス、チタンという素材を表しており、それらをケース素材に使っているのです。つまり、G(Gold)、S(Stainless)、T(Titanium)のそれぞれの頭文字を組み合わせた表現が「GST」です。
GSTシリーズは、機能や素材でバリエーションが多くあります。素材は前述したように「金」「ステンレス」「チタン」があります。そして、機能は大きく分けて6つに分かれます。下で簡単に紹介いたします。
<GSTシリーズ>
①GSTクロノ
クロノグラフ機能をもつモデル。クォーツモデルも存在する。
②GSTアクアタイマー
回転ベゼルを有する2000mの防水性をもつダイバーズモデル。
③GSTアラーム
設定時刻に音を鳴らすアラーム機能を搭載したモデル。
④GSTラトラパンテ
2つの経過時間が同時計測できるスプリットセコンドクロノグラフ機能をもつモデル。
⑤GSTパーペチュアルクロノ
永久カレンダー機能とクロノグラフ機能を併せ持つモデル。
⑥GSTディープ・ワン
機械式腕時計に水深計を組み込んだ画期的なモデルです。当時大きな話題を集めました。生産開始からすぐにオーバーコストとなることが判明し、少数のみしか製造されませんでした。
このように、GSTシリーズには何かしらの機能がついています。そのため、機械式時計らしさを存分に感じることができます。そしてデザインは、厚みのあるケースの採用により高い防水性を確保しながら、ラグからブレスレットまでを同じラインで描き、一体感のあるシルエットに仕上げています。さらに針とインデックスには、高い視認性を与えるために夜光塗料を塗布しています。正に、ハイスペックにするために設計された本格的スポーツモデルといった印象を受けます。
◆GSTシリーズの魅力は「産みの情熱」!
ここからが本題です。つまり、「なぜ愛好家の方は生産終了になった今でもGSTシリーズに魅力を感じるのか」という点についてです。もちろん、生産終了モデルになっていることによって、入手困難なものほど欲しくなるという「スノッブ効果」が働いているという点もあるとは思います。しかし、それ以外にも理由があるはずです。私はその理由を「GSTシリーズがIWC流スポーツウォッチの『産みの情熱』を持っているから」だと考えました。少し説明をいたします。
実はIWCはかつてポルシェデザインと提携していました。その時のヒット作品が「プロフェッショナル・チタニウムダイバー・オーシャン2000(以下、オーシャン2000)」というモデルです。このモデルは「ポルシェ」の名前を冠しながら、2000mの防水性をもち、さらに当時はまだ加工が難しかったチタン素材を流線型に加工したエポックメイキングな作品でした。スポーティなモデルでありながら、高いデザイン性があるモデルです。これが経営に窮していたIWCにとって、起死回生のヒット作になりました。しかし、1997年にその関係が解消され、ポルシェデザインとのコラボレートウォッチは製造中止をすることになります※1。
↑ポルシェデザイン by IWC「オーシャン2000」
IWCは過去に「ヨットクラブ」「ゴルフクラブ」「ポロクラブ」「アクアタイマー」などスポーツモデルと目される作品を作っていましたが、1980年代以降、IWCの製造するスポーツモデルの多くが「ポルシェデザインがデザインしたモデル」だったのです※2。そのため、ポルシェデザインとの提携解消に対してアクションを起こさないと、IWCはラインナップから主要スポーツモデルを失ってしまう状況になります。
そこでIWCは新たな「IWC流スポーツウォッチ」を構築しようと情熱を傾けます。そして、その情熱を愚直なまでに表現して誕生したラインがGSTシリーズなのです。この点が重要です。つまり、GSTシリーズには情熱を注いで産み出された背景があり、さらに、その具現である魅力的なデザインがあります。私の個人的な意見ですが、GSTシリーズはデザインにまだ垢抜けない印象を感じますが、「世間をあっと言わせたい!」と感じる情熱的な雰囲気を持っています。
「世間をあっと言わせたい!」と表現しましたが、打って付けのエピソードがあります。当時からチタン素材は加工が難しく、通常はステンレスモデルよりチタンモデルの方が高コスト高価格になります。しかし、社内でチタンを加工できる強みを活かし、なんとIWCはGSTシリーズのチタンモデルをステンレスモデルより安価に設定しました!そして、仕上げの質感もレベルが高いのです。このエピソードは一例ですが、私はIWCがGSTシリーズにかなりの情熱を注いだと感じます。
いかがでしたでしょうか?ポルシェデザインとの提携が解消されるという状況で、つまりIWCにとって背水の陣のような状況で作り上げられた作品がGSTシリーズです。その製作には「産みの情熱」がこもっているはずです。それが故に、GSTシリーズはIWCならではの「直球勝負のスポーツウォッチ」に仕上がっています。このストレートさに、多くの時計愛好家が心打たれるのだと思います。
私たちは「ネクストヴィンテージ」という1990年代の銘品を紹介するシリーズブログを持っていますが、正にGSTシリーズもこれに該当する90年代の銘品です。本記事を読んでくださっている皆さんがこれをきっかけに、少しでもIWCのGSTシリーズの魅力に気づいてくだされば幸いです!
※1・・・ポルシェデザインとの関係解消の時期については諸説あります。ここでは1997年説で書いております。
※2・・・ポルシェデザインとのコラボレートによって、オーシャン2000の他にもIWCから様々なモデルが作られました。「コンパスウォッチ」「チタニウムクロノグラフ」「オーシャン500」「スポルティボ」「ワールドタイム」などです。
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