高級腕時計の時計通信

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22.7.2016

オメガを語る上で欠かせない人物“ジャック・マイヨール” ~シーマスター120をヒットさせた人物~

Komehyo

ブログ担当者:篠田

 

オメガを語るときに、キーとなる人物や出来事があります。出来事なら、アポロ計画で月に同行したこと、オリンピックの公式タイムキーパーを勤めていること、天文台コンクールで活躍したことなどです。人物なら、映画007のジェームズボンド、F1のミハエル・シューマッハ氏、そしてジャック・マイヨール氏です。

 

では皆さん、ジャック・マヨール氏をご存知でしょうか?

 

マイヨール氏は1988年に公開されたリュック・ベッソン監督の映画「グランブルー」の主人公の名前であり、そのモデルになった実在したフリーダイバーです。1976年にフリーダイビング(素潜り)のヴァリアブル・ウェイトで、前人未到の100mを潜るという記録を達成した人物です。その後、さらに記録を塗り替え、最終的には105mまで記録を伸ばします。

 

そして1981年、マイヨール氏が101mの記録を達成していたときに腕につけていた時計はオメガの“シーマスター120”でした。そこから、オメガとマイヨール氏の蜜月関係は始まります。その後の1990年代には、オメガは毎年のようにマイヨール氏とコラボレーションした限定シーマスターを発表します。

 

今週は、オメガを語る上では欠かせない、ジャック・マイヨール氏についてご紹介いたします。   

 

↑ジャック・マイヨール限定モデル

 

 

 

 

 

 

■イルカを愛したフリーダイバー、ジャック・マイヨール氏

 

まずはジャック・マイヨール氏について簡単にご紹介します。前述したように ジャック・マイヨール氏は、フリーダイビングにおいて人類で初めて素潜りで100mを越える記録を作った人物です。そして、映画「グラン・ブルー」の主人公としても有名な方です。そして何より、マイヨール氏が親日家という点が私たちにとって嬉しいポイントです。

 

実は、マイヨール氏は上海生まれのフランス人で、幼少時代はアジアにいたのです。そして、10歳のときにバカンスでやってきた日本(佐賀県唐津市)で初めてイルカに出会ったそうです。その後、マイヨール氏はイルカを愛し、イルカになりたいとさえ思ったそうです。“イルカ人間”とまで呼ばれたマイヨール氏は、その生涯でイルカとの共存を訴えま続けました。

 

マイヨール氏はアジアで過ごした後、フランス、デンマーク、カナダ、アメリカ、イタリアなど世界を巡るような人生を送ります。マイヨール氏は海と過ごす人生を選択しますが、彼を没頭させたのがフリーダイビングです。100mの大台を超えた潜水は衝撃的だったと聞きます。その後、マイヨール氏をモデルにした映画「グランブルー」の世界的大ヒットもあり有名になりますが、最期はエルバ島で自ら命を絶ってしまいます。

 

 

 

 

 

 

■オメガとマイヨール氏の関係

 

では、オメガとマイヨール氏との関係はどんなものだったのでしょうか?

 

ご存知の方も多いと思いますが、オメガには“シーマスター”という有名なダイバーズモデルがあります。様々なシーマスターが作られる中で、1966年には“シーマスター120”が登場します。そして時は過ぎ、時計業界はクォーツ式が全盛を迎える時代になります。もちろんオメガも時代に対応します。そう、オメガは“クォーツ式”のシーマスター120を開発したのです。

 

実は、このシーマスター120をテストするうってつけの人物が、100mの潜水ができるマイヨール氏だったのです。1981年、自身のもつ記録を塗り替えるために設定した101mの潜水時にこのモデルを着用しました。このクォーツ式のシーマスター120は回転ベゼルを備えておりますが、その後登場する回転ベゼルのないシーマスター120への布石となりました。

 

 

 

 

 

 

■オメガの“ジャック・マイヨール”モデル

 

オメガはジャック・マイヨール氏の記録と貢献を称え、1995年から2002年まで毎年夏ごろにマイヨール氏の限定モデルを発表しました。このモデルの主な特徴は次の3点です。

 

 

 

<ジャック・マイヨールモデルの特徴>

 

①ジャック・マイヨール氏が着用していた“シーマスター120”をベースにすることが多い

※一部“シーマスタ300”もあります

 

②“海を表現するブルーとグリーンの文字盤 ”や“イルカをモチーフにした文字盤”を採用

※イルカのモチーフがない文字盤も存在します

 

③ケースサイドに「JACQUES MAYOL」の文字が刻印される

 

 

 

マイヨール限定モデルの文字盤ですが、イルカはマイヨール氏とイルカの関係を象徴したものでしょう。さらに、ブルーとグリーンの文字盤色はマイヨール氏の見た海の色をイメージしたのでしょう。

 

では、数が多いので全てはご紹介できませんが、一部マイヨールモデルを紹介したいと思います。  

 

 

 

■1997年限定(REF.2500.80  限定5000本 )     

 

オメガ REF.2500 80 シーマスター120・マイヨール’97 LIMITED

シーマスター120ベースのマイヨール限定です。ブルーの文字盤の中心にイルカが泳ぎまわる姿が描かれています。明るいブルーというよりもマットなブルーに見えます。この1997年のモデルはジャック・マイヨール限定の中でも代表的な時計と言えます。      

 

 

■2001年限定(REF.2507.80  限定4000本)

 

落ち着いたブルーの文字盤に波模様もなく、イルカも描かれていない、シンプルな文字盤です。スポーツウォッチですが、ドレッシーな雰囲気もあります。ジャック・マイヨールの限定の中でも、シンプルなものを選ぶ場合は良い選択肢です。      

 

 

■2002年限定(REF 2508.80 限定3500本)

オメガ REF.2508 80 シーマスター120・マイヨール’02 LIMITED

2001年にマイヨール氏が亡くなったため、このモデルが最後となりました。ぱっと見はこれまで登場したシーマスター120ベースの限定と似ていますが、針が肉抜きのものから夜光塗料で満たされたものへと変化しました。これにより視野性が高いモデルとなりました。        

 

 

最後に、ジャック・マイヨール限定ではない関連作である“シーマスターアプネアマイヨール”についてご紹介いたします。       

オメガ REF.2595 30 シーマスタープロ・アプネア 自動巻

↑REF.2595.30

 

このモデルは、潜水時間が一目で分かる時計として、ジャック・マイヨール氏の要望のもと開発されました。 文字盤には7つの窓があり、クロノグラフ作動後、一分につき一つの「窓」が赤くなっていく仕組みになっています。(7つの窓の7分間は人間が息を止めていられる限界時間と言われています) ケースサイズは42mm、分厚い作りでダイバーズウォッチのらしさが出ています。クロノグラフの針は赤く、作動中もとても見やすいです。

 

※画像では文字盤の色は白(シルバー)ですが、黒文字盤も発売されました。    

 

 

 

 

 

 

■最後に

 

今回はオメガとジャック・マイヨール氏との関係について紹介をさせていただきました。そして、シーマスター120が最もマイヨール氏と関連の強いモデルです。実は防水性が120mのこのモデルは、他のシーマスターに比べると防水性が劣るのです(他のモデルは150m、300m、600mなど)。そしてサイズ感も小ぶりにしてあります。そのため価格も抑えてあり、オメガの中ではエントリーモデルとして展開しました。

 

しかし、シーマスター120が小ぶりなサイズであったり、防水性が劣る点もマイヨール氏の存在で正当化できるのです。マイヨール氏は細身の体型であり、小ぶりなサイズの時計が似合います。そして、マイヨール氏は素潜りのアスリートであり、彼の使用する時計には飽和潜水レベルの防水性は必要ありません。シーマスター120のスペックは、マイヨール氏に関わるモデルが故の正当なものなのです。そう発想すると、シーマスター120はエントリーモデルでありながら、マイヨール氏をオマージュしたこだわりのスペックとも受け取ることができます。

 

そう、シーマスター120がヒットした影には“ジャック・マイヨールあり”なのです!

 

 

 

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