18.12.2022
【時計機能をわかりやすく説明】「イクエーション オブ タイム」とは何か? ~均時差表示の機能~
Komehyo
ブログ担当者:須川
■【時計機能をわかりやすく説明】「イクエーション オブ タイム」とは何か? ~均時差表示の機能~
今回は、時計の機能をわかりやすく説明する企画として
イクエーション オブ タイム
(均時差表示)
の機能について説明します。
例えば、下の画像のパネライ「ルミノール イクエーション オブ タイム」は、その名の通り、イクエーション オブ タイム(以下、イクエーション)の機能を持つモデルです。
↑型式PAM00670
このモデルの文字盤の6時位置には、「+15~-15」と書かれた表示があります。これが、まさにイクエーションの肝となる「均時差表示」部です。つまり、この表示をみれば、「均時差」がわかるような仕組みになっています。
ただ、この機能はメジャーなものではないので、きっと多くの方は、「均時差って何?」という当たり前の疑問をお持ちだと思います。そこで、以降で、均時差の説明をさせていただきます。さらに、イクエーションについてもっと深く知ってもらうために、イクエーションの活用方法や、イクエーションの種類を紹介します。
■「均時差」とは?
まずは、「均時差」から説明します。
まず前提ですが、私たちが使っている時間は、「1日」を「24時間」として計算します。そして、その「1日」の24時間の長さとは、「太陽の南中(真南にあること)から、次の南中まで」を基準に作られたものです。これは、昔、日時計を使って時間を把握していたことからも、ピンとくるでしょう。
↑日時計
この日時計からも分かるように、私たちが使っている“時間”の原点は、「太陽の動きが一巡したら1日で、それを分割して“時間”を作る」というものなのです。この「見える太陽の動き」から作った時間は、「視太陽時」と呼ばれます。
しかし、太陽の動きを正確に測ると、実は、「毎日同じではない」のです。例えば、南中から次の南中までの時間を日ごとに測ると、ある日は長く、ある日は短いのです。つまり、視太陽時で作られる時間は、「日ごとに、長さが違う時間」なのです。そのため、「毎日、規則正しい時間」を求める現代おいて、視太陽時は、使い勝手の悪いものでしょう。
そこで、今、私たちが使っている時間の基本となるものが、「平均太陽時」なのです※。これは、先ほどの視太陽時が「日ごとに、長さが違う時間」だったので、より便利にするために作られた時間で、「視太陽時を平均し、毎日が同じ長さの時間になるように調整された時間」です。この平均太陽時が普及したことにより、毎日繰り返し同じペースで時間を刻む装置である“機械式時計”が本領を発揮できていると言えるでしょう。
※今の時間を厳密に言うと、平均太陽時をベースにした「世界時」から発展し、原子時計の時間に微調整をかける「協定世界時」になっています。
↑平均太陽時でこそ、時計は本領を発揮できる
ここまで説明できたので、ようやく「均時差」について語れます。
簡単に言うと、
「均時差」=
「視太陽時」と「平均太陽時」の差
ということになります。
例えば、平均太陽時を基準にすると、視太陽時は、11月3日ぐらいに16分33秒ほど進み、2月12日ごろに14分6秒ほど遅れます。そして、年に4回は、平均太陽時と視太陽時が一致するときがあります。最大値と最小値のイメージでは、このぐらいの範囲で均時差が推移します。
つまり、均時差の範囲を表示するものを作るなら、「±15分ぐらいが分かる表示」を作れば良いのです。その表示を時計に落とし込んだ例が、先ほどのパネライのイクエーションのような表示です。
↑今日の均時差を表示している
このイクエーションにある数字は「今日の均時差」を表し、時計が表示する時間(平均太陽時)にこの値をプラスマイナスすれば、視太陽時が分かるというものです。
■イクエーションの活用場面は?
では、均時差についてご理解いただいたところで、次なる疑問は、
「均時差を表示するイクエーションは、いつ使うの?」
となるでしょう。
この点も、説明します。
↑イクエーションはいつ使う?
まず、イクエーションの機能でやりたいことは、均時差を表示し、「視太陽時を知ること」です。つまり、“実際の太陽の動きをベースにした時間”を知ることが必要な場面で使われる機能です。
現実的に見ると、現在、私たちがこの視太陽時を知りたいということはほとんどありません。そのため、私たちがイクエーションの時計を所有しても、活躍場面はほとんどないでしょう。どちらかというと、イクエーションの時計を購入する人は、「視太陽時を時計だけで知ることができる」という特別感に魅力を感じて、選んでいるのだと思います。まさに、ロマンの時計です。
では、イクエーションの時計に活躍場面がほとんどないなら、なぜ存在するのでしょうか。これは、もちろん、「活用が想定できるニッチな場面があるから」です。
まず、現在でも視太陽時を活用している例を挙げると、「建築物の日照の確保」を考える場面が挙がります。ただし、この活用シーンにおいて、わざわざ自身の腕時計のイクエーション機能を元に計算するということは、おそらくないと思います。むしろ、最も活用の可能性があるのが、「天測航法」を使う場面です。
↑天測航法を使う場面なら、均時差を使う可能性がある
つまり、「航海中に、現在位置を計算する」場面です。この天測航法の場面において、イクエーションを使うなら、「現在地の経度を知る」場合です。
その方法を具体的に説明すると、まず、太陽が真南に来た時の時間を、時計を見て確認します。次に、イクエーション表示を見て均時差分の修正をして視太陽時を割り出します。そして、そこで得られた視太陽時と、グリニッジの基準時間の正午(12時)との時間差を計算し、その時間差を“経度の度数”(例えば、「東経139°44′28″」など)に変換します。すると、現在地の経度が分かります。
かなりニッチですが、このような用途でつかうことは可能です。しかし、GPSがある現在、このような使い方をすることは、稀だと思います。そのため、やはり、イクエーション機能の一番の魅力は“特別感”と捉えた方が良いでしょう。
■最後に
今回は、時計の機能をわかりやすく説明する企画として、イクエーションを解説しました。
そこで説明した通り、イクエーションは“私たちが活用する機能”ではなく、ロマンとしてその特別感を味わうものだと理解すべき存在です。そういえば、そもそも現在の機械式時計も、より正確な電波時計などがあるにもかかわらず、敢えて使っているロマンの存在に近いと思います。そう考えると、“おそらく使わない機能”であるイクエーションの時計を所有する意味も、よくわかります。
しかし、こういったロマンの機能であっても、時計メーカーは、イクエーション機能を発展をさせています。例えば、ブランパンやブレゲは、新たなイクエーションの表示方法として「ランニング イクエーション」を開発しました。これは、これまでの「均時差を表示→計算して視太陽時を知る」というものではなく、「“視太陽時用の分針”を追加して、直接、視太陽時を表示する」タイプです。これは、視太陽時を直接読み取る、新たな種類のイクエーションと言えるでしょう。
↑プランパン
ヴィルレ ランニングイクエーション
このように、ニッチな存在であるイクエーションも、少しずつ進化しています。もし皆さんの中で、「ロマン性の高い時計」に興味がある方は、イクエーションウォッチを候補のひとつにしていただいても良いのではないでしょうか!
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