高級腕時計の時計通信

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8.11.2020

セイコー|なぜ「ツナ缶」ダイバーズは世界中から愛されているのか?

Komehyo

ブログ担当者:那須

 

■セイコー|なぜ「ツナ缶」ダイバーズは世界中から愛されているのか?

 

今回紹介するのは、日本が誇る時計ブランドセイコー(SEIKO)の歴史的シリーズ、「ツナ缶」モデルの紹介です。

 

きっと、ご存知ない方は「ツナ缶?」と、疑問に思うと思いますので、写真で紹介します。

このモデルが「ツナ缶」です。もちろん、この「ツナ缶」という名称は正式なものではなく、愛称です。実際には、「マリーンマスタープロフェッショナル」「ダイバースキューバ」というモデルに、ツナ缶モデルは存在します。これらのモデルは、セイコー内のブランドとしては、「プロスペックス」に属します。

 

ちょうど今年に入り、「ツナ缶」モデルの魅力的な新製品が発売されたこともありますので、今回、取り上げることにしました。今回のテーマとしては、「なぜ“ツナ缶”モデルが、世界中から愛されているのか」を考察します。

 

 

 

 

 

 

■「ツナ缶」モデルとは?

 

まずは、「ツナ缶」モデルとはどういったモデルなのかを、説明しておきます。

 

端的に言うと、「ツナ缶」と呼ばれるのは、“外胴プロテクター”と言われるリング状のガードがついているモデルになります。

この外胴プロテクターは、横から見るとやや台形の円筒形状となっており、まさに「鎧を着けた時計」のようです。このような力強い外観にも関わらず、この特徴的なデザインは、その形状が「缶詰めのツナ缶」に似ているとの意見から、「ツナ缶ケース」と広く呼ばれるようになりました。オーソドックスなデザインを好む傾向のあるセイコーにおいて、このツナ缶モデルは、まさにアイコニックな存在と言えるでしょう。

歴史を辿ると、初代の外胴プロテクターモデルが発売されたのは、なんと1975年です。この初代のツナ缶は、飽和潜水仕様600m防水ダイバーズで、黒色のチタン製外胴プロテクターや蛇腹式ポリウレタンバンドを採用するなど、当時としては画期的なダイバーズウォッチでした。

 

そして特筆すべきは、ツナ缶はデザインのための造形ではなく、機能を追求した結果のデザインであるという点です。同モデル開発のきっかけは1968年に広島の職業潜水士から届いた手紙だそうで、そこには「現在の市販ダイバーズには、ヘリウムガスを用いる飽和潜水に耐えるモデルがない」と書かれていました。セイコーはこれに完璧な答えを出すため、外胴プロテクターモデルを発表したと言われています。

 

 

 

 

 

 

■なぜ“ツナ缶”モデルが、世界中から愛されているのか?

 

では、「なぜ“ツナ缶”モデルが、世界中から愛されているのか」について、私の意見を紹介します。

 

皆さんも、この「ツナ缶」モデルが世界でも評価されているのか気になると思います。実は、この「ツナ缶」という名称は、海外でつけられた名前と言われています。その点を考えても、このモデルは日本だけでなく、世界的に一定の評価のある時計だと考えられます。

 

私は、このツナ缶モデルが支持さていることには、3つの理由があると考えています。それは、以下です。

 

 

 

<「ツナ缶」モデルが支持される理由>

 

①機能を追求したデザインだから

 

より優れた本格ダイバーズウォッチとして開発された「ツナ缶」ケースですが、その背景にあるデザイン決定の要因は、「機能のため」というものです。つまり、「必要は発明の母」ということわざがあるように、「ツナ缶」ケースは必要な機能を得るために結果生まれたデザインです。

↑機能を先行させたデザイン

 

「“魅力的なルックス”のためのデザイン」は、時代の移り変わりと共に手が加えられていくように思います。しかし、ツナ缶モデルのような、「機能を先行させたデザイン」は、流行に左右されない素朴な魅力があるように感じます。

 

これは同モデルの“ツール”としての魅力を際立たせるのに一役買っています。

 

 

 

②“ストーリー”があるから

 

現代はモノに溢れています。そのため、もしこだわりがなければ、こだわりの時計を選ぶ必要もないでしょう。しかし、ツナ缶モデルは、多くの時計好きに支持されています。やはりそれは、“ストーリー”があるからです。

 

前述しましたが、ツナ缶デザインには、「広島の潜水士からの要望で誕生した」というストーリーがあります。現代ではインターネットの普及により情報が溢れていますが、中には、マーケティングを意識したような誇張したストーリーも見られます。しかし、ツナ缶モデルには、具体性のあるリアルなストーリーがあります。

↑「ツナ缶」は国産ならではのスタイル(右)

 

きっと、ツナ缶モデルに興味を持つ人は、「これが飽和潜水を目指した国産ダイバーズウォッチか」と、想像を巡らせながら購入検討をすると思います。実際に、外観を見ても、ロレックスのサブマリーナーなどの“スイスのダイバーズウォッチ”とは違いますし、国産ならではのスタイルを感じることができます。

 

 

 

③プロユースだから

 

ダイバーズウォッチはプロダイバーに使われることもあり、命を預かる大切なツールです。そこで求められるのは、やはり時計としての“信頼性”でしょう。

 

先にも触れた通り、ツナ缶もモデルは「プロフェッショナルからの要望により開発された時計」です。この事実は、信頼性を勝ち取るだけの大きなアドバンテージと言えるのではないでしょうか。そして、ツナ缶モデルは、実際にJAMSTECの深海調査船に同行し、深海での動作実験をしたこともあります。その信頼性は、ユーザーも納得できるでしょう。

↑プロダイバーのために

 

実は“プロフェッショナルのための人気時計”は世界中を見渡してみると、たくさん見つかります。

 

例えば、ロレックスの「GMTマスター」は、アメリカ航空会社「パン・アメリカン航空」の要望で開発された時計です。また、オメガの「スピードマスター」は、NASAによる採用テストを経て、初の宇宙月面着陸ミッションに採用されたプロフェッショナル認定ウォッチです。このようなプロフェッショナルウォッチは、本物を求めるユーザーに支持される大きな要因になっていると感じます。ツナ缶モデルも、そのひとつなのです。

↑GMTマスター(上)とスピードマスター(下)

 

 

 

ここまでで紹介した3つの理由により、ツナ缶モデルは世界中で支持されているのだと思います。つまり、「実用性の高い時計が欲しい人」「こだわりの時計が欲しい人」、そして、「プロダイバー用ツールとして欲しい人」にも選ばれる時計が、ツナ缶モデルなのです。

 

 

 

 

 

 

■最新モデルは「日常使いしやすいツナ缶」

 

最後に、ツナ缶モデルの「今」を知っていただくために、最新のモデルを紹介します。そのモデルはプロスペックスの中でも、「ストリートシリーズ」に位置づけされるモデルです。

↑SBDY059(ベージュ)、SBDY061(ブルーグレー)

 

上の写真のモデルが、そのストリートシリーズに属する最新のツナ缶モデルです。このモデルは「アーバンサファリ」と呼ばれています。一見解りづらい表現ですが、これは“都会的アクティブネス”というイメージで、それが最も端的に表現されているのは、「中間色を使ったカラーリング」と「小ぶりなサイズ感」です。

 

まずカラーについては、同色系でまとめることによって「落ち着いた雰囲気」を出すようにしています。この統一されたカラーリングの効果もあり、インデックスや回転ベゼル、外胴プロテクターなど構成要素の多いデザインながら、シンプルに見えます。ダイバーズウォッチといえば、普通は視認性確保のために「メリハリの強いカラーリング」になりがちなのですが、その点は全く違ったアプローチで色決めされています。そこが良い意味でダイバーズらしくなく、垢抜けている印象です。

サイズについては、「日常使いしやすいサイズ感」となっています。これまでその多くは、突出した防水性能を確保するためか、途方もなく大きく分厚いサイズで展開されており、タウンユースには適していないという側面がありました。正直な話をすると、今回紹介する立場の私も、手首が細いこともあり、ずっとツナ缶モデルに距離を置いていた過去があります。

 

しかし、最新のツナ缶モデルは違います。このアーバンサファリは、ケース径が43.2mm で決して「小ぶり」と言えるサイズ感ではありませんが、ラグが短く処理されていることもあり、印象としては「小ぶりなツナ缶」に感じます。私の感覚としても、十分日常使いできるサイズです。これは、本当に欲しくなる時計です。

 

元々、プロダイバーズウォッチとして誕生した「ツナ缶」も、新作トレンドでは、「より日常使いしやすいツナ缶」になっています。是非、新しいツナ缶が気になる方は、実際の雰囲気を体験して欲しいです。きっと、気に入るはずです!

 

 

 

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