高級腕時計の時計通信

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7.9.2020

【腕時計の基本知識】よく登場する用語「パワーリザーブ」とは何のこと?

Komehyo

ブログ担当者:須川

 

時計用語としてしばしば登場する「パワーリザーブ」という言葉を、皆さんはご存知ですか?

高級時計の世界に踏み込んだばかりの方は、時計雑誌などでもよく見かける用語ですので、気になる用語だと思います。

 

そこで今回は、「パワーリザーブとは何なのか」を解説します。

 

結論から言うと、時計用語として使っている「パワーリザーブ」には、2つ意味があり、

 

 

①最大の駆動時間

 

②「残り駆動時間」を表す計器

 (パワーリザーブインジケーター)

 

 

のどちらかを意味します。

 

以降で、詳しく説明します。

 

 

 

 

 

 

■2つの「パワーリザーブ」

 

では、「パワーリザーブとは何か」を説明します。パワーリザーブを文字通りに訳すと、「力の蓄え」というような意味になります。実際の意味もその通りなのですが、前述の通り、「パワーリザーブ」には2つの意味があります。ここでは、それらをひとつずつ説明していきます。

 

 

 

①最大の駆動時間(スペック表記)

パワーリザーブは、「最大の駆動時間」という意味で使われます。つまり、“スペック表記”としての「パワーリザーブ」です。

 

具体例として、ロレックスの公式ホームページでデイトナの製品仕様を見てみましょう。このホームページにあるデイトナの“仕様”欄には、「直径」「素材」「防水性」などのスペック項目がいくつかありますが、「パワーリザーブ」もスペック項目のひとつとして扱われています。

 

デイトナなら、

 

パワーリザーブ 約72時間

 

と表現されています。

 

この例の場合の意味を捉えてみましょう。前提として、ロレックスはゼンマイで動く機械式時計なので、ゼンマイを巻くと、解けきるまで動き続けます。この理解を前提に説明すると、この場合の「パワーリザーブ 約72時間」は、

 

ゼンマイを最大まで巻き上げて、巻き足しをしない場合、止まるまで約72時間もつ

 

という意味になります。

 

 

 

②「残り駆動時間」を表す計器(機能)

 (パワーリザーブインジケーター)

パワーリザーブは、「残り駆動時間を表す計器」という意味でも使われます。言い換えると、“機能”としての「パワーリザーブ」です。

 

例えば、上の画像は、パネライのルミノール1950の文字盤にある残り駆動時間の表示機構「パワーリザーブインジケーター」を拡大したものです。つまり、このパワーリザーブインジケーターのことを、「パワーリザーブ」と呼ぶことがあるのです。

 

この画像なら、最大で「72時間」の駆動時間があり、針の位置から、「今は残り駆動時間が0に近い」ことを表しています。

 

 

 

 

 

 

■「パワーリザーブ」を知るとトレンドがわかる!

 

ここまでで、「パワーリザーブ」の2つの意味を紹介しました。その2つのうち、前者の“最大の駆動時間”を意味するパワーリザーブは、現在のトレンドを押える上で、知っておきたいワードです。

 

なぜなら、現在の機械式時計は

 

「最大の駆動時間を“3日間”にすることがトレンド」

 

だからです。

 

例えば、先日、ロレックスは新作を発表し、サブマリーナが新モデル(型式124060、126610LNなど)にモデルチェンジしました。このときの変更点のひとつが“ムーブメントの変更”で、最大の駆動時間が「約48時間→約70時間」になりました。70時間というと、ほぼ「3日間」ですので、やはりトレンドに沿ったパワーリザーブに変えたのです。

↑ロレックス「サブマリーナ」

 

このロレックスの新作の動きも、「最近のムーブメントは、最大の駆動時間を“3日間”にするトレンドがある」と知っていれば、理解できる話です。もちろん、ロレックス以外のメーカーの動向を見ても、「3日間」相当の最大駆動時間を持つムーブメントの採用が増えています

 

 

 

<「3日間」相当のムーブメント例>

 

・パネライ/Cal.P.9010

 

・ブライトリング/Cal.01

 

・ウブロ/Cal.HUB1242(ウニコ)

 

・チューダー/Cal.MT5602

 

・オーデマピゲ/Cal.4302

 

・グランドセイコー/Cal.9S65

 

など

 

 

 

また、かつての標準的パワーリザーブを知ると、この「3日間」の意味がわかります。実は以前は、「2日間」相当が、標準的な最大駆動時間でした。しかし、この「2日間」という最大駆動時間は、土曜日、日曜日の2日間放っておくと、月曜日には時計が止まってしまうという問題がありました。

 

そのため、実用性の向上を目指す各メーカーは、ムーブメントを改善して、「+1日間」の駆動時間を与える動きをしています。つまり、「3日間」にすることが、新しいムーブメントのトレンドになっています。「3日間」なら、土曜日、日曜日に放っておいても、月曜日にはまだ動いている理屈になります。そのため、「3日間」であることは、かなり便利なスペックなのです。

 

また、時計の動きを「“金曜日の夜”から“月曜日の朝”までもたせる」という発想で、最大駆動時間の設定を、「2.5日間」にするメーカーもあります。例えば、オメガのCal.8500/8900やIWCのCal.82200は、60時間パワーリザーブですので、この例に当てはまります。

↑オメガ/シーマスターアクアテラ(Cal.8900)

 

このように、パワーリザーブの意味を理解すると、時計業界のトレンドもわかってくるのです。

 

 

 

 

 

 

■最後に

 

今回は、「パワーリザーブとは何なのか」について説明してきました。

 

簡単にまとめるなら、

 

「“スペック”としてのパワーリザーブ」

 

「“機能”としてのパワーリザーブ」

 

があるということです。

 

もし、皆さんが「パワーリザーブ」という用語を見ることがあれば、どちらかの意味ですので、文脈に合うように捕らえてください。

 

 

 

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