30.10.2015
まさかロレックスが! 苦悩のタイガー・ウッズに手を差し伸べたロレックスの思いとは?
Komehyo
ブログ担当者:南
今から4年前の2011年に、時計業界を驚かせたニュースがありました。それは、スキャンダルなどもありスポンサー離れの危機にあった状況のタイガー・ウッズと、ロレックスがスポンサー契約を結んだというニュースです。長らくパートナーだったタグホイヤーが契約解除した直後のことで、驚いたのを覚えています。
少し唐突でしたので補足します。時計メーカーはしばしば有名人をブランドの広告塔をして採用します。彼らのことを「アンバサダー(大使)」と呼びます。時には俳優であったり、ミュージシャンであったり、スポーツ選手であったりと、様々な方面で活躍する方々をアンバサダーとして採用をします。その時計業界のアンバサダーのビッグネームとして君臨しているのがゴルフ界の大スターであるタイガー・ウッズです。
今週は、タイガー・ウッズと時計メーカーの関わりを踏まえながら、ロレックスが彼とスポンサー契約に至った理由を推測したいと思います。
↑タイガー・ウッズと時計メーカーの関わりとは?
※追記(2018/09/19)
執筆時点でチュードルは日本で正規輸入がないブランドでしたが、2018年の10/31より正規輸入を行うことが発表されました。日本での正式な読み方は「チューダー」と決まりました。
■タイガー・ウッズとチュードル
タイガー・ウッズは1975年生まれの、言わずと知れた世界的な超一流プロゴルファーです。タイガー・ウッズは1996年にプロゴルファーとなり若干21歳で史上最年少賞金王となりました。タイガー・ウッズが「世界一」を突き進む中、1998年に時計メーカー「チュードル」が名乗りをあげ公式スポンサーとなりました。
チュードルには「クロノタイム」というペットネームで長く愛されるモデルがあります。1998年に公式スポンサーとなったチュードルはその年、「クロノタイム」とタイガー・ウッズとのコラボレーション時計を発表しました。通称「クロノタイム タイガー」は文字盤の12時位置にある分積算計インダイアルの下部に「TIGER」と印字された時計でした。このモデルはそれまで「クロノタイム」にはなかったカラーリングで発売したことと、タイガー・ウッズの人気との相乗効果で人気を博したモデルでした。
↑クロノタイム タイガー:画像は79280
他にもダイバーモデルのハイドロノートともコラボレーションしました。売り切れ状態が続くなどアンバサダーとしてタイガー・ウッズは大きな役割を果たしました。またタイガー・ウッズはチュードルの知名度を上げただけでなく「ロレックスの廉価ブランド」というイメージも払拭し、チュードルの独自の色を世の中に伝えました。大きな役割をはたした後2002年5月チュードルとのスポンサー契約は終了としました。
■タイガー・ウッズとタグホイヤー
2002年5月のチュードルとの契約終了後、同じ年の10月、活躍目まぐるしいタイガー・ウッズとの熱い契約戦を勝ち取ったのはスイスの老舗時計メーカー「タグホイヤー」でした。「タグホイヤー」といえばF1などモータスポーツと関連する時計を得意としています。つまり、タグホイヤーには「スポーティな時計を作るメーカー」という印象があります。ゆえにタイガー・ウッズの獲得に必死になった理由も理解しやすいと思います。「すでに獲得しているモータースポーツファン以外の獲得」というマーケット拡大戦略が透けて見えます。そのため最大の武器として、高額な契約金を支払いタイガー・ウッズをアンバサダーとして起用したのではないでしょうか。
契約後、大々的な広告にタイガー・ウッズを起用したり、人気モデル「リンク」とのコラボレーションモデルを発売したりしました。2002年に発売されたこのモデルは、タイガー・ウッズのイメージカラーである赤を使用し、彼の持つプロフェッショナルなイメージとタグホイヤーの「革新と伝統」というスローガンを見事に融合したモデルでした。更に、タグホイヤーはタイガー・ウッズとの共同開発にも乗り出します。その結果誕生したのが「ゴルフウォッチ」です。「ゴルフウォッチ」はプロゴルファーとしてのタイガー・ウッズの意見を取り入れ、これまでにない軽量かつ独自のフィット感を実現した時計でした。因みにゴルフウォッチは、現在プロテニスプレイヤー錦織圭選手(現在のアンバサダー)が使用していることでも再び話題となっています。
↑ゴルフウォッチ:WAE1110.FT6004
プロゴルファーとしてもアンバサダーとしても活躍していましたが、2009年タイガー・ウッズというスーパースターのスキャンダルがメディアによって大々的に報じられました。その後休養に入り大会への欠場もつづきました。報じられたスキャンダルによるイメージダウンやゴルフの成績不振もあり、タグホイヤーは2011年に10年近く続いたスポンサー契約を打ち切りました。アンバサダーはブランドの広告塔だけに、その人物のイメージがブランドに与える影響を懸念した決断だったのだと思います。
■タイガー・ウッズとロレックス
2011年時点では、スキャンダル報道、ゴルフの成績不振、スポンサー契約打ち切りなど、世間はタイガー・ウッズが凋落していく状況にあると認識していました。しかし、捨てる神あれば拾う神あり。そのような凋落を歩むタイガー・ウッズに手を差し伸べる時計メーカーが現れます。なんと世界一有名な時計メーカー「ロレックス」でした。この時に「ロレックスは、タイガー・ウッズの未来への挑戦を支援し、 ともに歩んでいきます」というコメントを出しています。
以前のブログ(時計業界人なら知っている、ロレックスのメディア戦略の凄さ)でも紹介しましたが、ロレックスは広告戦略の上手いメーカーです。そのメーカーが転落を歩むタイガー・ウッズを広告塔に起用したのです。詳細は明らかになっていませんが、タイガー・ウッズとの契約は最盛期に比べれば破格の契約金ではあったかもしれません。
「なぜロレックスが苦悩しているであろう状況のタイガー・ウッズと契約したのか?」と皆さんも疑問に感じたことでしょう。その答えは秘密主義のロレックスが明らかにするはずもありませんが、私なりに推測してみます。噂としては、「ロレックスが契約した大きな理由はゴルフがどんどん普及しているアジアでの市場拡大が目的」と言われています。しかし、未来を見据えたら他のゴルファーとの契約もできたはずです。敢えてタイガー・ウッズを選んだ理由の一つに「かつてタイガー・ウッズがチュードルを選んでくれた」という思いもあるのかもしれません。チュードルはロレックスの弟ブランドであり、チュードル発展に一役買ってくれた恩があるはずです。商業的な理由だけの契約であれば、現在ロレックスがタイガー・ウッズをあまり広告塔に利用していない状況の説明がつきません。
本音は分かりませんが、ロレックスは今年で40歳になるタイガー・ウッズがかつてとは違う武器で再びゴルフ界のトップに戻ってくることを期待して待っているのではないでしょうか?「恩返し、兼、青田買い」なのかもしれません。私も、そのロレックスとタイガー・ウッズの抱く夢に期待しています。
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