23.10.2015
【時計の名作を知る】時計好きが選ぶ時計! IWCの筆記体ロゴ「ポートフィノ」
Komehyo
ブログ担当者:永井
時計が好きな方に愛されているメーカーといえばIWCではないでしょうか。まさに「質実剛健」という言葉が似合うメーカーです。
IWCは、高級時計メーカーでありながら、「実用性」という点を最大のゴールに見据えた時計作りをしています。そして、その技術を誇示しないスタンスに、私は職人気質を感じます。例えば、IWCとジャガールクルトは自社内でスイスクロノメーター検定(※1)より厳しい検査を行っています。ただ、その検査を「マスターコントロール」と大々的に謳っているジャガールクルトと比べ、IWCはあまり声を大にして主張している様子はありません。
「高い実用性が時計に備わっていることは、当たり前のこと」として、大きく主張しない姿勢は、IWCの美徳です。
時計好きに愛されるメーカーであることも頷けます。
IWCのランナップには「ポルトギーゼ」「パイロットウォッチマークシリーズ」「アクアタイマー」「インヂュニア」「ポートフィノ」「ダヴィンチ」などがあり、どれも甲乙つけ難いほどの完成度を誇っています。ただし、銘品が多いIWCの時計ですが、特に昔からの愛好家の方が好んで選ぶモデルがあります。
それは「筆記体ロゴのポートフィノ」です。
↑筆記体ロゴのポートフィノ
IWCについて明るくない方にとっては、「筆記体?」と疑問に思われるかもしれません。IWCの時計には、文字盤にメーカー名のロゴを印字します。実は、このロゴの書体が、かつては筆記体でした。これが大事な点になります。
では以降で、奥深さを持つポートフィノの変遷も押さえながら、「筆記体のロゴのポートフィノ」について紹介しましょう。
■愛好家が好む筆記体ロゴとは?
昔のIWCの時計のことを「オールドインター」と言う方もいます。IWCは昔のムーブメントであっても修理をしてくれるので、 アンティーク市場でも人気があります。その人気の「オールドインター」には、筆記体ロゴを持った時計が多いのです。そのため、筆記体ロゴは昔ながらのIWCのロゴという印象があります。
しかし2000年代に入ると、IWCは筆記体ロゴを廃止しました。筆記体ロゴを廃止した後は、「IWC SCHAFFHAUSEN」と書かれた力強い明朝体ロゴになりました。賛否は分かれますが、愛好家の方は好んで筆記体ロゴの時代の作品を手元に置きたいと考えているようです。下で筆記体ロゴと現在のロゴを写真で紹介しておきます。
↑かつての「筆記体ロゴ」と
現在の「筆記体のないロゴ」
↑オールドインターは
筆記体ロゴのものが多い
では、「筆記体ロゴを持っており、アンティークではないモデル」を挙げると、どのモデルが思い浮かぶでしょうか?私が真っ先に思い浮かぶ時計は1990年代に発表された「IW3513」という型式を持つポートフィノです。
ポートフィノは既に登場から30年以上経つロングセラーラインですので、途中で筆記体ロゴから現在のロゴに変わっています。私は現在のロゴに変わる前のポートフィノ「IW3513」を、1990年代を代表する銘品のひとつとして考えています。
※当ブログでは、1990年代の名作を「ネクストヴィンテージウォッチ(※2)」として表現しています。IW3513も、ネクストヴィンテージウォッチを代表するモデルと認識しています。
ではポートフィノとはどのような時計なのでしょうか?後項で紹介していきます。
↑筆記体ロゴとして真っ先に思い浮かぶ
ポートフィノ「IW3513」
■ポートフィノは1984年に発表されたロングセラーモデル
ポートフィノの歴史は1984年に始まります。モデル名はイタリアの高級リゾート地「ポルトフィーノ(ポートフィノ)」に由来しています。
優雅なネーミングではありますが、IWCとしては高級機械式時計冬の時代に何とか産み出した渾身の一手でした。1990年代には無駄のない洗練されたシンプルウォッチとして世に広まり、現在は多彩なバリエーションを揃えIWCの主軸モデルの一つとして発展しています。
初期の作品は懐中時計のムーブメントを腕時計に押し込んだ大ぶりなものでしたが、後継モデルからはサイズダウンして“腕時計サイズ”になります。サイズダウンしてからは次第にポートフィノの流通量が増え始めてきたと言われております。その時期はポートフィノの黎明期にあたり、文字盤のインデックスのラインナップが豊富でバー・アラビア数字・ローマ数字など様々な種類が存在しております。下でポートフィノの変遷に触れながら紹介いたします。
↑黎明期のポートフィノは種類が豊富
※画像はIW3513のバリエーション
<ポートフィノの変遷>
※実際はクォーツ式、クロノグラフ機能付き、自社ムーブメントなどラインナップに幅がありますが、ここでは自動巻式3針を中心に紹介いたします。
①1990年代 「IW3513」
・ケースサイズ34mm
・筆記体ロゴ表記
こちらは黎明期のポートフィノの筆頭格です。この筆記体ロゴモデルを探している方も多いのではないでしょうか?このモデルにはオールドインターかのような雰囲気にしてくれる筆記体ロゴだけでなく、34mmという小ぶりなサイズ感があります。レトロスタイルのポートフィノとして愛好家に評価が高いモデルです。
②2003年 「IW3533」
・ケースサイズが4mmアップ
・筆記体ロゴ表記が廃止される
ここでIWCファンの間でも大きな変化と感じたであろう変更点がありました。前述の「筆記体ロゴ」の廃止という点です。ご存じの方が多いと思いますがIWCの正式会社名は「インターナショナル・ウォッチ・カンパニー」です。IW3513の年代まではこのメーカー正式名をフルスペリングの筆記体で表記していました。しかし、2003年のマイナーチェンジからそれが省かれました。サイズは38mmです。
③2007年頃 「IW3563」
・ケースサイズが1mmアップ
・針がバー状からリーフハンド状に変更
このリーフハンド針も人気があると言われています。現行タイプでもこの形状の針が採用されており、シンプルさだけでなく高級感も付加することにも注力をしています。サイズは39mmです。
④2011年~ 「IW3565」
・ケースサイズが1mmアップ
・12時と6時インデックスがローマ数字に変更
最新のポートフィノはサイズが40mmになり、モダンなサイズ感になっています。ローマ数字のインデックスも視覚的なアクセントになります。現在の時計としては理想的なバランスを持っています。
このように現在に至るまで多くのマイナーチェンジを繰り返してきました。私が感じる限り、「筆記体ロゴの廃止」は大きな変化でした。時計が醸し出す雰囲気がまったく変わります。
「最新のデザインが表現するモダンポートフィノ」
or
「筆記体ロゴがオールド感を表現するレトロポートフィノ」
皆さんは、どちらをより評価するでしょうか?ただし、どちらを選ばれるにしても、ポートフィノはシンプルさがストロングポイントの時計である事は変わりありません。
私の印象ですが、きっと、愛好家の方は「筆記体ロゴ」ポートフィノに軍配上げることでしょう。それは、愛好家の方々が時計に求めるものが「過去とのつながり」だからです。つまり、知識のある愛好家は過去の時計師や時計デザイナーへ敬意を持っており、彼らの過去の「仕事」を感じたいと考えています。筆記体ロゴもその「過去とのつながり」のひとつの要素になります。このことを考えると、筆記体ロゴのポートフィノ「IW3513」が中古市場で売買され続ける限りは、IWCのベストセラーの一つとして君臨し続けていくのではないでしょうか?皆様も良き時代のシンプルウォッチに一度着目してみてください。
※1・・・スイス公式クロノメーター検査協会(COSC)が行う精度検査のこと。15昼夜に及び機械式時計の精度を計測し、日差-4秒~+6秒以内に誤差が収まっているかをチェックする検査。合格したムーブメントを搭載するモデルには歩度証明書が与えられる。時計業界では第三者が行う検査としては最もメジャーな検定である。
※2・・・「ネクストヴィンテージ」とは90年代前後に生産されたものを中心とした廃盤品の中から「銘品」といわれるものをピックアップし、事実と主観を交えながら綴るシリーズブログのことです。今回のブログもこのシリーズの一環として執筆しているつもりです。
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