28.12.2019
【腕時計の名作を知る!】ゼニス「レインボーフライバック」 ~フランス空軍とともに作ったパイロットウォッチ~
Komehyo
ブログ担当者:須川
■【腕時計の名作を知る!】ゼニス「レインボーフライバック」 ~フランス空軍とともに作ったパイロットウォッチ~
当ブログでは、1990年代ごろの名作を振り返る、「ネクストヴィンテージ」というシリーズ企画があります。1990年代ごろと言えば、機械式時計の人気が盛り返す時代であり、とても面白い作品がたくさん生まれました。そんな時代の作品にスポットを当てます。
今回は、ゼニス(Zenith)の「レインボーフライバック」を紹介します。
まずは、下の画像をご覧ください。
この時計が、レインボーフライバックです。
一見しただけでも、かなりインパクトのある外観で、デザインの面白みはレインボーフライバックの大きな魅力でしょう。しかも、魅力は外観だけではありません。ムーブメントにはエルプリメロが使われており、さらにフライバック機能も搭載しています。
以降で掘り下げて説明いたします。
■「レインボーフライバック」とは?
まずは、レインボーフライバックとはどのようなモデルかを説明します。
1990年代のゼニスには「レインボー」というシリーズがありました。
↑レインボー
レインボーフライバックは、その名の通りですが、レインボーに“フライバック機能”を搭載したモデルです。1997年のバーゼルフェアで、発表されました。発表するやいなや、業界内で大きな注目を集め、多くの時計雑誌でも賞賛をもって紹介されました。
↑上:マルチカラー、下:ブラックカラー
業界内で賞賛された理由はいくつかあります。まずそのひとつは、ゼニスが「新たなデザインに挑戦したから」でしょう。それまでのゼニスは、革ベルトモデル中心で、“渋い”デザインのものが多かったように感じます。
しかし、レインボーシリーズでスポーティなデザインを打ち出し、さらに、レインボーフライバックでは個性的なカラーリングにも挑戦しました。そのイメージを打ち破る心意気は、賞賛に値します。
ただし、個性的なカラーリングである、赤・青・緑・黄・白の指し色を採用した“マルチカラー”以外に、シックな“ブラックカラー”も用意した点を見ると、手堅さも感じます。
↑裏蓋には「FLY-BACK」の文字がある
また、賞賛された別の理由として、「フライバック機能を追加した“エルプリメロ”が誕生したから」という点もあります。ご存じない方のために補足しますが、エルプリメロは、ゼニスが誇る「自社製の自動巻クロノグラフムーブメント」の名称です。詳しくは、過去の投稿をご覧ください。
→「ゼニス」の時計には2つの魅力がある!! ~其の一、名機“エルプリメロ”~
つまりゼニスは、この傑作と言われるエルプリメロに、“付加機能”を加えたのです。その機能は「フライバック機能」です。これは、クロノグラフの連続操作を容易にする機能で、具体的には、クロノグラフのストップ操作と次のスタート操作を省略できる機能です。「連続の時間計測をスムーズにできる機能」と言い換えても良いでしょう。下で簡単に説明します。
通常のクロノグラフは、
①スタート
②ストップ
③リセット
の3ステップで一連の計測を行います。そのため、連続計測する場合は、
「①②③→①②③→①②③・・・」
という手順になります。
しかし、フライバック機能のクロノグラフは、
①スタート
(②ストップ)
③リセット
※②のストップは連続計測の場合は省略できる
※②を省いて③を押した場合は、①を押さなくても次の計測がスタートする
という操作ができます。通常は「①②③」の3ステップですが、連続計測の際は、“②”と”次の①”を省いた省略操作が可能なのです。
つまり、連続計測なら、
「①→③→③・・・」
という手順で操作できます。最後に、クロノグラフを終わらせる時だけ、②のボタンを経由してから③を押せば良いのです。
このフライバック機能付きのエルプリメロは「Cal.405」というキャリバー名が与えられ、レインボーフライバックに初搭載されました。しかも、ゼニスはなんと、約半年ほどでこのムーブメントを開発したそうです。このモデルが話題となったことも頷けるところです。
■なぜフライバック機能が搭載された?
では次に、「なぜフライバック機能が搭載されたのか」を解説します。
これは、レインボーフライバックが、フランス空軍の協力のもと作られたからです。つまり、“パイロットに使いやすい設計”になっているからなのです。
その“パイロットに使いやすい設計”の最たるものが、Cal.405のフライバック機能です。
↑Cal.405B
※画像はストラトスフライバックのもの
例えば、パイロットが
「離陸から60秒後に・・・、その後30秒後に・・・、さらにその後30秒後に・・・」
と言われたとしましょう。
この時間をクロノグラフで計測する場合を考えてみてください。先程のボタン操作「①スタート」「②ストップ」「③リセット」を使って考えると、
通常は、
①②③(60秒計測)
↓
①②③(30秒計測)
↓
①(30秒計測)
という手順になります。
一方、レインボーフライバックであれば、
①(60秒計測)
↓
③(30秒計測)
↓
③(30秒計測)
というボタン操作が可能です。
パイロット目線で考えると、「最初に2時位置のボタンでスタートすれば、後は、4時位置のボタン操作だけでOK」というニュアンスで操作できます。かなりボタン操作が楽に感じるでしょう。
フランス空軍が、ゼニスにフライバック機能の搭載を提案することは、そのメリットを考えると、かなり分かりやすいものです。
また、レインボーフライバックには、ガラスに両面無反射コーティングが施されており、日光の反射を抑えてくれます。視認性への配慮も十分でしょう。さらに、エルプリメロは36000振動/時という高振動ムーブメントですので、激しい動きでも精度への影響は少ないはずです。
総合的に見ても、レインボーフライバックはパイロットウォッチに相応しい時計であると考えられます。
■最後に
今回は、1990年代の名作として、ゼニスの「レインボーフライバック」を取り上げました。フランス空軍の協力のもの作られた時計だけあって、パイロットウォッチとして魅力のある時計です。
しかし残念ながら、時代の流れもあり、レインボーフライバックは生産終了になります。
ただ、ゼニスはレインボーフライバックが名作であることを自覚しているのでしょう。それがよく分かる事実として、レインボーフライバックには“復刻モデル”があります。
例えば、2010年には「デファイ クラシック レインボー フライバック」が登場し、2014年には「ストラトス フライバック レインボー」が登場しました。
↑デファイクラシック・レインボーフライバック
↑ストラトス・フライバック・レインボー
これらは、「デファイ」コレクションと「ストラトス」コレクションに、レインボーフライバックの要素を加えたものです。画像を見ていただいても、大きくレインボーフライバックの要素を引き継いでいるのが分かります。
これを見ても、ゼニスはレインボーフライバックを高く評価しています。これはまさに、名作と認めても良いでしょう!
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