22.12.2019
【腕時計の基本知識】アニュアルカレンダー(年次カレンダー)とは何なのか?
Komehyo
ブログ担当者:須川
■【腕時計の基本知識】アニュアルカレンダー(年次カレンダー)とは何なのか?
今回は、高級時計の用語「アニュアルカレンダー」または「年次カレンダー」について解説します。
少し紛らわしい表現をしましたが、「アニュアルカレンダー」の別名が「年次カレンダー」ですので、これらは同じものです。要するに、英語名が「アニュアルカレンダー」で、和名が「年次カレンダー」です。おそらく、この投稿をご覧の皆さんは日本語で表現された方がピンとくると思いますので、以降では「年次カレンダー」で表現させていただきます。
簡単に説明すると、年次カレンダーは
「“30日までの月(小の月)”と“31日までの月(大の月)”を判断できる日付機能」
です。
以降で、詳しく説明します。
■年次カレンダーとは?
では、「年次カレンダー」について説明します。
年次カレンダーは、冒頭でも触れましたが、
「“30日までの月(小の月)”と“31日までの月(大の月)”を判断できる日付機能」
です。
ここで補足説明があります。それは、「通常の日付機能は、毎月、必ず31日まで表示してしまう」ことです。
そのため通常の日付機能は、“大の月”と呼ばれる「31まで日数がある月」にはずれることがありませんが、“小の月”と呼ばれる「31日まで日数がない月(2月/4月/6月/9月/11月)」にずれてしまうのです。
これに対し、年次カレンダーは“30日までの月”と“31日までの月”の違いを判断します。そして、“30日までの月”の月末には「31日」を飛ばす動きをします。通常は、小の月が明けた月初に日付のずれを修正する必要がありますので、年次カレンダーはその手間を無くすというメリットがあります。
↑年次カレンダーは小の月と大の月を判断する
※パテックフィリップ「5960P」
しかし、年次カレンダーも完璧ではありません。日数が「28日までの月」(うるう年は29日まで)である“特殊な小の月”の「2月」に対応できないのです。そのため、年次カレンダーは、よく「年に一度(3月初め)のみ日付調整が必要な日付表示」と説明されることも多いのです。
まとめると、年次カレンダーの日付対応は、
①31日までの月=OK
※5月、7月、8月、10月、12月、1月、3月
②30日までの月=OK
※4月、6月、9月、11月
③29日までの月=NG
※うるう年の2月
④28日までの月=NG
※通常の2月
という日付機構なのです。
同じように、通常の時計の日付対応を表すと、
①31日までの月=OK
※5月、7月、8月、10月、12月、1月、3月
②30日までの月=NG
※4月、6月、9月、11月
③29日までの月=NG
※うるう年の2月
④28日までの月=NG
※通常の2月
となります。
因みに、永久カレンダー(パーペチュアルカレンダー)の日付対応は、
①31日までの月=OK
※5月、7月、8月、10月、12月、1月、3月
②30日までの月=OK
※4月、6月、9月、11月
③29日までの月=OK
※うるう年の2月
④28日までの月=OK
※通常の2月
となっており、年次カレンダーより上位機能であることがよく分かります。
■年次カレンダー搭載のモデル紹介
ここでは、年次カレンダー搭載モデルを紹介します。
①パテックフィリップ
「コンプリケーション・年次カレンダー」
パテックフィリップは、年次カレンダーの元祖です。その機能を広めた「コンプリケーション・年次カレンダー」はまさに金字塔と言えるでしょう。この1996年に誕生した年次カレンダーは、永久カレンダーよりも簡素な設計になっており、その設計の妙は時計業界に大きな影響を与えました。
下の画像を見ていただくと分かりますが、月日表示に加え、曜日表示もあるので、かなり実用的な表示です。
↑型式:5035R
②ロレックス
「スカイドゥエラー」
ロレックスの中で唯一、年次カレンダーを搭載しているスカイドゥエラー。文字盤外周の窓で、何月なのか分かります。下の画像なら、11月です(11時の窓が赤いため)。
↑型式:326933
③オメガ
「デ・ヴィル アワービジョン アニュアルカレンダー」
オメガも2008年以降、年次カレンダー搭載モデルを作っています。オメガの場合は、ディスク表示で月日を表示します。
↑型式:431.30.41.22.02.001
④ゼニス
「エルプリメロ ヴィンザー アニュアルカレンダー」
ゼニスも名機“エルプリメロ”に年次カレンダーを追加したモデルを作っています。ディスク表示で、月日と曜日が分かります
↑型式:03.2070.4054/22.C708
⑤IWC
「ポルトギーゼ アニュアルカレンダー」
IWCも、人気モデルのポルトギーゼに年次カレンダーを組み込んだラインナップを持っています。月日と曜日表示があり、一箇所にまとめている点が特徴です。
↑型式:IW503501
ここでは、5つの例を挙げましたが、まだ他にもたくさん採用モデルは存在します。
■最後に
今回は、年次カレンダーについて説明しました。本文では触れませんでしたが、私の頭の中で、「カレンダーに関する機能」は、以下のように整理されています。
<カレンダーに関する機能>
①デイト
→日のみ
②デイデイト
→日・曜日
③トリプルカレンダー
→月・日・曜日
④年次カレンダー
→③+“大小の月”の把握
⑤セミパーペチュアルカレンダー
→④+“通常の2月”の把握
⑥永久カレンダー
→⑤+“うるう年の2月”の把握
⑦セキュラーカレンダー
→⑥+“うるう年の例外の2月”に対応(※1)
上は、「カレンダーに関する機能」を整理したものです。下に行くほど“複雑な日付機能”となり、実用性よりも趣味性が強くなります。
「実用性よりも」と表現した点についてですが、これは、この時計が基本的にぜんまいで動く“機械式時計”の話であることを前提に考えていただくと分かるはずです。つまり、これらの時計は、ぜんまいを巻かないと止まるのです。
止まってしまった機械式時計を動かす際には、もちろん、時間と日付を合わせます。その際に、“複雑な日付機能”は日付合わせの操作が大変なのです。例えば、永久カレンダーなら、月・日・曜日だけでなく、うるう年まで合わせる必要があります。
↑“複雑な日付機能”は日付合わせが大変
一方で、年次カレンダーは、月・日(・曜日)を合わせるだけで良く、永久カレンダーほどの煩雑さはありません。私の印象としても、カレンダーの機能を俯瞰すると、年次カレンダーは“複雑時計と実用時計の中間的な存在”に感じます。
その意味で、年次カレンダーは、
「複雑時計を楽しみたいけど、実用性も欲しい」
という方に、ちょうど良い機能かもしれません。
※1・・・セキュラーカレンダーは、「エターナルカレンダー」とも呼ばれ、“うるう年の例外”に対応しています。その採用は数例ぐらいしかありませんが、有名なものはフランクミュラーの「エテルニタス・メガ4」でしょう。
“うるう年の例外”について補足します。うるう年は4で割り切れる年に設けられ、4年に一度“ある”ものです。ただし例外として、100で割り切れる年は、うるう年が“ない”のです(例外①)。しかも、さらなる例外があり、400で割り切れる年は、例外①が無効にされ、うるう年が“ある”のです(例外②)。
具体的に言うと、2100年、2200年、2300年などは、“100年に一度のうるう年がない年”です(例外①)。しかし、2000年、2400年などは、その“100年に一度のうるう年がない年”が省かれ、うるう年があります(例外②)。
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