11.5.2024
タグホイヤーの面白い選択肢! 「レトロホイヤー」のすすめ ~F1、1000~6000シリーズ、S/el、キリウムなど~
Komehyo
ブログ担当者:須川
※初投稿2019/2/1
※リライト2024/5/11
■「レトロホイヤー」のすすめ
現在、タグホイヤー(TAG HEUER)は、スポーツなどのスポンサー活動を積極的に行っていることもあり、かなり知名度が上がっています。きっと、ここ数年でタグホイヤーを認知するようになった方も多いでしょう。そして、タグホイヤーに関心を持ち、その現在の人気モデルを見た多くの方は、きっと「タグホイヤーかっこいい!」と思うのではないでしょうか。
↑最近のタグホイヤー
確かに、最近のタグホイヤーは、デザイン性の良さと個性が上手く融合しており、「かっこいい」と評価されるのは頷けるところです。しかし、以前からタグホイヤーを知る方は、「ずいぶんデザインの雰囲気が変わった」と感じていると思います。
例えば、下の画像をご覧ください。これは、1990年代以前のタグホイヤーです(※1)。「現在のデザインとは雰囲気が違う」と感じるのではないでしょうか。
↑以前のタグホイヤー
特に、タグホイヤーは、“アバンギャルド(前衛的)であること”を大切にしています。そのため、デザインにいつも「攻めの姿勢」があるのです。
もっと分かりやすい表現にすると、
「タグホイヤーの時計は、個性的であることが基本」
ということです。
その個性の強さもあり、「本来、タグホイヤーの時計は、万人受けではない」のです。しかし、“最近のタグホイヤー”は、多くの方が「かっこいい」と評価する状況になっています。これは、“最近のタグホイヤー”が、本来のアバンギャルドさをやや抑え目にして、ある程度の一般受けも狙っているからでしょう。
そのため、私は、
“以前のタグホイヤー”
→超個性派ウォッチ
“最近のタグホイヤー”
→個性と人気デザインを併せ持つ時計
というイメージを持ちます。
今回私は、前者の超個性派ウォッチである“以前のタグホイヤー”、つまり、1990年代以前のタグホイヤーを「レトロホイヤー」と呼ばせていただきます。そして、皆さんにその魅力を紹介をしたいのです。レトロホイヤーは、最近のタグホイヤーとは違う面白さがあるので、きっと、感性がマッチする一部の方には魅力的に写るはずです。是非、最後まで読んでみてください。
■超個性的デザインをもつ、「レトロホイヤー」を紹介!
ここからは、超個性派ウォッチである1990年代以前のタグホイヤー、「レトロホイヤー」を紹介します。
少し補足ですが、タグホイヤーは1985年からTAGグループに入り、経営が変わります。私の印象としては、1985年以前は「個性のある時計とスタンダードな時計が混在している」印象でしたが、1985年以降は「明らかに個性派ウォッチ路線に傾倒した」印象です。その歴史も踏まえながらそれぞのシリーズをチェックすると、より理解が深まると思います。
①F1(フォーミュラ1)
1986年に登場したシリーズ。樹脂パーツを採用したりと、コストを抑えた作りになっています。当時のメーカー価格で3万円台からラインナップがある点からも、当時の入門モデルということが分かります。TAGグループ以降のデザインですので、個性が強くでています。特に、回転ベゼルが印象的な時計です。
②1000シリーズ
ここから登場する「1000~6000」という数字の名称をもつシリーズは、ダイバーズウォッチを意識して作られたシリーズです。1979年に登場するこちらの「1000」は、王道ダイバーウォッチのテイストをもつシリーズ。TAGグループ加入以前に誕生したモデルで、個性は抑え目です。そのため、こちらは「レトロホイヤーは個性的」という話の例外になります。当時のメーカー価格で5万円台からラインナップがあり、比較的、入門モデル寄りです。
③1500シリーズ
1991年に登場したダイバーズテイストの強いモデル。印象としては1979年誕生の「1000」を進化させた印象のシリーズです。「1000」は文字盤に8個の丸いインデックスを採用しましたが、「1500」はバーインデックスを増やして、丸いインデックスは2つに減らしています。少しクールな印象になりました。こちらも当時のメーカー価格で5万円台からラインナップがありましたので、比較的入門モデルと言えます。
④2000シリーズ
1983年に登場した、かつてのタグホイヤーの代表モデル。TAGグループ加入前の登場ながら、アバンギャルドさをもつダイバーズウォッチです。左右に飛び出したケースデザインは、今でこそよく見かけますが、当時は珍しいものでした(ウブロのクラシックは1980年頭からと考えると、十分に当時は前衛的です)。
その後、「2000クラシック」「2000エクスクルーシブ」に派生した後、最終的には「アクアレーサー」に進化したシリーズです。現在までそのDNAが引き継がれていることからも、「レトロホイヤーの中では成功したモデル」と評価できます。
⑤3000シリーズ
「2000」登場の翌年の1984年に登場した、個性がさらに強い「3000」シリーズ。「2000」をより直線的に力強くしたデザインです。ベゼル外周に半球状のオーナメントが付き、更なるインパクトを加えます。特に強い個性が好みの方には、うってつけのシリーズです。
⑥4000シリーズ
1990年に登場した、ベゼル12時にある“緑と赤のタグホイヤーロゴ”が特徴のシリーズ。きっと、タグホイヤーのロゴが上下2色なので、「回転ベゼルを回すと、ロゴの上下が分離したら面白い」というアイデアありきのシリーズなのでしょう。ベースは「2000」の流れを汲むデザインながら、面白い個性が加わった印象です。
⑦6000シリーズ
1992年に登場した、当時のタグホイヤーの最高級シリーズ。当時のタグホイヤーの入門モデルの多くはクォーツ式でしたが、「6000」シリーズはクォーツモデル以外にも、クロノメーター自動巻タイプがラインナップされます(※2)。また、金素材で作られたモデルも存在する点は、最高峰シリーズならではです。ブレスレットの作りも複雑な作りを取り入れ、コストを掛けた作りであると感じます。
⑧S/el(セル)
1987年に誕生した、タグホイヤーの代表モデル。最大の特徴は、“人間の背骨”から着想したデザインをブレスレットに採用している点です。下にブレスレットが確認できる画像を用意しましたが、独特な個性があります。このシリーズは、F1レーサーのアイルトン・セナ氏が愛用したこともあり、大きな人気を獲得しました。
その後、「リンク」シリーズが後継となり、そのDNAは現在まで受け継がれています。こちらも「2000」と並んで、レトロホイヤーの中では成功したシリーズです。
⑨キリウム
1997年に登場したシリーズ。「2000」以降伝統になりつつある“左右の突起あるデザイン”を採用しながら、流線型デザインに仕上げています。1980年代までの「小型・薄型」トレンドが薄らいできて、「立体感」「人間工学」など、より自由なデザインができるようになったことによって生まれたシリーズです。
一部のモデルには「Ti5」と呼ばれるものがあり、これにはチタン合金である“グレード5チタン”が使われています。このチタンは、純チタンより優れた性質をもつ高級チタンで、外観上もチタンらしからぬ風合いを与えることが可能です。時計業界でのグレード5チタンの採用は、現在こそ珍くありませんが、当時はまだまだ前衛的でした。この点でも、キリウムは実験的要素が強いシリーズでした。
⑩アルターエゴ
1999年に登場した1990年代最後のシリーズ。時計本体とブレスレットを一体デザインにしています。リューズは一般的な3時位置ではなく、4時と5時の間に置かれます。「未来デザイン」という印象を与えるシリーズです。女性用のスポーティな時計として作られており、男性的デザインが多いタグホイヤーにおいては、特異な存在です。
■最後に
今回は、「レトロホイヤー」として、10シリーズを紹介しました。どれも、現在のタグホイヤーとはデザインが違う、個性派揃いの存在です。もちろん、腕時計のコーディネートとしても、違いを見せることができます。
ここで、冒頭で紹介した「最近と以前のタグホイヤーの違い」を思い出しましょう。それは、下のような点でした。
“以前のタグホイヤー”(レトロホイヤー)
→超個性派ウォッチ
“最近のタグホイヤー”
→個性と人気デザインを併せ持つ時計
“最近のタグホイヤー”は、デザインがより洗練されています。それは、「トレンドに合うサイズ感」「高い加工精度」「適切なデザインバランス」がもたらしています。具体的にイメージするために、下の画像をご覧ください。
これは、「2000シリーズ」(上画像)と、その進化した現在の姿である「アクアレーサー」(下画像)の比較です。アクアレーサーの方が、平面部と角部がシャープに処理されており、より立体感と高級感を感じます。そして、文字盤の発色も向上し、見返しの距離、針やインデックスの大きさも改善されています。
私には、「タグホイヤーが、多くの人が魅力に感じるように、腕時計デザインのトレンドを押さえにいった」と感じます。もちろん、確実に、“高級時計”としてのレベルは上がっています。
しかし、“最近のタグホイヤー”が持たない、“以前のタグホイヤー”だけの良さもあります。それは、何と言っても「レトロ感」です。
例えば、“最近のCGを駆使した映画”と“昔のモノクロ映画”を比較した時に、「最近の映画の方が上」と言えるでしょうか。もちろん、「画像の美しさ」、「表現の自由さ」など、最近の映画には分があります。しかし、なぜか昔のモノクロ映画からは、「懐かしさ」や「暖かさ」を感じます。きっとそれは、モノクロ映画が「レトロ」だからです。
1990年代以前の「レトロホイヤー」は、サイズが現在のものよりも小ぶりで、現在のスタンダードとは離れています。そして、作りにもまだまだ“荒さ”があります。きっと、デザイン的にも「昔の腕時計」感を出すでしょう。しかし、それがかえって、“レトロな魅力”を出すのです。
↑レトロな魅力
当時のタグホイヤーは、決して「万人受けデザイン」ではありません。そして、レトロウォッチもまた、万人受けではないでしょう。しかし、一部の方には、その魅力が分かるはずです。そして、万人受けではないが故に、市場価格は高騰することなく、購入しやすい価格で存在します。その“こなれた価格”も、魅力のひとつかもしれません。相場に隙がない現在の時計業界において、きっと楽しく選ぶことができるでしょう。
さらに、レトロホイヤーは登場から時間が経っているため、状態もピンからキリまで個体差があります。しかし、きっとその状態さえも、味となり、“レトロ感”を与えてくれるでしょう。
皆さんの中に、今回のレトロホイヤーに魅力を感じる方がいらっしゃるでしょうか。もし琴線に触れるようであれば、是非、“宝探し”の感覚で、レトロホイヤーを探してみてください!
※追記(2024/5/11)
最近のタグホイヤーは、以前にも増して「レトロ」時代のニュアンスをデザインに取り入れています。例えば、フォーミュラ1のカラーリングに赤、青、緑、黄色などのポップな色を採用して、1970~80年代ごろにあったような雰囲気を再現しています。さらに、1960~80年代モデルをオマージュする「カレラスキッパー」を発売するなど、レトロ時代の再現が増えています。
↑フォーミュラ1の赤色
↑カレラスキッパー
※1・・・1990年代は、現在の時計人気に繋がる復興期です。その時代は、時計業界で創作活動が盛んで、名作も多く存在します。そして、その足がかりになる前時代の1980年代も同じような状況です。当社ではその1980年代から1990年代の作品を、「ネクストヴィンテージ」と表現して打ち出しをしています。
※2・・・クロノメーターとは、外部の公的機関による時計の“精度”検査です。スイスの時計であれば、スイス公式クロノメーター検査協会(COSC)という機関が行います。
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