18.1.2019
ロレックス|「ミルガウス」とはどんなモデル? ~ミルガウスの本当の良さは“耐磁性”ではない!~
Komehyo
ブログ担当者:須川
ロレックス(ROLEX)のラインナップには、磁気に強い時計「ミルガウス」があります。
↑ミルガウス/116400GV
時計業界では、「磁気に強い」時計のことを“耐磁時計”と呼びます。ミルガウスは、IWCの「インヂュニア」と並んで、時計業界を代表する耐磁時計として知られています。そのため、「ミルガウスとはどんな時計?」という質問があるとすると、一般的には「磁気に強い時計」という回答がされるでしょう。
しかし、私はその回答に対して「ちょっと違う」と感じるのです。なぜなら、ミルガウスを購入する方を見ていると、「磁気に強い時計を探していたので、ミルガウスを選びました」という方はあまりいないからです。つまり、多くの方がミルガウスを購入する理由は、「耐磁時計だから」というものではありません。それとは別の理由で、ミルガウスを選んでいるのです。
つまり、「ミルガウスはどんな時計?」という質問に対する核心的な回答は、別の回答であるはずなのです。
↑ミルガウスの良さは“耐磁性”ではない!?
では、多くの方がミルガウスに求めている点は何なのでしょうか?
私の意見としては、多くの方がミルガウスに求めていることは、
「“変り種ロレックス”であること」
です。
以降で、詳しく説明させていただきます。
■ミルガウスの基本情報
まず、本題に入る前に、ミルガウスの基本情報をおさえておきましょう。
ミルガウスは、1956年に、強い磁気にさらされる医師や科学者に向けた“耐磁時計”として開発されました。「ミル」はフランス語で「1000」を表し、「ガウス」は磁束密度の単位です。つまり、ミルガウスは「1000ガウス」という意味なのです。磁界の強さがわかりやすい「A/m」単位に変換すると「79,580A/m」ですので、ミルガウスは約8万A/mに耐えることのできる耐磁時計というコンセプトで作られたことになります。
特殊な時計だったこともあり、ミルガウスは1988年ごろに生産終了となります。その後しばらく「ヴィンテージ時代のレアウォッチ」として知られたミルガウスですが、なんと、2007年に再び登場することになります。それが、型式「116400」です。
↑2007年に登場した「116400」
本体ケースには、インナーケースで磁気を受け流す“耐磁ケース”を採用します。そしてムーブメントは、磁気に強いパラクロムヒゲゼンマイを採用した“耐磁ムーブメントCal.3131”を搭載します。
ケースサイズは多くのスポーツモデルと同じ40mmサイズとやや大ぶりですが、プレーンなスムースベゼルとオイスターブレスを採用し、すっきりとした印象もあります。しかし、文字盤には強烈な個性があります。ヴィンテージミルガウスに採用されたことのある“イナズマ針”を採用し、鮮やかなオレンジ色を挿し色に使います。さらに、「116400GV」という型式の種類には、緑に着色された“グリーンガラス”を採用し、他のロレックスには無い個性を与えています。
↑イナズマ針とグリーンガラス
■ミルガウスは“変り種”であることを目指す!
ここからが本題です。冒頭でも書きましたが、ミルガウスはロレックスにおいて「“変り種ロレックス”である」ことを目指しているように感じます。先の基本情報でも紹介した“個性的な文字盤デザイン”からも、それを感じるはずです。下に、一般モデルである「デイトジャスト」との比較画像を用意しましたので、その個性の違いを確認してみてください。
上の比較画像を見ていただくと一目瞭然だと思います。ミルガウスは、俯瞰した時にはデイトジャストと同じような標準的なシルエットをしていますが、文字盤の個性は圧倒的です。腕に乗せた際には、手首の上でかなりの“イロモノ感”を出すのです。車が好きな方に向けて例えると、2013年にTOYOTAが発表したピンクのクラウン「ReBORN PINK」のような、独特の存在感を発する時計なのです。
この“変り種ロレックス”としての個性こそが、ミルガウスの最大の魅力です。
つまり私は、ミルガウスの魅力を、「耐磁時計であること」ではなく「変り種であること」と考えているのです。その証拠もあります。それは、ミルガウスの人気モデル、そして、ミルガウスのラインナップの変遷を見れば明らかです。
<ミルガウスの人気モデル>
通常ガラス < グリーンガラス
→グリーンガラスの方が人気がある
<ミルガウスのラインナップ変遷>
①2007年
・116400(通常ガラス)の黒文字盤
・116400(通常ガラス)の白文字盤
・116400GV(グリーンガラス)の黒文字盤
→3種類の展開
②2014年
・116400GV(グリーンガラス)の青文字盤(Zブルー)登場
→4種類の展開
③現在(2019年)
・116400GV(グリーンガラス)の黒文字盤
・116400GV(グリーンガラス)の青文字盤(Zブルー)
→通常ガラスは既に生産終了となっており、グリーンガラスのみの展開
上でまとめた「ミルガウスの人気モデル」と「ミルガウスのラインナップの変遷」と分析すると、
「“グリーンガラス”の方が人気があるので、“グリーンガラス”の種類を増やして、“通常ガラス”を生産終了にした」
と、状況を読み取ることができます。
つまりミルガウスは、市場に投入した結果、個性の強いタイプ(グリーンガラス)の方が需要が高かったのです。そのためロレックスは、さらに個性の強いミルガウス(青文字盤)を追加で投入したのです。現在では、個性の強いグリーンガラスのみがラインナップに残っており、より“個性的”路線に傾倒しています。
そのため私は、「ミルガウスは“変り種ロレックス”を目指している」と感じるのです。
■最後に
ここで、冒頭の質問を思い出しましょう。その質問は、「ミルガウスはどんな時計?」というものでした。この回答の手段は、きっと2通りあります。ひとつは、“メーカーが打ち出す特徴”からの回答です。そしてもうひとつは、“消費者が受け取る特徴”からの回答です。
例えば、ネスレから発売されているチョコレート菓子の「キットカット」は、もちろんメーカーの意図としては「お菓子」として売り出されました。しかし一部の消費者は、その「きっと勝つ」というフレーズに近いことから、「合格祈願グッズ」として購入するようになりました。その後、ネスレは合格祈願グッズとしての打ち出しを強くして、売り出すようになりました。私は、この例がミルガウスの場合と近い気がします。
ミルガウスの場合は、
“メーカーが打ち出す特徴”
→「磁気に強い時計」
・“消費者が受け取る特徴”
→「変り種ロレックス」
なのです。
どちらの回答も正解なのでしょうが、「どのロレックスを買おうかな?」と迷っている方に対する回答なら、後者の「変り種ロレックス」という方が良いでしょう。なぜなら、どのロレックスにしようか迷っている方に「磁気に強い時計ですよ」と言っても、多くの方はその要素に対する需要が強くないので、きっとピンとこないからです。むしろ、「みんなが持っているロレックスとは違う、変り種のロレックスなんですよ」と回答してあげる方が、反応できる方は多いはずです。
その“変り種ロレックス”という説明に反応できる人というのが、「個性的なロレックスが欲しい層」でしょう。
↑派手なオレンジ針が動く快感
もし、皆さんの中で「個性的なロレックスが欲しい」とお考えの方は、ミルガウスを選択肢に入れてはどうでしょうか。きっと、派手なオレンジ色の針が動き続けることに快感を覚え、そして、他のロレックスにない緑色のガラスに満足し、最高の選択になるでしょう!
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