25.1.2019
【時計業界を知る】なぜ人気? オーデマピゲ「ロイヤルオーク」の人気の理由
Komehyo
ブログ担当者:篠田
オーデマピゲ(Audemars Piguet)の「ロイヤルオーク」は、“スポーティ高級時計”において、頂点に君臨するモデルのひとつとして知られています。
↑ロイヤルオーク
ロイヤルオークの人気はとても高く、日本だけでなく、世界中で多くの愛用者がいます。私も、テレビで著名人が愛用しているのをよく見かけます。その人気はかなり高まりを見せており、中古取引相場もずいぶん高くなってきています。
例えば、かつての定番ロイヤルオーク「14790ST」は、10年ぐらい前は中古品のプライスが50万円前後でした。しかし現在は、100万円を越えるような状況になっています。特に、ここ5年ぐらいは相場の上昇が顕著で、ロイヤルオークの人気の加熱ぶりは目を見張るものがあります。
↑かつての定番「14790ST」
では、ロイヤルオークの人気が高まっている理由は何でしょうか?
ロイヤルオークの人気が高まる理由を、「“ロイヤルオークが本来持つ魅力”を世間が認知するようになった」と説明することも可能かもしれません。確かに、それも一理あります。1990年代以降、ロレックスの人気の加速を受けて、高級機械式時計は“富裕層のための嗜好品”から“自分の個性を主張するセルフブランティングアイテム”となりました。高級時計が世間に普及するに従って、ロイヤルオークも存在感を向上させた面はあるでしょう。
しかし、ここ5年ほどの相場の高騰ぶりを見ると、それ以外の理由があるように感じます。そこで今回は、ロイヤルオークの人気の高まりの理由を、私なりの見解で説明させていただきます。
■「オーデマピゲ」と「ロイヤルオーク」について
本題に入る前に、まずは「オーデマピゲ」と「ロイヤルオーク」のことを少し説明しましょう。
オーデマピゲは、スイスに拠点を置く、老舗の時計メーカーです。その歴史は古く、1875年に創業しました。創業者は、ジュール=ルイ・オーデマとエドワール=オーギュスト・ピゲの二人であると言われています。当時からオーデマピゲは、他者に勝る技術力がありました。1921年には世界で最も薄い、厚みわずか約1.3mmの懐中時計を開発し、1957年には永久カレンダーの小型化にも成功しました。その他にも複雑時計や薄型時計で様々な偉業を成し遂げ、腕時計開発の可能性を大きく広げました。
↑複雑時計も得意なオーデマピゲ
オーデマピゲは、現在の実力も過去の歴史も、高く評価されています。そのため、パテックフィリップ、バシュロンコンスタンタンと並んで、「世界三大ブランド」の一つに挙げられる存在になっています。
そして、ロイヤルオークは、1972年に発表された、スポーティなテイストをもつオーデマ・ピゲ作品です。現在では、オーデマピゲの代表作と言っても良いでしょう。有名な時計デザイナーであるジェラルド・ジェンタ氏によってデザインされたことも有名です。
↑最初のロイヤルオーク「5402」
ロイヤルオークは、「スポーツウォッチは無骨で重量感のある見た目」という、当時の常識を打ち破ったモデルでした。つまり、ジェンタ氏によってデザインされたロイヤルオークは、「スポーティな時計なのに、洗練されていて上品」だったです。発表当初は、世間の感覚が付いていけない状況があったそうですが、その後、そのデザインの素晴らしさが評価されるようになります。むしろ現在は、サイズや文字盤デザインを当時のデザインに近づける動きもあり、ジェンタ氏の作ったロイヤルオークの完成度を証明しているかのようです。
■ロイヤルオークの人気が高まった理由は?
ここからが本題です。「ロイヤルオークの人気が高まった理由」を、私見で説明します。
私は、ロイヤルオークの人気の理由は、2つの要因から起こったと考えています。ひとつの要因は、「ロイヤルオークは元々、人気が出る“素質”を持っている」点です。そして、もうひとつの要因が、「パテックフィリップとロレックスの価格高騰」です。これは“外的要因”ということになります。
この2つの要因から、私は以下のようなことが起こったと考えています。
<ロイヤルオーク人気のメカニズム>
①ロイヤルオークは元々、人気が出る“素質”をもっている
↓
②パテックフィリップ・ロレックスの価格高騰という“外的要因”発生
↓
③ロイヤルオークが割安に見えるようになり、人気が上がる
↓
④需要が高まり、ロイヤルオークの価値が上がる
↓
⑤「ロイヤルオークの資産価値の高さ」が新たな要因となり、さらに人気が加速
説明が必要な部分を掻い摘んで、以下で補足します。
補足①:ロイヤルオークは元々、人気が出る“素質”をもっている
ロイヤルオークの持つ“人気が出る素質”について補足します。
私は、
・ブランド力が高いこと
・芸術性が高いこと
・コレクションアイテムにできること
を、ロイヤルオークの“人気が出る素質”と考えています。
まず、ひとつめの“人気が出る素質”は、オーデマピゲ自体の「ブランド力が高いこと」です。
オーデマピゲは「世界三大ブランド」の内の一つです。言い換えると、オーデマピゲは「時計業界のトップブランドのひとつ」なのです。時計に明るい方なら、まずオーデマピゲを知らない方はいないでしょう。これは、歴史的に築いた地位ですので、簡単にまねできるものではありません。
そしてロイヤルオークは、その地位あるオーデマピゲの代表作です。ロイヤルオークを身に付けることは、「世界に認められたブランドの時計を付けている」ということになるのです。
そして、2つめの“人気が出る素質”は、「芸術性が高いこと」です。
前述した通り、ロイヤルオークはジェラルド・ジェンタ氏によってデザインされました。“8角形のビスがついたベゼル”が特徴的ですが、これは、“潜水用ヘルメットの窓部”から着想したそうです。SFの世界を感じさせるかつての“ヘルメット潜水”のデザインを、時計デザインに融合させる点は、なんとも芸術的です。
さらに、文字盤には美しいタペストリー装飾が施され、針やインデックスはミニマルながら高級感のある仕上げがされています。また、着け心地に優れたブレスレットも、繊細に仕上げられています。まさに、ロイヤルオークの独特の世界観を表現しながら、“実用高級時計”としてまとめ上げているのです。
3つめの“人気が出る素質”は、「コレクションアイテムにできること」です。
ロイヤルオークは、ベーシックなデザイン以外に、迫力のある派生モデル「オフショア」もあります。さらに様々な機能付きモデルもあります。それに加え、数々の限定モデル、コラボレーションモデルがあり、カラーリングの種類も幅が広いのです。つまり、バリエーションが多いことが特徴なのです。
そのため、愛好家はさまざまなロイヤルオークを蒐集することができ、一本だけではなく、複数のロイヤルオークを所有することもできるのです。
↑ロイヤルオーク・オフショア
このように、ロイヤルオークは“人気が出る素質”を備えている時計です。人気モデルになることも、頷けるところです。
補足②:パテックフィリップ・ロレックスの価格高騰という“外的要因”発生
「パテックフィリップとロレックスの価格高騰がロイヤルオークに影響を与える」ことについても補足します。
現在、時計業界では人気の二極化が進んでいます。「極端に人気が高い一部のメーカー」と「その他のメーカー」です。特徴としては、前者は、極端に価格が跳ね上がります。その代表格が、ロレックスとパテックフィリップです。
パテックフィリップは、オーデマピゲと同じ「世界三大ブランド」ですが、評価はオーデマピゲを凌ぎます。特に、パテックフィリップのノーチラスは、ロイヤルオークのライバルモデルです。「ノーチラスの価格高騰」は、間違いなくロイヤルオークの人気に影響を与えます。また、「ロレックスのスポーツモデルの価格高騰」も影響があるでしょう。
具体的には、
「ノーチラスが高くなったので、ロイヤルオークが安く見える」
「ロレックスのスポーツモデルがこんなに高いなら、思い切ってロイヤルオークを狙おうかな」
という発想が生まれるのです。
この状況が、ロイヤルオークの立場を有利にし、ロイヤルオークの人気が加速するのです。
補足③:「ロイヤルオークの資産価値の高さ」が新たな要因となり、さらに人気が加速
「ロイヤルオークの資産価値の高さが、さらなる人気を生む」ことも補足します。
ロイヤルオークが人気となり、需要が増えると、ロイヤルオークというアイテムに対して「価値の向上」が起こります。事実、現在多くのロイヤルオークの中古価格は、メーカー販売価格とほぼ同じだったり、場合によってはメーカー価格以上の価格で販売されています。つまり、「ロイヤルオークの販売価格は高い」と言える状況になっています。
↑現在のロイヤルオークの価値は高い
そして、販売価格が高いことに比例するように、「買取価格も高い」状況です。特に、もし現在よりもお手頃価格の頃にロイヤルオークを手に入れた方なら、現在の買取金額はかなり満足できるものでしょう。
このような「販売価格と買取価格が高い」状況を、総じて「資産価値が高い」と言います。そして、この「資産価値が高い」状況が続くと、「買っても損をしないもの」という評価となり、さらに人気が集まります。今のロイヤルオークは、正にこの状況です。
ここまでで3つの補足を交えながら、「ロイヤルオークの人気が高まった理由」について私の考えを説明しました。
分かりやすいように例えるならば、“土地購入”でも同じパターンがあります。例えば、一等地の地価があまりにも高騰すると、その周辺の土地に人気が流れることがあります。ロイヤルオークに起こったことはこの現象に近いと感じます。
つまり、「パテックフィリップやロレックス(一等地)があまりにも高騰したため、ロイヤルオーク(その周辺の土地)がかつてよりも注目されるようになった」ということです。
このようにして、ロイヤルオークの需要が高まったのです。その需要の高まりの結果、ロイヤルオークはかつてのような「趣味性の高い高級時計」ではなく、「人気があり、かつ、資産性の高い高級時計」に立場が変わりました。
■最後に
今回は、「ロイヤルオークの人気が高まっている理由」を、私見として紹介しました。
前述したように、現在時計業界は二極化が進んでいます。「極端に人気が高い一部のメーカー」と「その他メーカー」です。ロイヤルオークは明らかに前者になっており、“勝ち組ウォッチ”です。安定して高価値な状況が続いており、中古市場でもモデルによってはメーカー価格に近いプライス(もしくはそれ以上)が付くようになっています。
例えば、下の画像の生産終了のロイヤルオークは、生産されている当時、メーカー新品価格が100万円台でした。10年ほど前までは中古価格が100万円アンダーでしたが、現在は、状態や条件が良いものなら中古価格は300万円オーバーでしょう。このように、モデルによってはかなり評価を上げたものがあります。
↑15202ST(生産終了モデル)
本来備える高級時計としてのクオリティーはもちろん、“人気”も“資産価値”も高いロイヤルオーク。先のことまでは予測不能ですが、もしかすると、10年後にはもっと資産価値が高くなる可能性もあるでしょう。
この機会にロイヤルオークに手を伸ばしてみてはどうでしょうか!
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