9.11.2018
【ブランドを知る】ピアジェは時計業界でどのような存在なのか? ~薄型時計の雄であり、宝飾時計の雄である~
Komehyo
ブログ担当者:後藤
「ピアジェ(PIAGET)は面白いブランドです」
私がこのように言うと、皆さんは賛同してもらえるでしょうか。なぜこのような評価になるかというと、ピアジェは最近では珍しい、“ゴーイング・マイ・ウェイ企業”だからです。つまり、「我が道を行く」のがピアジェ流なのです。
まずは、ピアジェの作品を見てください。
↑往年の代表作「ダンサー」
↑普及モデル「ポロ」と「ポセション」
↑定番モデル「アルティプラノ」
※非常に薄いデザイン
上の画像を見ていただくと分かると思います。代表作、普及モデル、定番モデルの例を挙げましたが、どれも“普通の時計”ではありません。万人受けを狙っていないことは明らかです。この作品からも、ピアジェは「消費者ニーズに歩み寄る」姿勢ではなく、「独自の創造物を提案する」姿勢で作品を作っていることが分かります。まさに、「ゴーイング・マイ・ウェイ」企業です。
私は
・なぜピアジェは「ゴーイング・マイ・ウェイ」姿勢のモノづくりを行っているのか?
・なぜピアジェの「ゴーイング・マイ・ウェイ」姿勢のモノづくりが、世間で受け入れられるのか?
と、疑問に思うのです。
今週は、ピアジェというブランドの面白さを、皆さんに紹介したいと思います。具体的には、ピアジェのモノづくりのについて説明し、「時計業界でどのような存在なのか」を明らかにします。そうすると、ピアジェの魅力がよく分かるのです。是非、最後までご覧ください。
■「ピアジェ」とはどんなブランド?
ピアジェのモノづくりを知るには、前提として「ピアジェはどのようなブランドか」が理解できていないと話が進みません。まずはピアジェがどのようなブランドであるのかについて説明します。
↑ピアジェは宝飾ブランド?
きっと、世間では「ピアジェは有名な宝飾ブランド」という印象が強いと思います。確かに、これも間違いではありません。しかし実は、ピアジェは創業時から時計メーカーです。ピアジェが創業したのは1874年。スイスのジュラ山脈にあるラ・コート・オ・フェで、ジョルジュ・エドワール・ピアジェが、時計のムーブメントを作る工房を開きました。
そのムーブメントの持つ高度な技術は瞬く間に時計業界へと知れ渡り、多くのブランドから注文を受け順調に会社は成長していきました。1911年にはジョルジュの息子であるティモテ・ピアジェが会社を受け継ぎムーブメントのみではなく腕時計の制作に力を入れ始めました。1943年、創業者の孫であるのジェラルドとヴァランタンによって自らの名前を付けた時計、ピアジェを制作に至りました。
また、ピアジェの歴史においては、大きな2つの転機があります。
それは、
・極薄ムーブメント発表(1957年)
→薄型手巻キャリバー9P(1957年、厚さ2mm)、薄型自動巻キャリバー12P(1960年、厚さ2.2mm)
・宝飾製品へ力を入れ始める(1959年)
→ジュエリー製品の発表、宝飾用アトリエの設立、創作の共有の場「サロン ピアジェ」の開催
です。
この時期から、ピアジェのブランドイメージがガラッと変わります。ピアジェは、「“薄い腕時計”が得意なブランド」であり、「宝飾ブランド」というイメージになったのです。そのイメージは現在でも続いていますが、どちらかというと後者のイメージが強くなった印象です。
■ピアジェは“薄型時計の雄”、“宝飾時計の雄”
ここまでで説明したことを踏まえると、ピアジェの時計業界でのポジションも見えてきます。それは、
ピアジェは、“薄型時計の雄”であり“宝飾時計の雄”である
というポジションです。
少し、下で説明をしましょう。
①薄型時計の雄
前述のように、ピアジェは薄型ムーブメントの開発に成功します。それは、他社に先駆けたものでした。そのため、「薄型ムーブメントのお手本はピアジェ」という世間イメージがあります。
現在でも、制作した極薄ムーブメントは多くの人々を魅了しています。顕著に薄さが表れているモデルとして、現在はアルティプラノがあります。ピアジェの誇る極薄ムーブメントを活かしたケース、シンプルながら洗練された文字盤、針はどれをとっても一級品と呼ぶにふさわしいです。
さらに、現在はさらに薄さへの追及が進んでいます。従来は「ムーブメントの薄さ」が凄さでしたが、現在は、「“ムーブメント + 本体ケース”の薄さ」が凄みです。つまり、本体ケースとムーブメントをトータル設計することで、より薄い時計を作っているのです。最新の情報では、なんと「時計本体の薄さを、かつての薄型ムーブメントの薄さ(9P:2mm)と同じにすることに成功した」というニュースがありました。まさに、“薄型時計の雄”と言えるブランドです。
↑本体ケースとムーブメントをトータル設計
※画像はアルティプラノ
②宝飾時計の雄
また、特に1960年代以降、ピアジェは宝飾ブランドとしての存在感を強くしてきました。それは、「ピアジェの前衛的なデザインが富裕層を魅了した」という結果が伴ったことが大きかったのです。その成功の要因は、「常に目新しいデザインを追求したから」に他なりません。
ではここで、成功したピアジェデザインの説明のために、ピアジェのモノづくりの3大柱を紹介します。
<ピアジェのモノづくりの3大柱>
1.完璧な時計製造技術
2.繊細な宝飾加工
3.独創的な発想に基づくデザイン
これを見ると、「繊細な宝飾加工」を柱のひとつに挙げています。時計メーカーとしてスタートしたピアジェですが、“宝飾作品”をブランドのアイデンティティのひとつにしていることが分かります。さらに、「独創的なデザイン」も柱に挙げており、「独創的であることが“善”」という発想になっています。そのためピアジェの時計には、宝飾時計が追求する“エレガントさ”と、一般とは異なる“独創性”があるのです。
例えば、そのピアジェらしさは、ポゼッションやライムライトなどが好例ではないでしょうか。創造性のあるデザインでありながら、エレガントさがあるのです。もう少し噛み砕いて表現すると、「個性的でありながら、上品なデザイン」なのです。
そして、ダイヤモンドなどの宝石や、オーナメンタルストーンを使った個性的なカラー文字盤を組み合わせることも巧みです。特に文字盤にオーナメンタルストーンを採用したことは、当時はかなり画期的だったようです。
まさにピアジェは、“宝飾時計の雄”と呼ぶのに相応しいブランドなのです。
↑左:ポセション、右:ライムライト
※右:オーナメンタルストーン文字盤
■最後に
冒頭で私は、
・なぜピアジェは「ゴーイング・マイ・ウェイ」姿勢のモノづくりを行っているのか?
・なぜピアジェの「ゴーイング・マイ・ウェイ」姿勢のモノづくりが、世間で受け入れられるのか?
という疑問を挙げました。
前者の答えは、「それが自分が設定したブランドのモノづくりの目標だから」です。
そして、後者の答えは、「常に目新しいデザインを追求したから」です。
そのような作品づくりを行った源には、モノづくりの3大柱の発想があります。つまり、作品を作る際に「高い技術」「繊細な宝飾加工」「独創性」を表現することを重視していたのです。それを愚直に全うした結果が、“薄型時計の雄”であり“宝飾時計の雄”というポジションなのです。
そして、ピアジェはデザインを追求し続けた結果、現在では面白い存在になっています。それは、
「“宝飾ブランド”というイメージが前面にある“技巧派時計メーカー”」
という面白い存在なのです!
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