高級腕時計の時計通信

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8.6.2018

ご存知ですか? IWCのロゴにある「SCHAFFHAUSEN」の深い意味

Komehyo

ブログ担当者:光岡

 

皆さん、IWC(インターナショナル・ウォッチ・カンパニー)の文字盤にあるロゴを思い返してみてください。

 

SCHAFFHAUSEN

 

という文字が、メーカー名と一緒に書いてあるはずです。

 

↑「SCHAFFHAUSEN」ロゴ

 

この「SCHAFFHAUSEN」は、「シャフハウゼン」と読み、スイス国内の地名のひとつです。IWCは、この地に本社を置き、時計作りを行っているのです。

 

きっと、時計好きな方や、スイスの地名に明るい方なら、この地名をご存知かもしれません。しかし一般的に、シャフハウゼンはあまり有名な地名ではありません。私たちの国においては、圧倒的に「チューリッヒ」、「ジュネーブ」、「バーゼル」の方が有名なのです。また、時計業界におけるスイスの時計産地のイメージは、「ジュネーブ」や「ジュウ渓谷(ラ・ショー・ド・フォン、ル・ロックルなど)」です。きっと、スイスの地名を挙げる際に、シャフハウゼンの名を優先的に挙げる人は少ないでしょう。

 

つまり、IWCは“マイナーな地”で時計作りをしているのです。

 

では、なぜIWCは“マイナーな地”で時計作りをし、さらに、その地名をロゴでアピールするのでしょうか?今週は、その理由を私なりに解説します。

 

 

 

 

 

 

■時計メーカーは、よく地名をアピールするのか?

 

皆さんの中には、「時計メーカーが地名をアピールすることは、よくあるの?」という疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。まずは、時計メーカーと地名の話をさせていただきます。

 

先にこの疑問の回答をすると、時計メーカー地名をアピールすることは、よくあることです。

 

↑パテックフィリップは「ジュネーブ」

 

そもそも、スイスの時計メーカーは「スイスメイド」、つまりスイス製であることをアピールします。ほとんどのスイスブランドの文字盤には、「SWISS MADE」という文字が入ります。さらに、一部のメーカーは、より具体的な“都市名”まで表現することがあります。例えば、パテックフィリップや以前のウブロの文字盤には、メーカーロゴ付近に「GENEVE(ジュネーブ)」という文字が入ります。他にも、ドイツブランドのランゲ&ゾーネやグラスヒュッテ・オリジナルも、文字盤に「Glashütte(グラスヒュッテ)」と、“都市名”を入れるメーカーです。

 

また、文字盤には表現しませんが、モデル名称やシリーズ名称に地名を入れる場合もあります。例えば、ブランパンの「ル・ブラッシュ」や「ヴィルレ」は地名からとったシリーズ名です。カルティエの「コレクション・プリヴェ・カルティエ・パリ(CPCP)」も、パリという名称が入っています。さらに、ブライトリングの「モンブリラン」は、かつて本社があった“通り”の名前をモデル名にしています。

 

↑ブランパン「ル・ブラッシュ」

 

その他に、外装で表現はしていませんが、宣伝活動の中で地名をアピールすることもよくあります。例えばオーデマ・ピゲは「ル・ブラッシュ」、オメガは「ラ・ショー・ド・フォン」、ユリス・ナルダンやゼニスは「ル・ロックル」という具合に、各メーカーが創業地や本拠地をアピールしているのです。都市名とメーカーをリンクさせることで、より良いイメージを与えようと努めています。

 

つまり、時計業界では、地名をアピールすることは「よくあること」なのです。

 

そして、地名アピールの最も影響力のある方法が、先に紹介した「文字盤のロゴに地名を入れる」ことです。この手法を採用するメーカーは一部ですが、IWCはその一部のメーカーです。しっかりと、文字盤に「シャフハウゼン」の文字があります。

 

 

 

 

 

 

 

■「シャフハウゼン」はどのような場所?

 

ではIWCが本拠地を置く「シャフハウゼン」とは、どのような場所なのでしょうか。

 

シャフハウゼンは、スイスのシャフハウゼン州の州都であり、ドイツとの国境の近くにあります。理解を深めるために、地理的な説明を簡単にします。

 

 

スイスは…

 

・西:フランス

・北:ドイツ

・東:オーストリア

・南:イタリア

 

・・・という位置にある国です。

 

 

つまり、シャフハウゼンは、スイスの北端に位置するのです。

 

特徴としては、ライン川が流れる地域であることです。この要素により、シャフハウゼンはで水運交易で栄えた町だったのです。そして、この水源に目を付けたのが、IWCの創業者です。彼は、スイス人でもなく、隣国のドイツ人でもなく、なんと「アメリカ人」でした。

 

IWCの創業者のフロレンタイン・アリオスト・ジョーンズ(以下、F.A.ジョーンズ)は、アメリカのマサチューセッツ州出身で、シャフハウゼンのライン川沿いにインターナショナルウォッチカンパニーを設立しました。1868年のことです。F.A.ジョーンズは、アメリカ市場向けにこのIWCを創立したと言われます。この地に設立した理由は、ライン川の“水力”と“水運”に勝機を見たからと言われています。つまり、水力発電を利用でき、運搬も容易な点が魅力だったのです。また、ドイツ人も多く雇用可能で、スイスの時計造りのノウハウも取り込める、まさに適材適所な場所と考えたのでしょう。

 

↑F.A.ジョーンズの名を冠したポルトギーゼ

 

今現在、シャフハウゼンに住んでる住人の多くは、有名な地元企業としてIWCを誇りに思っています。それは、IWCが、150年前よりこの地域にこだわりを持ち時計作りを行っているからです。日本国内で例えると、きっと、愛知県豊田市の住民の方の、“トヨタ自動車”に対する感情と近いものなのでしょう。

 

 

 

 

 

 

■IWCが“マイナーな地”「シャフハウゼン」をアピールする意味

 

では本題の「IWCが“マイナーな地”『シャフハウゼン』をアピールする意味」についてです。

 

まず、「なぜシャフハウゼン?」という疑問については、先に書いた通りです。つまり、「創業者が選んだ場所だから」です。きっと、アメリカ人の合理的発想とチャレンジ精神が、激戦区の“伝統地域”ではなく、“新たな地”を選ばせたのでしょう。言い換えると、“F.A.ジョーンズの商売の嗅覚が勝機を感じた地”がシャフハウゼンなのです。

 

次に、「なぜシャフハウゼンをアピールするのか?」についてです。これは、ずばり「差別化」です。

 

少し説明します。ジュネーブを代表とするスイスの時計づくりは、一般的に“美しく華やかな時計”をつくるイメージがあります。言い換えると、職人の作る芸術品といったイメージです。これは、ジュネーブをはじめとしたスイス時計産地が“フランス国境沿い”の地域であることが関係しています。歴史上、かつての時計職人たちは、フランスから移住してきたのです。そのため、フランスの華やかな文化の感性をもった時計技術が持ち込まれたことになります。

 

一方、シャフハウゼンは“ドイツ国境沿い”です。もちろんドイツとの関わりも多く、シャフハウゼン企業のIWCは、ドイツの“質実剛健”なものづくりの影響を受けているのです。さらに、創業者であるアメリカ人の“伝統に囚われない自由な発想”も持ち合わせています。そこに、スイスの技術と知識をミックスしているのです。

 

つまり、シャフハウゼンという地名をアピールすることは、“伝統的なスイスの時計づくりとは違う”というアピールでもあるのです。

 

↑質実剛健な印象のあるIWCの製品

 

 

 

 

 

 

■最後に

 

最後に、IWCの付属品から、同社のこだわりに迫ってみました。

 

IWCの時計を買った際につく付属品に、冊子があります。私は、たまたま手に取ったその冊子を読んでみました。その冊子には、「時計以上の何か求めるお客様」という文言がありました。

 

これは明らかに、同社が「IWCを選ぶ人は強いこだわりを持っている」と自認している証拠です。さらに、そのような層をターゲットにしている点からは、かなり高いハードルに挑んでいるメーカーであることを感じます。

 

時計とは本来時間が分かればいいものです。しかしIWCは、それだけを求めていません。なぜなら、前述のように、こだわりのある人に向けて時計を作っているからです。そのため、時計のコンセプト、外装・ムーブメントの作りなどにこだわる必要があります。

 

その“こだわり”の面白い例があります。IWCも他の多くのメーカーと同じく、しばしば時計雑誌に広告を掲載します。しかし、過去の広告を見返しても、IWCの広告は他のメーカーのものと一味違います。

 

その広告は、文章が圧倒的に多いのです!

 

広告なのに、あたかも記事に見えます。細かな解説を入れ、こだわりのある層を刺激しているのです。

 

付属品の話に戻ります。箱には、別の言葉がありました。

 

それは…

 

PROBUS SCAFUSIA

 

↑箱の蓋の内側

 

読みは「プローブス スカフージア」です。

 

これは、「シャフハウゼンの優秀な、そして徹底したクラフツマンシップ」という意味とされます。つまり、IWCの時計は“アート”ではなく“クラフト”です。一般的に、アートとクラフトの違いは「実用的かどうか」と言われます。つまり、IWCの製品は、デザインも機構も“実用性”に重きを置き作られるのです。まさに男心を鷲掴みにするメーカーですね。

 

IWCに興味がなかった方も、是非、その“クラフト”を手に取って触ってみてください。きっと皆さんも魅了されるに違いありません!

 

 

 

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