24.5.2018
ロレックス|何のため!? 新生エアキング「116900」が誕生した理由
Komehyo
ブログ担当者:後藤
突然ですが、皆さんは、現在のロレックス(ROLEX)の新型エアキング「116900」をご存知でしょうか?
↑エアキング/116900
上の画像のモデルがエアキング116900ですが、多くの方が、“インパクトのある文字盤デザイン”に目が行くと思います。
この2016年に登場した“新生エアキング”は、それまでのエアキングとは大きくデザインを変えたことで、当時とても話題になりました。発売当初は入手が難しい状態でしたが、登場から年月を経て、今では店頭で見かける機会も多くなってきています。
この新生エアキングに対して、私は大きな疑問があります。
それは、
「なぜ、従来のエアキングと全く違うデザインにしたのか?」
という疑問です。
この疑問の正確な回答は、もちろんロレックス側にしかできないでしょう。しかし、私も想像力を働かせて考えてみました。そして、私なりに至った仮説があります。今回はこの疑問、つまり、「エアキング116900が何を目的に生み出され、どうして大きく姿を変えたのか」についての、私の仮説を紹介します。
■「エアキング」とはどんなモデル?
皆さんの中には、「エアキングって何?」という方もいらっしゃるかもしれません。まずは、エアキングについて簡単に補足させていただきます。
↑従来のエアキング(14000M)
エアキング(Air-King)は、1940年代後半に初めて登場しました(Ref.5500)。ロレックスのモデルには様々なペットネーム(モデルネーム)がありますが、エアキングは、現在残っている中でも「最も古いペットネームをもつモデル」として有名です。
登場したのはかなり昔ですが、エアキングはかつての外観から大きな変更をすることなく、シンプルフェイス、シンプル機能、スモールサイズという特徴を守り続けていました。また、価格面でも魅力的な設定がなされており、特に1990年以降のエアキングは、ロレックスのエントリーモデルとしても人気のあるモデルです。
しかし2014年、エアキングに大きな変化がありました。当時の現行エアキング114200の文字盤から、「Air-King」の文字が消えたのです。このことにより、エアキングのペットネームは一旦姿を消すこととなりました。しかし2016年、なんと新型エアキングとして、大きく姿を変えた116900が登場したのです。
■「新生エアキング」の特徴とは?
次に、“新生エアキング”の特徴についても紹介しておきます。
新生エアキングは、旧エアキングと比較すると明らかにサイズが大きくなりました。それに伴い、厚み・重量感もアップしています。以前の華奢な印象とは様変わりし、がっしりとした姿へと変貌しました。
↑新旧エアキングのサイズの違い
そして、文字盤デザインもずいぶんとテイストが違います。ロレックスとしては珍しいカラーリングですが、“王冠マークが黄色”、“ROLEXのロゴと秒針が緑色”なのです。また、インデックスの「5、10、20、25、35、40、50、55」に大きな白い印字を採用し、視認性を意識したデザインになっています。このデザインは、これまでのロレックスにはない奇抜なものだと思います。
↑王冠が黄、ロゴと秒針が緑
この文字盤のデザインについては、ロレックスが支援するプロジェクトを紹介する必要があります。それは“ブラッドハウンドプロジェクト”です。これは、「自動車に航空ジェットエンジンを搭載して地上最速を目指す」という凄いプロジェクトです。そのプロジェクトで作られる車が“ブラッドハウンドSSC”で、そのダッシュボードにはロレックスから提供されるスピードメーターとクロノグラフが搭載されるのです。実は、新生エアキングの文字盤は、このブラッドハウンドSSCの計器と同じデザインなのです。ブラッドハウンドSSCは2019年の秋ごろに南アフリカで実走行する予定となっていますので、来年の秋ごろには話題となっているかもしれません。
また、ムーブメントも個性的です。実は新生エアキングのムーブメントは、一般的なCal.3135や3130ではないのです。なんと、ミルガウスに搭載されていたものと同じ耐磁ムーブメントCal.3131が搭載されるのです。耐磁用の内裏蓋(インナーケースバック)が設けられている点も同じです。
■何を目的に新生エアキング116900は生み出されたのか?
ここからが本題です。冒頭でも紹介しましたが、「エアキング116900が何を目的に生み出され、どうして大きく姿を変えたのか」についての、私の仮説を紹介します。
この理由ですが、私は「エアキングを本来の姿に戻したいから」だと考えています。
少し説明します。前述しましたが、2014年、エアキングのペットネームが1度消えました。実はこのとき、ロレックスの人事にもある変化がありました。それはロレックスが新たなCEOとして、元ゼニスCEOのジャン・フレデリック・デュフール氏を迎えたことです。
デュフール氏はゼニス時代に、“ブランドの歴史”と“モデル名称”を重要視していた節があります。例えば、ゼニスはかつて「PILOT」という商標を登録して、その名を持つモデルを作っていました。しかし、かつての「PILOT」の名称をもつモデルの多くは、“パイロットウォッチには見えないデザイン”でした。そして、ゼニスのCEOとなったデュフール氏は「PILOT」名称のモデルを復活させるのですが、彼が選んだ「PILOT」のデザインは、“パイロットウォッチらしいデザイン”でした。つまり、「せっかく素晴らしい名称があるのであれば、その名称に相応しい使い方をすべき」と考えたのでしょう。今ではゼニスの「PILOT」は、見事なデザインをもつパイロットウォッチとしてシリーズ展開をするに至っています。
↑ゼニス/パイロット・エクストラスペシャル
デュフール氏はロレックスに来てから、きっと「エアキングが、名称に相応しいデザインではない」ことに気がついたに違いありません。また、「エアキングとオイスターパーペチュアルはノンデイトモデルという意味で同じであり、区分けしておく意味がない」点も看破したのでしょう。
例えば、
・サブマリーナ=ダイバー用=ダイバー機能
・デイトナ=レーサー用=クロノグラフ機能
・エアキング=??用=??機能
…と考えると、エアキングは不思議な存在なのです。というのも、従来のエアキングはシンプルなデザイン、そして、特別な機能がないモデルだからです。
実は歴史を辿ると初期のエアキング(Air-King)は、「Air-Lion」「Air-Giant」と並んで英国戦闘機をオマージュして作られたとも言われています。つまり本来の姿はパイロット向けモデルだったと言えるのではないでしょうか?デュフール氏はそんなエアキングの歴史を把握して、「Air-King」の本来の意味、つまり“本来の姿”に回帰させることを狙ったのではないでしょうか。私は、そのように考えています。
上の例に当てはめると、
・エアキング=パイロット用=パイロットウォッチ機能
…ということにしたのです。
↑パイロットウォッチとしてのエアキング
パイロットウォッチ機能は、一般的に“高い視認性”と“高い耐磁性”です。実際116900はサイズアップと同時に、大きなインデックスをもつ黒文字盤で視認性を向上し、更に耐磁ムーブメントを搭載します。まさに、パイロットウォッチを思わせるモデルへと変更されたのです。
以上の考えにより、私は「116900は、エアキングを“本来の姿”に戻すために生み出された」と考えているのです。
◾︎最後に
この新生エアキングは登場して以来、そのデザインに賛否両論があることも知っています。しかし、私の仮説からの視点で116900を眺めると、新生エアキングは…
“原点回帰を意図したデザイン”
…なのです。
それと同時に、今までのロレックスにはなかった「フリーガー系」の時計をラインナップに加える巧みさもあります。この点からも、私はデュフール氏の手腕を感じています。
これからも、デュフールロレックスに期待をしています!
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