1.4.2018
【女性に人気の高級時計】カルティエ|タンクフランセーズ ~其の二、タンクフランセーズが人気を獲得した理由とは?~
Komehyo
ブログ担当者:中野
“女性に人気の高級時計”である、カルティエ(Cartier)の「タンクフランセーズ」。今回は、タンクフランセーズが人気を獲得できた理由を、私見を交えながら紹介します。
前回の投稿
「【女性に人気の高級時計】カルティエ|タンクフランセーズ ~其の一、タンクフランセーズとはどんなモデル?~」
で、「タンクフランセーズが人気を獲得した大きな要因は、一般の消費者に支持される魅力的なデザインを生み出したことにある」と紹介しました。
タンクフランセーズはステンレスモデルをラインナップしています。もちろん価格面でも、それまでの金素材を中心としたカルティエ製品よりも購入しやすい存在です。しかし、タンクフランセーズが成功した大きな要因は、“一般層に受けるデザイン”に辿りついたからです。それまでも様々な試みがありましたが、やっと生み出したカルティエ渾身のデザインなのです。
では以降の文章で、「デザイン面で何が良かったのか?」、そして、「そのデザインを生み出すまでの紆余曲折について」を紹介させていただきます。
■なぜタンクフランセーズの成功の要因が“価格”ではなく“デザイン”なのか?
まず初めに、前提として、私がタンクフランセーズの成功の要因を“デザイン”としている点について補足をさせていただきます。
それは、皆さんの中には、「タンクフランセーズが人気なのは、ステンレスモデルを展開した“価格戦略”が大きいんじゃないの?」と思われる方がいると想定しているからです。確かにその点にも一理あります。以前は特に、カルティエウォッチのラインナップは金素材が中心で、長らく一般層ではなかなか手出しが難しいブランドでした。
↑以前からステンレスモデルはある
※左:サントスラウンド、右:パシャC
しかし厳密に言えば、タンクフランセーズの登場以前から、ステンレスモデルはありました。サントスやパシャシリーズなどです。そして価格面で補足すると、カルティエウォッチのステンレスモデルは、当時の他メーカーと比較しても、決して「安い!」と言えるような金額ではありませんでした。例えば分かりやすいところで比較しましょう。
<1990年代中頃のメーカー価格>
※現在と当時とでは、物価・製造コスト・為替などが異なります。飽くまで、当時の中での比較をしたい意図としてご覧ください。税抜きで表現しています。
(ステンレス、自動巻)
・カルティエ「パシャC」
→30万円台半ば(1996年:36万円)
・ロレックス「サブマリーナ14060」
→30万円台前半(1996年:32万円)
(ステンレス女性用、クォーツ)
・カルティエ「タンクフランセーズSM」
→30万円前後(1997年:31万)
・オメガ「コンステレーション」
→10万円台前半(1996年:12万円)
このように、カルティエのステンレスモデルは「安い!」という価格ではないのです。つまり、そもそもカルティエウォッチ自体が他メーカーより高級な存在なのです。そのためカルティエのステンレスモデルは、他メーカーと比べて安さを感じるというよりも、「カルティエウォッチの中では入門プライス」という表現の方が適切なのです。
だから私は、タンクフランセーズが人気を獲得した大きな理由を、“価格面”ではなく“デザイン面”で語るのです。
■タンクフランセーズのデザインを生み出すまでの紆余曲折
タンクフランセーズで“一般層”からの人気を獲得したカルティエウォッチですが、実はそれ以前も、カルティエはいろいろと試行錯誤していました。
前述のように、従来のカルティエウォッチと言えば、金無垢のモデルが中心でした。しかしカルティエは新たな時代の波も感じており、従来の上流階級に向けた製品だけでなく、“一般層”や“若い層”にも製品を広めようとしていました。
その証拠に、「レ・マスト・ドゥ・カルティエ」というシリーズ(以降、マストシリーズ)を、1973年から展開しています。このシリーズで展開されたカルティエウォッチは、金素材の代わりに、より安価な素材であるシルバー素材(またはシルバー素材に金メッキ)を採用しています。結果的に、このシリーズはある一定の人気を獲得しました。しかし、デザインは従来のクラシカルなデザインを踏襲したものでした。あくまで“従来のクラシカルなカルティエウォッチの廉価版”であり、一般層や若い層に向けてデザインを新たに構築したわけではありませんでした。私の個人的な意見としても、マストシリーズが普及したとは感じていません。やはり価格を抑えるだけでは、カルティエウォッチに触れた事のない一般層や若い層への浸透は難しかったのでしょう。
↑レ・マスト・ドゥ・カルティエの
「マストタンク」(金メッキ)
ただし、富裕層だけではなく一般消費者の、特に若い層への浸透を狙うために、「購入しやすい価格」を目指した点は間違っていません。
「購入しやすい価格」+「一般層に受けるデザイン」
という両軸での実現が必要だったのです。
カルティエはステンレスを取り入れたモデルで新たなデザインを模索しました。ステンレスを採用した「マスト21」、「サントスガルベ」、「パシャC」などです。しかし、マスト21はまだまだクラシックテイストが強く、サントスガルベはカジュアル過ぎたかもしれません。また、パシャCに関しては、ケース径がユニセックスサイズの35mmです。後年は女性の支持を獲得しますが、最初はむしろ男性に支持されました。
↑左:マスト21、右:サントスガルベ
そんな状況を受けて登場したのが、タンクフランセーズです。このモデルで、カルティエの念願が叶います。そのバランスの良いデザインが、一般層や若い層に受け入れられたのです。
■タンクフランセーズのデザインは、何が良かったのか?
タンクフランセ―ズのデザインは、それまでのタンクとは似て非なるもので、全く新しいデザインだったのです。では、タンクフランセーズのデザインは何が良かったのでしょうか?ここでは、デザインの優れた点を紹介します。
①現代的であり、クラシカルなデザイン
タンクシリーズのデザインソースは、“戦車のキャタピラの跡”です。そのため、タンクのデザインは“直線的”な印象です。しかしタンクフランセーズには、ケースに柔らかな“曲線”を採用しています。しかし、ケースの縁にはエッジを持たせていて、“直線”のイメージもあります。この曲線と直線を合わせた形状が、立体感をもたらします。この立体感を与えるデザインこそ、現在のデザイントレンドですので、より“今風”な雰囲気となるのです。
そして、ブレスレットが大きなポイントです。実際は「H型駒」と「1ピースの中央駒」を組み合わせたブレスレットです。ただ、「H型駒」の両サイドが浮き上がった構造で、光沢の有無も使い分けているため、横から数えると3個の部品で構成されている“3列ブレス”のように見えます。
3列ブレスはロレックス やオメガなどでも採用される、「時計業界の標準仕様」と言えるかもしれません。このブレスデザインを採用すると、よりスポーティな印象になります。芸術的なデザインを主軸にするカルティエは、それまでほとんど3列ブレスを採用してきませんでした。特に、ステンレスの女性用モデルへの採用は、初めてではないでしょうか。
つまり、クラシカルなタンクデザインに、「現代的な立体感」と「スポーティさ」を与えたのです。
そのため、「今のファッションに合うカジュアルさ」と「高級時計としてのの品格」を併せ持っています。
②実用性と華やかさの両立
ケースとブレスレットの大部分には、美しいヘアラインで光沢を抑える「サテン仕上げ」が施されています。そして、側面などの一部分 には、華やかに光沢を与える「鏡面仕上げ」が施されています。
メインをサテン仕上げにすることにより、日常使いでも華やか過ぎず、傷も目立ちにくい利点が生まれます。しかし女性は多少の華やかさも欲しいはず。絶妙に鏡面仕上げを入れることで、エレガントな要素も残しています。
実用面の中に、宝飾ブランドとしてのアイデンティティを表現するセンスは、流石です。ビジネスで活躍する女性にとっても、「求めていたのは、それ!」と言わせるような絶妙さです。
③カルティエらしい“顔”をもつ
全体は現代的で、スポーティさを備えていますが、“顔”はカルティエウォッチらしいクラシカルさをもっています。
一部のモデルを除いて、カルティエの時計の“顔”と言えば、「ローマ数字のアワーマーカー」をもつ文字盤です。せっかくカルティエウォッチを手に入れるなら、この“顔”であって欲しいのではないでしょうか。
きっとこの、一目で分かる“カルティエらしい顔”が、「ああ、私はカルティエの時計を買ったんだなぁ」と実感させてくれるでしょう。
さらにマニアックですが、シークレットサインがある点も、こだわりです。よく見ていただくと、ローマ数字の「Ⅹ」にこっそり「Cartier」のロゴが入っています。これは、はるか昔に考案された、模倣品への対策の名残です。歴史あるメーカーならではです。
④デザインの総評
立体感のあるケースに、使い分けされた外装仕上げ。そして、こだわりの文字盤。その他にも、美しい色味の「ブルースチール針」やリューズ先の「カボションのカラーストーン」も備えています。
先にも触れましたが、カルティエウォッチは他メーカーに比べると高価な価格設定です。ただそれは、これだけの充実したデザインとクオリティを実現しているのですから、この価格は当たり前かもしれません。
プライベートでも、ビジネスシーンでも。さらに、パーティーシーンでも大丈夫でしょう。万能性がありながら、実用的で、美しいデザインです。これ一本で、様々な場面で堂々と充実した時間が過ごせるのです。
つまり、
高い実用性と着用シーンの多様性をもつ“万能時計”であり、同時に、“カルティエらしいエレガントさ”をもつ時計
これが、タンクフランセーズです。
従来のカルティエウォッチは“カルティエらしいエレガントさ”が特徴でしたが、そのデザインのために、万能性を求めることは難しい印象です。また、“万能時計”として特化してしまうと、カルティエらしさが失われてしまいます。その間をとるような絶妙なバランスでデザインされた作品が、タンクフランセーズなのです。タンクフランセーズが一般層や若い層に支持されるのも頷けます。
■タンクフランセーズのバリエーション紹介
最後に、タンクフランセーズのバリエーションを紹介しておきましょう。女性用の定番は、「SMサイズ」と言われる最も小ぶりな大きさのステンレスモデルです。
↑タンクフランセーズ・SMサイズ
型式:W51008Q3
その他には、以下のようなモデルも人気があります。
①タンクフランセーズ・MMサイズ
↑型式:W51011Q3
SMサイズより一回り大きいサイズです。もう少しの存在感と格好良さを求める女性におススメです。日付の有無で種類があります。
②タンクフランセーズ・SMサイズ・YGコンビネーション
↑型式:W51007Q4
当社でも大変人気のステンレスと金素材の組み合わせ。ワンランク上のタイプとして人気です。
③タンクフランセーズ・SMサイズ・ピンクシェル
↑型式:W51028Q3
定番のSMサイズのステンレスモデルですが、文字盤に個性があります。文字盤には、ピンク色のシェル(貝)を採用します。宝飾ブランドらしいシェル文字盤を採用しながら、通常の文字盤と中古価格があまり変わらない点も魅力です。
タンクフランセーズが気になっている方に向けて、私は「その選択は間違いない!」と言いたいです。是非、お好みのタンクフランセーズを探してみてください!
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