高級腕時計の時計通信

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30.6.2017

ご存知ですか? 実は、ロレックスは内部が凄い! ~ロレックスムーブメントの魅力を分かりやすく解説~

Komehyo

ブログ担当者:須川

 

ロレックスは、多くの方に評価される存在です。

 

 

なぜロレックスが多くの方に評価されているかというと、もちろん「魅力があるから」です。その魅力は様々ありますが、具体的にロレックスの魅力を挙げると、“圧倒的な知名度”と“人目でわかる伝統デザイン”です。つまり、身に着けているだけで、周囲に「ロレックスをつけている」と気付いてもらうことができる点です。この点は、ブランド品として評価する場合には、非常に高評価すべきポイントです。

 

また、ロレックスは資産価値が高い点も魅力です。需要があるがゆえに、手放す際も、他の時計ブランドより高く評価されます。つまり、「買うときも高いが、売るときも高い」ということです。

 

しかし、私が皆さんにお伝えしたいロレックスの魅力は、それらだけに留まりません。

 

ロレックスは“内部”、つまりムーブメントも凄いのです。しかし、ムーブメントは外部から見えない部分であり、マニアックな要素かもしれません。そこで今週は、ロレックスのムーブメントの魅力をわかりやすく紹介させていただきます。

 

 

 

 

 

 

■紹介するムーブメントは“従来の定番CAL.3135”

 

最新のロレックスムーブメントは、“パラフレックス・ショックアブソーバー”や“パラクロムヒゲゼンマイ”の採用など、新たな進化をみせています。しかし。これらの最新の要素を味わえる方は、まだまだ一部の方だけだと思います。私は“多くの方”に向けて魅力を紹介したいので、今回は、“従来の定番ムーブメント3135に採用される要素”から紹介します。このムーブメントは、日付つきの男性用ムーブメントで、サブマリーナデイトやデイトジャストなど、多くの3針メンズモデルで採用されています。

 

また、「何に対して凄いのか」という基準軸が必要です。今回は、時計業界の基準機であるETA社の2892A2ムーブメント(以下、「ETA社製」)との比較をイメージして、「凄い」と表現しています。

 

↑ロレックスCal.3135

↑ETA2892A2ベースのブルガリ220

 

それでは、本題へ入ります。結論から言うと、ロレックスのムーブメントの魅力は、「精度へのこだわり」と「耐久性へのこだわり」が凄いことです。次で述べさせていただきます。

 

 

 

 

 

 

■「精度へのこだわり」が凄い!

 

ロレックスは実用面を重視するメーカーです。そのため、ムーブメントにも様々なこだわりがあります。そのこだわりのひとつが「精度へのこだわり」です。下でポイントを挙げます

 

 

<精度へのこだわりポイント>

 

①巻き上げヒゲ(ゼンマイ)

↑ロレックス3135:巻上げヒゲ

↑ETA社製:平ヒゲ

 

ロレックスは多くのモデルで「巻き上げヒゲ」を採用します。この巻き上げヒゲの採用が、精度の向上に大きく貢献しています。

 

ムーブメントの心臓部である調速脱進機で使われる部品が「ヒゲゼンマイ」です。巻き上げヒゲは、“ヒゲゼンマイの高級仕様”といったところでしょうか。

 

ヒゲゼンマイは、“シーソー”のように動くテンプという部品を動かしています(上の画像の金色の輪っか状部品)※。「この“シーソー”をいかに左右均等に動かすことができるか」が高い精度への鍵となります。巻き上げヒゲは、この“シーソー”を左右均等にしやすいヒゲゼンマイと理解してください。

 

※「“シーソー”のように動く」と表現していますが、別のイメージとして、「自動車のハンドルを左右交互にきるように」でも良いかもしれません。

 

因みに、ETA社製は一般的な「平ヒゲ」を採用しています。そして、多くのメーカーでは、量産機には平ヒゲを使います。パテックフィリップでさえそうです。しかし、ロレックスは、なんと、量産機にも当たり前のように巻き上げヒゲを採用しています。私は現在のメーカーでは、ロレックス以外に、そのようなことをしているメーカーを知りません。

 

 

②フリースプラング(マイクロステラナット式)

↑ロレックス3135:ヒゲゼンマイを触らず調整

※マイクロステラナット式(慣性モーメントを変えて調整)

↑ETA社製:ヒゲゼンマイを触っている

※緩急針式(エタクロン)

 

ロレックスの別の売りは、以前から「フリースプラング」であることです。フリースプラングとは、「直接ヒゲゼンマイを触らない」構造をもつ調速機を指します。

 

従来の一般的なムーブメントは、「直接ヒゲゼンマイを触る」調速機を採用します。なぜ「触る」かというと、精度の遅れ進みを時計師が調整する装置があるからです。ヒゲゼンマイを触っている部分を動かして調整(設定)するのです。しかし、何かの弾みでこの設定がずれてしまうと、時計が狂います。

 

この弱点を克服する発明が、フリースプラングなのです。直接ヒゲゼンマイを触らずに調整ができる、画期的な装置なのです。

 

現在はフリースプラングを採用するメーカーも増えました。しかし、昔から当たり前のようにフリースプラングを採用するのは、ロレックスやパテックフィリップなど、ほんの一握りのメーカーだけでした

 

因みに、ETA社製は、直接ヒゲゼンマイを触る「緩急針式(エタクロン)」です。

 

 

③ツインブリッジ

↑ロレックス3135:ツインブリッジ

↑ETA社製:シングルブリッジ

 

Cal.3135以降のムーブメントには「ツインブリッジ」が採用されます。先ほど“シーソー”に例えたテンプを保持する部品の話です。

 

テンプへの衝撃は、精度への悪影響や故障につながります。そのため、テンプを左右からがっちり支える部品がツインブリッジです。テンプは時計にとって大事な部分でありながら、非常に繊細な部分でもあります。子供を片腕でだっこするより、両腕でだっこした方が安定するように、ロレックスはテンプを両側から保持するのです。非常に見ていても安心感があります。

 

因みに、ETA社製は片側から支える「シングルブリッジ」仕様です。

 

 

④キフショック(キフ・ウルトラフレックス)

↑ロレックス3135:キフショック

↑ETA社製:インカブロック

 

ロレックスのムーブメントは、伝統的に耐震装置に「キフショック」を採用します。ETA社製は、一般的な「インカブロック」を採用します。

 

これも衝撃からテンプを守る機構です。また“シーソー”の例えを出しますが、シーソーは中心に地面と接する棒があります。その棒が、例えば地震などで、地面に対して傾いてしまうと大変です。シーソーは正常に動かないでしょう。この例えから説明すると、キフショックなどの耐震装置の役割は、シーソーの中心棒を常に真ん中に戻してくれるイメージです。つまり、テンプの軸を常に中央に留めてくれる装置です。

 

一般的なインカブロックは、その装置の要となる人工ルビーを“2か所で保持”しますが、キフショックは“3ヶ所で保持”します。より安心感のある耐震装置が、キフショックです。

 

 

 

 

 

 

■「耐久性へのこだわり」が凄い!

 

「耐久性へのこだわり」が強い点も、ロレックスムーブメントの魅力です。つまり、長年の使用より起こる摩耗などへの対策が見どころです。以下で紹介します。

 

 

<耐久性へのこだわりポイント>

 

⑤レッドアルマイト処理

↑ロレックス3135:レッドアルマイト処理されている

↑ETA社製:レッドアルマイト処理なし

 

ロレックスムーブメントを見たときに、目立つ存在が“2つの赤い歯車”です。この赤い歯車は、「リバーシングホイール」と言います。

 

少し説明すると、自動巻式の時計には、腕の動きに反応して動く錘(おもり)である「ローター」という部品があります。このローターが腕の動きに反応して回ると、ゼンマイが巻き上がる仕組みです。つまり、このローターの動きをゼンマイまで伝える歯車が、リバーシングホイールです。しかも、ローターがどちらに回転しても、次の歯車には“ゼンマイ巻き上げ方向”に切り替えて力を伝達するのです。

 

しかし、リバーシングホイールは腕の動きに連動して動く歯車ですので、長年使用することによる摩耗が心配な部品です。ロレックスは摩耗を軽減すべく、リバーシングホイールに「レッドアルマイト処理」を施すのです。アルマイトは、アルミニウムに施す陽極酸化処理のことで、ロレックスの部品として表現すると、“酸のバリアー”を張ったアルミニウム製歯車のことです。しかも、アルマイト処理は着色可能なので、ロレックスは赤色にしており、もし摩耗が起きてもすぐ分かるようにしています。

 

レッドアルマイト処理の歯車は、もちろん、ETA社製には施されていません。

 

 

⑥人工ルビーの数が多い

↑ロレックス3135:31石

↑ETA社製:21石

 

ロレックスのCal.3135は、ETA社製より多い数の“人工ルビー”を使用しています。ETA社製の2892A2が“21石”に対し、ロレックスCal.3135は“31石”です。

 

この人工ルビーは、基本的に歯車の軸部分にあてがわれます。例えば、ずっと床の上で回り続けるコマを想像してみてください。きっと、その床を摩耗させて穴をあけていくでしょう。歯車も同じです。ずっと回り続けると、その接地面を摩耗させます。そこで、その歯車の接地面に、硬いルビーを使うのです。時計に採用するのは人工のものですが、ルビーは硬度で言うとダイヤモンドに次いで硬く、モース硬度9の素材です。同時にオイルを挿せば、摩耗も少なく、動力の伝達もスムーズになります。

 

もちろん摩耗対策としては、歯車の軸部分に使えば使うほど良いと言えます。しかし、人工ルビーを積極的に採用して部品点数と増やしてしまうと、コストが上がってしまいます。ETA社製はバランスをとって21石としていますが、ロレックスの3135は31石使用しています。ロレックスは、より高コストな仕様と言えます。

 

 

 

 

 

 

■最後に

 

いかがでしょうか?ロレックスのムーブメントには、“精度”と“耐久性”に対する強いこだわりがあることがお分かりいただけたでしょうか。

 

クォーツ時計が発明されるまでは、“精度”が時計の良し悪しを測るバロメーターでした。ロレックスは腕時計の黎明期から、優れた精度と実用性を実現して、時計業界で現在の地位を築いています。現在では電波時計のような高精度の時計が存在しますが、それでもロレックスは「機械式(ぜんまい式)時計での高精度と高い実用性」にこだわっています。それが、ロレックスの矜持です。

 

その矜持から生み出されるこだわりは、ムーブメントに現れています。そして、そのムーブメントに宿るこだわりが、私たちが身に着けるロレックスに信頼を与えているのです。

 

それは、

「ロレックスって故障が少ないよね」

「このロレックス、もう長く使っているけどまだ時間が正確だよ」

という、ユーザーの声につながるのです。

 

そう、ロレックスの魅力の源は、内部(ムーブメント)なのです!

 

 

 

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