4.5.2018
【高級時計の選び方】高級時計の「並行輸入品」と「正規輸入品」の違いを知ろう!
Komehyo
ブログ担当者:栗田
当ブログでは、「高級時計の選び方」と題した記事を、シリーズとして投稿しています。
今回はこの「高級時計の選び方」シリーズとして、
“並行輸入品”と“正規輸入品”の違い
について紹介します。
この“並行輸入品”や“正規輸入品”は、しばしば「正規か並行か」のように、短縮した言葉で語られることが多いと思います。現に、私も時計売場で、「正規の~」、「並行の~」というワードをよく聞きます。私たち時計スタッフもこのワードを使うことが多いですし、お客様もご存知の方が多いように感じます。きっと今では、“正規と並行の違い”については、高級時計選びに必要な“基本知識”なのでしょう。
しかし、「そもそも並行輸入って何?」という方もいらっしゃると思います。さらに、「並行輸入は分かるけど、高級時計の場合どうなるの?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、高級時計の場合における、「“並行輸入品”と“正規輸入品”の違い」を紹介します。これを知ることで、きっと時計選びのポイントがより分かりやすくなるはずです。
■海外輸入品には、“正規輸入品”と“並行輸入品”がある!
高級時計の“新品”購入を検討されたことのある方ならば、
「同じモデルなのに、なぜお店によって金額が違うの?」
と疑問に感じたことがあるかもしれません。
↑KOMEHYOでも取り扱う“並行輸入品”
実は、世間の状況をみても、高級時計以外の商品でも同じことが起こっています。特にインターネットが普及した現在では、様々な商品の価格比較ができるので、“価格差”を感じる場面は多いのではないでしょうか。例えば、iRobot社のおそうじロボット“ルンバ”の新品の販売価格を、インターネットで調べてみました。すると、メーカー希望小売価格が約9万円のモデルが、6万円ほどで売られている状況がありました。つまり、“約9万円”で購入する人と、“約6万円”で購入する人がいる状況になっています。
この差は何なのでしょうか?
案の定、“約6万円”の方の商品には「並行輸入品」と書かれていました。私は、「案の定」と思ったのですが、その理由は以下の2点によるものです。
・iRobot社がアメリカの企業なので、ルンバは“海外製品”である。
・メーカー希望小売価格よりも安い
要するに、「海外からの輸入品 + 安い」という状況で、私は“並行輸入品”ではないかと感じたのです。そして、“安くないほう”、上の例なら、メーカー希望小売価格の商品が“正規輸入品”です。
つまり、海外から来る商品だからこそ、“輸入ルート”という要素が生まれ、そのルートに種類があるのです。そのルートの種類が“正規輸入”と“並行輸入”で、その輸入ルートにより、価格やサービスなどの条件が変わります。ただし、もちろん製品としては同じものです。
次で、掘り下げてそのルートによる違いを説明しましょう。
■“正規輸入品”と“並行輸入品”の違い
では以下で、“正規輸入品”と“並行輸入品”の違いを説明します。それぞれの意味と、メリット・デメリットを中心に紹介します。
①正規輸入品(正規ルート)
正規輸入品とは、海外のメーカーと正式に輸入・販売代理店契約を結んだ“正規代理店”や“メーカー直営店”で販売される商品を指しています。つまり、“正規ルート”で輸入されたものです。典型的な例は、百貨店やブティックです。
補足をします。やはりブランド品メーカー(製造者)は、自分たちの作ったものを「自分たちのイメージに合うような方法と価格で売りたい」と考えています。なぜなら、あまりにも安い価格で売られたり、酷い接客で売られると、ブランドイメージが崩れるからです。それを防ぐために、メーカーは消費者の手に届くまでの形をコントロールしたいのです。その手段が、「提携したお店に売ってもらうこと」なのです。これが、正規ルートが発生する理由です。
<「正規輸入品」のメリット・デメリット>
では、正規輸入品のメリットとデメリットについてです。
メリットは、なんといっても「最高の安心感 + 最高の満足感」です。
安心感の一つとして、「アフターサービス面での安心感」が挙げられます。全ての商品にメーカー保証が付き、それを確実に受けられるのです。また、正規メンテナンス料金の優遇を行うブランドもあります。もう一つは、「偽物を心配しなくて良い安心感」です。メーカーが管理するルートのため、偽物が入り込む余地がありません。
また、例えば「ロレックス」や「カルティエ」というブランド名も“ブランド”ですが、「正規店で購入する」という行為自体も、一種の“ブランド”なのです。そこには、最高の満足感があるでしょう。
↑かつてのロレックスの正規輸入品には
裏蓋に「直輸入品」シールがあった
デメリットは、「メーカーが設定する金額での販売となる」ことです。前述のように、メーカーには「ブランドイメージを崩したくない」という意図がありますので、消費者にとっては、ある程度“割高感のある価格”になります。もちろん法的な問題もありますので、メーカーが店舗での販売価格を強制的に決定している訳ではありません。しかし実情は、メーカーが「メーカー希望小売価格」として“希望金額”を打ち出し、正規販売店がその希望金額を価格に“採用”している状況です。
②並行輸入品(非正規ルート)
並行輸入品とは、メーカーと正式な輸入・販売代理店契約を結んでいない“第三者”が独自ルートで輸入した商品を指します。“第三者”の典型的な例は、並行輸入を行う商社や、海外に直接買付けに行く小売店です。
ポイントは、“海外にある正規販売店”から仕入れることです。つまり、並行輸入品の物流ルートを見ると、“途中までは正規販売品”なのです。ただし、「海外の正規販売店の」という注釈がつく“正規販売品”ですが。それを、買付けて国内に持ち込むことが並行輸入なのです。国内へ入ってくるルートに注目すると、正規のルートではないので、“非正規ルート”の輸入扱いになります(※1)。
“非正規ルート”と聞くと、「学校へ裏口入学で入る」かのようなマイナスイメージを受けるかもしれません。しかし、そんなことはないのです。考えてもみてください。そもそも、メーカーが正規ルートを設けたことにより、“非正規ルート”が発生したのですが、一般的な輸入品には“正規ルート”がないものがほとんどです。例えば、「ガソリンの正規品」「カナダ産小麦の正規品」「アメリカ産牛肉の正規品」などは聞いたことがないでしょう。ほとんどの生産者は消費者までのルートにまで干渉せず、次の売り手に渡すのみです。そのため多くの場合、中間業者による“独自ルート”での輸入となります。並行輸入も“独自ルート”という意味では同じであり、この“独自ルート”の方が多くの場合で一般的なのです。
因みに、私どもKOMEHYOの新品も、海外メーカーのものは並行輸入品です。
<「並行輸入品」のメリット・デメリット>
では、並行輸入品のメリットとデメリットについてです。
メリットは、なんといっても「価格が安い or “国内にないもの”の入手ができる」点です。
並行輸入品は海外の様々な国から仕入れるため、国内外の価格差や為替などの条件に影響されて販売価格が決まります。基本的には、安くなる条件を求めて買い付けが行われます。また、並行輸入品にはメーカーからの価格コントロールが発生しないため、価格競争が起きます。これらの理由により、一般的には価格が正規輸入品よりも安くなります。この「安い」という点は、並行輸入の最大のメリットでしょう。
また、“国内にないもの”が入手できる点もメリットです。“国内にないもの”の一つは、「国内の正規販売では取り扱わないアイテム」です。つまり並行輸入品にはレアなアイテムもあるのです。例えば、ロレックスの弟ブランド「チュードル」は、日本で正規輸入がないブランドです。もしチュードルの新品が欲しい場合は、並行輸入品しか選択肢がないのです。
↑チュードルは正規輸入がない
※画像は「ヘリテージブラックベイ」
※追記(2018/09/19)
執筆時点でチュードルは日本で正規輸入がないブランドでしたが、2018年の10/31より正規輸入を行うことが発表されました。日本での正式な読み方は「チューダー」と決まりました。
さらに、“国内にないもの”のもう一つは、「国内の正規販売で在庫切れしているアイテム」です。「国内在庫量<世界在庫量」ですので、需要があるものが国内にない場合は、並行輸入品が活躍するのです。例えば、ロレックスのスポーツモデルは、正規店での購入が非常に困難ですが、並行輸入品であれば比較的容易に手に入れることができます。しかし注意点として、国内に在庫がない場合は、並行輸入品の価格がメーカー希望小売価格よりも高くなる場合があります。
↑デイトナは国内正規在庫がなく
価格が「正規<並行」となる
デメリットは、アフターサービスにあります。“保証”と“メンテナンス”の問題です。
まずは“保証”の話です。前述のように、並行輸入品は“途中まで正規販売品”でしたが、それは「海外の店舗に置いてある時まで」です。この後の流れがポイントです。具体的に説明しますが、並行輸入業者が独自ルートで買い付ける場合、“業者”として買い付ける訳ですから、当然、その販売店も“業者対応”をしてきます。また、状況としても、一本だけ買い付ける時もあれば、大量に買い付ける時もあるでしょう。そこでは、「保証書に販売スタンプを押すかどうか」などの点で、状況に応じた対応が取られます。
そのため並行輸入品の国際保証書は、「未記入」か「海外販売スタンプ有り」のどちらかになります(※2)。「未記入」だとメーカー保証が受けられませんし、「海外販売スタンプ有り」は実際の国内消費者の購入より前の日付が記載されることになります。つまり並行輸入品は、「メーカー保証を完全にあてにできない」というデメリットがあるのです。しかしご安心ください。この補填として、並行輸入品販売店からの“店舗保証”がつくことが一般的です。
↑海外販売店の保証書への対応は様々
次に“メンテナンス”の問題です。実は時計メーカーによっては、正規販売品以外の修理を受け付けてくれない場合や、メンテナンス料金を正規販売品より高く設定している場合があります。これは「並行差別」と呼ばれており、並行輸入品のデメリットとしてよく挙げられます。前者で有名なのはフランクミュラーで、後者で有名なのはブライトリングやゼニスです。しかし並行差別を設けている時計メーカーは比較的一部であり、ロレックスやオメガなどの多くの時計メーカーは、並行輸入品であっても同じ料金でメンテナンスをしてくれます。
■最後に
ここまでで、正規輸入品と並行輸入品を説明し、さらにメリットとデメリットにも言及しました。
皆さんは、“正規輸入品”と“並行輸入品”の、どちらが良いと思われたでしょうか?
私は立場的には、並行輸入店側に所属する人間です。しかし、私の個人的な見解としては、「どちらにもメリットがある」という立場です。なぜなら、この問題の正解は、“購入者の気持ち”の中にあるからです。つまり、購入する方が、どちらのメリットに魅力を感じるかで、正解が変わってくるのです。だから、売り手側である私には絶対的な答えがないのです。もし私がこの質問を受けたら、質問した方の気持ちを聞き、その方の価値観の中で答えを見つけるでしょう。
つまり、正規輸入品の“安心感”や“満足感”に大きなメリットを感じる方もいれば、並行輸入品の“価格の安さ”に魅力を感じる方もいるということです。もし皆さんが、「正規輸入品と並行輸入品のどちらを購入しよう?」と迷われているのであれば、今回紹介をしたメリットとデメリットの「どれを優先したいか」を考えてみてください。きっと答えが見つかるはずです。
そして最後にこの「正規 vs. 並行」という比較をよりフェアにするために、一言加えさせてください。
それは、
「並行輸入品には偽物の可能性があるのでは?」
という風評についての弁明です。
下で並行輸入品の物流の流れを箇条書きします。
<並行輸入品の物流の流れ>
①正規販売店(海外)
↓
②並行輸入業者
(※小売店が直接買付けしない場合)
↓
③並行輸入販売店(国内)
並行輸入品の物流の流れにおいて、偽物の入り込む隙があるとすると、②です。つまり、「その並行輸入業者は、しっかりとした場所で買付けたのか」という点がポイントです。
「“実店舗を構えて”商売をしている並行輸入店」、さらに「長きに渡って運営している老舗のインターネット並行輸入品販売店」は、“正規”というお墨付きがありません。そのため、“積み重ねた信用”を担保に信頼を得ています。そのため新品仕入れについては、「信頼できる並行輸入業者」である点は、絶対条件としてチェック済みです。さらに、中古買取を行っている企業であれば、そもそも“商品を見る目”をもっています。この点は、是非、ご理解ください!
※1・・・並行輸入は法的に大丈夫なのでしょうか?経済産業省のHPによると、
商標権上は
“昭和45年2月27日の大阪地裁の判決が並行輸入を権利侵害にあたらないと判断して以来、商標権に係る真正品の並行輸入は、税関では商標権の侵害にあたらないものとして取り扱われています。”
と書かれています(参照はこちら)。
また、特許権上は
“なお、特許権に係る真正品の並行輸入は、特許権者等と譲受人との間で、特許製品の販売先等を制限する特段の合意があり、かつ、かかる合意が当該特許製品に明示された場合を除き、税関では特許権の侵害にあたらないものとして取り扱われています。”
と書かれています(参照はこちら)。
現在の法的解釈では、「問題なし」というスタンスです。
※2・・・並行輸入品にも、付属品のひとつとして“メーカー保証書”が付きます。そのメーカー保証書は基本的に、「未記入」か「海外販売スタンプ有り」のどちらかとなります。ただし、紛らわしいパターンがあり、並行輸入販売店によっては、「未記入」の保証書にその並行販売店のスタンプを押す場合があります。この場合、“完成された保証書”に見えるので勘違いされやすいですが、それは“正規販売店のスタンプ”ではありませんので、正規の保証が有効になる訳ではありません。あくまで、並行輸入店の“独自の管理方法”として行っている状況です。
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