高級腕時計の時計通信

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11.8.2017

【時計業界の名作を知る】ゼニス「ローズゴールド・エルプリメロ」 ~ゼニスの気になる“タキテレ”クロノグラフ~

Komehyo

ブログ担当者:長谷川/須川

 

当ブログでは、1990年代ごろの名作を振り返る、「ネクストヴィンテージ」というシリーズ企画があります。1990年代ごろと言えば、機械式時計の人気が盛り返す時代であり、とても面白い作品がたくさん生まれました。そんな時代の作品にスポットを当てます。

 

今回は、ゼニスの「ローズゴールド・エルプリメロ(ローズゴールド・リミテッド)」を紹介します。

型式17.0500.400

 

上の画像のモデルが、ローズゴールド・エルプリメロです。

 

とにかく、文字盤内が“目盛り”だらけです!

 

そして本体ケースは、赤みの強い18金素材、ローズゴールドです。

 

なんと個性的な時計でしょうか!

下で、さらに詳しく見ていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

■「ローズゴールド・エルプリメロ」とは?

 

ゼニスの「ローズゴールド・エルプリメロ」は、1998年に発表されました。世界限定750本という希少なモデルとして登場しますが、その内訳は、ホワイトダイヤルが350本ブラックダイヤルが400本でした。勝手な捉え方ですが、きっと18金を表す数字「750」に掛けて、750本限定にしたのではないでしょうか。

 

ケース径は約38mmで、素材はモデル名称通りローズゴールドです。ムーブメントには、ゼニスが誇るクロノグラフの名機“エルプリメロ”(※1)が搭載されます。

↑ローズゴールドケースにエルプリメロ搭載

 

実は背景として、この当時、各時計メーカーがヴィンテージを踏襲したデザインをもつモデルを数多く発表していました。ゼニスもそれに倣うかのように、1950年代のデザインを復刻させたものが、このローズゴールド・エルプリメロです

 

そして文字盤ですが、現在の主流とは異なり、ダイヤル内にテレメータータキメーター(※2)の両方が一目で分かるように配置されています。タキメーターとテレメーターが両方採用されるデザインは、通称「タキテレ」と呼ばれます。この時計デザインは、戦争が今よりも頻繁で、かつ今よりもアナログだった時代のものです。当時は、機械式時計が“戦闘中の実用的な計器”と見なされていたようですので、2種類の計器として使えるタキテレは魅力的だったはずです。

 

ゼニスがデザイン源にした1950年代と言えば、もう第2次世界大戦も終わっている時代です。しかし、軍用時計の名作デザインであるタキテレは色あせることなく存在していたのでしょう。

 

そして1998年、ゼニスがかつてのデザインを源に作り出したこの限定モデルは、軍用デザインである“タキテレ”と、洒落た金素材“ローズゴールド”を組み合わせたものでした。“実用”と“優美”という相反するような要素を、バランスよく合わせるゼニスのセンスが光るモデルです。

 

 

 

 

 

 

■ローズゴールド・エルプリメロは、“目盛り”がいっぱい!

 

そしてなんといっても、ローズゴールド・エルプリメロは、文字盤内のタキテレの“目盛り”が魅力的です。なんと、タキメーターを“1つ”ではなく、“2つ”もっているのです。通常のタキテレは、タキメーターとテレメーターはそれぞれ一つずつですので、“2つ”タキメーターをもつこのモデルは特異なデザインです。

↑タキメーター2つもつ

「ローズゴールド・エルプリメロ」

↑通常タキメーターとテレメーターは1つずつ

※画像はロンジン「ヘリテージ」

 

皆さん、「なぜ、タキメーターが2つあるのか?」と疑問にもつと思います。実はこの回答は難しくありません。

 

単純に、タキメーターを途中で切って、分割しただけなのです。

 

上で登場したロンジンのタキメーターを見ていただくと、わかりやすいと思います。ロンジンのタキメーターは、文字盤の中心寄りに“渦巻状”に設けられています。そのタキメーターの“12時位置”の数字に注目します。渦巻きの外側円は「60」、ひとつ内側が「30」、更に内側が「20」になっています。

タキメーターは“時速”を計る目盛りですので、この数字は「時速○○km」を表します。例えば、1km移動する経過時間を計り、「経過時間が60秒なら“時速60km”」ということです。時計の秒針は1周が60秒ですので、“時速60km未満”を計る場合には、“秒針の2周目以降”も見る必要があります。ちょうど秒針が2周する120秒が、“時速30km”に当たります。この渦巻きタキメーターの外側円に「60」があり、ひとつ内側の円に「30」があるのはそのためです。

 

ゼニスのローズゴールド・エルプリメロは、この“渦巻き”式を採用せず、「秒針の1周目」と「秒針の2周目以降」を分割して2つのタキメーターにしました。そのため、“目盛り”がたくさんある印象のクロノグラフになりました。

 

つまり、ローズゴールド・エルプリメロの文字盤の目盛りを外側から言うと、

 

テレメーター

“秒”・“分”用インデックス

タキメーター(1周目)

“時”用インデックス

タキメーター(2周目/3周目)

 

となります。

そこに、クロノグラフとして必要な“三つ目”、つまりクロノグラフの“時”・“分”積算計とスモールセコンド(通常秒針)が加わり、非常に複雑な構成の文字盤デザインになっています。私は、なんとも魅力的なデザインに感じます。

 

 

非常に複雑なデザインをもつローズゴールド・エルプリメロ。

 

このモデルを、1990年代の名作のひとつに挙げても良いのではないでしょうか!

 

 

 

 

※1・・・エルプリメロについては、過去の投稿「ゼニスの時計には2つの魅力がある!! ~其の一、名機“エルプリメロ”~」をご参照ください。

 

※2・・・「テレメーター」、「タキメーター」については、過去の投稿「クロノグラフによってできることが違う? ~タキメーターなどのメーターの種類と役割~」をご参照ください。

 

 

 

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