29.12.2021
【時計通のみが知るレアな高級時計】「MIH(国際時計博物館)ウォッチ」の第一弾モデル
Komehyo
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ブログ担当者:須川
■【時計通のみが知るレアな高級時計】「MIH(国際時計博物館)ウォッチ」の第一弾モデル
今回は、時計通のみが知る、レアな作品を紹介します。
それは、こちらです。
MIHウォッチ(2005年-)
※第一弾モデル(第二弾も存在します)
こちらは、年産100本程度で、3年間ほど製造されたと言われています。つまり、出回った数は300本ぐらいと想定される時計なのです。
この時計は何なのかと、気になると思います。一言で説明すると、
国際時計博物館(MIH)が企画して作った時計
です。
国際時計博物館というと、スイスのラ・ショード・フォンに1974年に設立された時計博物館で、MIH(Musée international d’horlogerie)と呼ばれています。現在は、4500点を超えるコレクションを管理しているそうです。時計好きの方であれば、時計業界でのアカデミー賞である、「ガイア賞」を主催していることでご存じかもしれません。
そして、MIHウォッチは2005年に発売されます。価格は、5000スイスフランで、売上の一部は国際時計博物館へ寄付されると言われています。しかし、販売場所は、国際時計博物館とスイスの一部の店舗のみでした。購入場所がそこだけだと考えると、日本でこのMIHウォッチを所有している方は、相当な時計好きということになるでしょう。
そして、この時計の凄いところは、「単なる博物館のお土産時計ではない」点にあります。その“内容の豪華さ”が、時計好きの琴線に触れるのです。その“内容の豪華さ”について、以降で説明していきます。
■MIHウォッチは、開発者が豪華!
MIHウォッチは、時計好きにとって見ると内容が豪華です。
まず、MIHウォッチの一番の豪華さは、
開発者が豪華
という点です。
①製品コンセプトとプロトタイプ作成
→ルードヴィヒ・エクスリン博士
②完成形メカニズムの作成
→ポール・ゲルバー氏
③プロダクトデザイン
→クリスチャン・ガフナー氏
この3名が開発に携わっており、時計好きには魅力的に映るでしょう。特に、高名な2人の時計師が協力して作っている点は、凄いことです。まず、ルードヴィヒ・エクスリン博士は、ユリスナルダンの「天文三部作」や「GMT±パーペチュアル」を開発したことで有名な時計師ですが、2001~2014年までMIHの館長を務めた人物としても有名です。当時、館長だっからこそ、エクスリン博士がこのMIHウォッチに関わってくるのです。
↑天文三部作のひとつ「ガリレオガリレイ」
そして、ポール・ゲルバー氏は、名の通った独立時計師で、レトログラードセコンドやマルチローターを考案したアイデア溢れる人物です。フランクミュラーのコンプリケーションに関わったことでも有名で、2003年には「部品点数が世界一多い腕時計」としてギネス認定された時計を作ったことでも有名です。
↑ポールゲルバー「レトロツイン」
この2人の時計師がコンセプトやメカニズムを作り、デザインはクリスチャン・ガフナー氏が手掛けました。ガフナー氏は、インダストリアルデザイナーで、腕時計以外にも、シューズ、バッグ、アイウェアなど、さまざまなものをデザインしています。腕時計では、ポルシェデザインの時計のリデザインにも関わったりしています。また、エクスリン博士の立ち上げたブランド「オックス・ウント・ユニオール」、そして、「ポール・ゲルバー氏の腕時計」のデザインにも関わっていますので、ガフナー氏は、MIHウォッチ以外でも信頼されているようです。
↑ポルシェデザイン「ダッシュボードクロノ」
■MIHウォッチは、斬新なメカニズムが魅力!
MIHウォッチは、内容が豪華と言いましたが、その内容には「メカニズム」も含まれます。
そのメカニズムがもたらす魅力は、
「クロノグラフ」と「アニュアルカレンダー」という複雑機構を、“シンプルな外観”で実現した
という点です。
例えば、「クロノグラフ」というと、一般的には、下のような外観をしています。
↑ロレックス「デイトナ」
そして、「アニュアルカレンダー」は、下のような外観です。
↑パテックフィリップ「アニュアルカレンダー」
これらを見ると、クロノグラフやアニュアルカレンダーは、その機能を表現するために、文字盤内の表示が複雑になります。そして、MIHウォッチは、この「クロノグラフ」「アニュアルカレンダー」という2つの機能を両方持っているのです。普通に考えると、MIHウォッチの文字盤は、複雑な表示になるでしょう。しかし、MIHウォッチの見た目は、極めて“シンプルな外観”をしています。
↑シンプルな外観
この「複雑になりがちな機構を、シンプルにまとめた」点が、MIHウォッチの凄いところです。
そのシンプルさは明らかで、きっと、多くの方がMIHウォッチを見ても、クロノグラフやアニュアルカレンダー機能があるとは思わないはでしょう。しかし、よく見ると、文字盤の3時位置に、「何月、何日、何曜日」の表示がシンプルに入っています。これで、アニュアルカレンダーの要件を満たしています。さらに、その表示の横には、ドット表記があり、これにより「午前/午後」さえも表示します(赤いドットが1つなら午前、2つなら午後)。
また、リューズの隣にはボタンが1つ設けられており、このボタン1つで、クロノグラフの「スタート/ストップ/リセット」を担います。そして、文字盤の中央にある秒針は、クロノグラフの「秒」表示(60秒表示)です。さらに、裏蓋の一部がシースルーになっており、そこに、クロノグラフの「分」表示(30分表示)のディスクがあります。
このように、MIHウォッチは、ディスク表示を上手に使ったり、クロノグラフのボタンを1つにまとめたりして、シンプルな外観を実現しています。
このメカニズムは、ETA7750というクロノグラフムーブメントに、新たに考案されたアニュアルカレンダー部品を組み込み、作られています。しかも、その加えた部品が、わずか9点というから、驚きです。
このように、MIHウォッチは、メカニズムの面でも魅力的なのです。
■最後に
このMIHウォッチは、一部の時計好きには知られた存在です。しかし、多くの方には、知られていない存在でしょう。だからこそ、私は、皆さんに紹介したかったです。
実は、このMIHウォッチは、その後、第二弾が発表されます。それは、2019年の「MIH ガイアウォッチ」です。これは、第一弾のようなアニュアルカレンダークロノグラフではなく、2枚のディスクで時と分を表示する時計です。ただ、この2弾モデルも面白い時計ですが、私はやはり、最初のモデルに魅力を感じます。その理由は、先に述べた通り、開発者の豪華さと、メカニズムの魅力が、よりあるからです。
もちろん、この時計には背後に「国際時計博物館」の存在があり、腕時計からいつでも「スイス」を感じることができます。それも、魅力のひとつかもしれません。実際に、尾錠の裏に面白い仕掛けがあります。それは、
これです。
なんと、裏に、MIHの所在地「47°06’03” N / 06°49’48” E」が刻印されています。このような遊び心も、面白いですね!
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