高級腕時計の時計通信

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5.7.2020

【高級時計をマニアックに知る】「テレメーター」はどんなもの?どうやって使う?

Komehyo

ブログ担当者:須川

 

■【高級時計をマニアックに知る】「テレメーター」はどんなもの?どうやって使う?

 

今回は、高級時計をマニアックに知る企画として、「テレメーター」について説明します。

↑文字盤外周にある目盛りがテレメーター

※画像:ゼニス「パイロットクロノグラフ」

 

おそらく、「テレメーターって何?」と思っている方もいるかと思いますので、少し補足をします。

 

テレメータは、クロノグラフの時計に使われるスケール(目盛り)の一種です。例えば、有名なスケールを挙げると、「タキメーター」があります。タキメーターであれば、多くのクロノグラフで採用されていますので、知っている方も多いでしょう。しかしテレメーターは、タキメーターよりも採用されることが少ないスケールです。きっと、見たことがない方も多いでしょう。

 

そこで、今回は、

 

・テレメーターはどんなものなのか

 

・テレメーターはどのように使うのか

 

について説明させていただきます。是非、最後までご覧ください。

 

 

※以前の投稿で、クロノグラフのスケールの種類を紹介していますので、是非、そちらもご覧ください。

↓↓↓

クロノグラフによってできることが違う? ~「タキメーター」などのメーターの種類と役割~

 

 

 

 

 

 

■テレメーターはどんなもの?どうやって見分ける?

 

では、テレメーターはどんなものなのかを説明します。

↑ヘリテージ テレメータークロノグラフ

(ロンジン)

 

テレメーターは、頭に「遠く」という意味の「テレ(TELE)」が付きます。そのため、勘の良い方は、「“遠く”を知ることのできるメーター」であることを想像するかもしれません。実は、まさにその通りで、テレメーターは「距離を知ることのできる」メーターです。

 

少し冒頭でも触れましたが、テレメーターは「クロノグラフに使われるスケール(目盛り)の一種」ですので、クロノグラフ機能のある時計に採用されます。しかし、クロノグラフに必ず採用されるわけではなく、「テレメータークロノグラフであるかどうか」は、時計を見て判断する必要があります。

 

では、「テレメータークロノグラフであるかどうか」を判断する方法について説明します。これは難しい話ではなく、多くの場合、文字盤(または見返し、ベゼル)に表示される文字で分かります。

 

例えば、その文字は

 

・タキメーター

→「TACHYMETER」

 

・パルスメーター

→「~PULSATION(S)」

 

・テレメーター

→「TELEMETRE(TELEMETER)」

 

などです。

 

これが分かれば、スケールの種類を判断できます。つまり、テレメーターであるかどうかは、時計に書いてある「TELEMETRE」の文字を探して判断してください。

↑「TELEMETRE」の文字

 

 

 

 

 

 

■テレメーターは具体的にどんな場面で使う?

 

ここからは、“テレメータークロノグラフ”をどんな場面で使うかを説明します。

↑カレラテレメーターグラスボックス

(タグホイヤー)

 

テレメーターは、先に紹介したように、「距離を測る」ことができます。しかし、テレメータークロノグラフができる距離計測は、対象物が限定的なので、まずは、その点を説明します。

 

テレメーターが距離を計測できる対象は、

 

「大きな音を発するもの」

 

かつ

 

「遠くから目視できるもの」

 

です。

 

なぜこのような限定的な条件下でしか利用できないかというと、実はテレメーターが、「光と音の速度差を利用して距離を割り出すもの」だからです。そのため、対象物が目に見える必要があり、音が聞える必要があるのです。

 

具体的に、この条件に当てはまるものを考えると、今の私たちが使えそうな場面は、「雷からの距離」や「花火からの距離」ぐらいでしょう。そういう意味でレテメーターは、用途が少ないスケールと言えます。

なぜこのような“用途が限定されたスケール”が存在するのかというと、それは、元々は軍事目的で考案されたものだからです。具体的には、軍事的な攻撃場面で、「“着弾”地点からの距離」を割り出すことを目的に作られたスケールなのです。19世紀以降、実際に使われていたそうです。元々の意図がそのようなものですので、現在の私たちにとって使用シーンが少ないことも、ある意味当たり前かもしれません。

 

現実として、現在のクロノグラフが測る対象は、「速さ」がほとんどです。そのため、現在のクロノグラフのスケールは、速さを測るタキメーターが主流で、テレメーターは採用されることが稀です。つまり、「テレメーターを採用するクロノグラフはレア」なのです。その意味で、“特殊なもの”に興味がある方にとっては、テレメータークロノグラフは面白い選択肢かもしれません。

 

 

 

 

 

 

■テレメーターはどうやって使う?

 

ここからは、テレメーターの使い方を紹介します。

 

前提として、テレメーターはクロノグラフを使用する中で使うものですので、まずはクロノグラフの基本操作を理解していることが重要です。クロノグラフの操作については、以前の投稿にもありますので、参考にしてください。

↓↓↓

【腕時計の基本知識】よく登場する用語「クロノグラフ」とは何のこと? ~クロノグラフの使い方と人気の理由~

 

そしてもうひとつの前提として、「光と音は空気中を進む速さが違う」事実も理解してください。

 

具体的には、

 

音は約340m/秒 

 

光は約30万km/秒

 

で進みます。

 

このように、音と光りは1秒で進む距離が、「約340m」と「約30万km」と、圧倒的な差があります。そのため、例えば私たちが花火を見たとき、「花火の明かりが先に目に届き、遅れて、花火の破裂音が耳に届く」という現象が起こるのです。

 

では、テレメーターの使い方を実際に説明します。イメージしやすいように、「花火からの距離」を例にして説明します。

 

 

<テレメーターの使用手順>

 

1.(花火が見えた瞬間に)クロノグラフの計測スタートボタンを押す

 

2.(花火の破裂音が聞えた瞬間に)クロノグラフの計測ストップボタンを押す

 

3.計測用“秒針”が指し示すテレメーターを読み取る

→このテレメーターの数値が、「花火からの距離」です。距離の単位は、「km」以外に「マイル」のものもあります。

例えば、花火からの距離をテレメーターで計測して、計測用“秒針”が「1」だった場合は、花火から自分のいる位置までの距離が「1km」ということになります。

 

多くのテレメーターの場合、「3秒で1km」「6秒で2km」という対応のスケールになっています。つまり、「約333m/秒」の設定です。これは、先ほど「音は約340m/秒 」と説明したことと少し誤差があります。今回は、「高級時計をマニアック知る」企画ですので、細かな点ですが、この誤差についても補足をしておきます。

↑多くは「3秒で1km」「6秒で2km」のスケール

 

そもそもですが、実際に皆さんがクロノグラフを操作するとき、ボタンを押す“反射速度”はどうでしょうか。先ほどの花火の例なら、花火を見てから、実際には「やや遅れて」ボタンを押していることになるでしょう。また、実は、音が進む速さは気温や気圧によって変わります。例えば音の速さは、気温16度では先ほどの約340m/秒ですが、気温が40度なら約355m/秒、気温が0度なら約331m/秒などと、条件の違いでずいぶん変わります。

 

そのような、“そもそも正確な計測が難しい”現実から、テレメーターの役割を言い表すと、テレメーターは「正確な距離を測るもの」ではなく、おおよその距離を測るもの」なのです。だからこそ、テレメーターのスケール設定もおおよそ合えばよく、“秒の整数”と“kmの整数”が合う、都合のよい「約333m/秒」で設定されているのです。

 

 

 

 

 

 

■最後に

 

今回は、テレメーターについて紹介しましたが、前述の通り、テレメーターはレアな存在です。現在のクロノグラフであれば、あまり実用性はないと思います。

 

それでも、

 

「昔ながらの軍用スケールを再現する」

 

という意図で、ときどきテレメーターを採用するメーカーがあります。

↑マイスターテレメータークロノグラフ

(ユンハンス)

 

もし、メーカーのその意図を汲んで、「敢えてテレメータークロノグラフが欲しい」と思われる方は、是非、テレメーターのモデルを探してみてください。機械式時計は、趣味性のあるものですので、その考えも素敵だと思います!

 

 

 

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※オンラインストアリンク

テレメータークロノグラフ→こちら

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