12.7.2019
【腕時計の基礎知識】「ピンバックル」「フォールディングバックル」とは何のこと? ~尾錠とDバックルのメリット・デメリット~
Komehyo
ブログ担当者:須川
■【腕時計の基礎知識】「ピンバックル」「フォールディングバックル」とは何のこと?
腕時計の製品仕様を確認すると、しばしば
「ピンバックル(尾錠)」
「フォールディングバックル(Dバックル)」
という言葉が登場します。これらは、“腕時計のバンド留め具”の種類を表します。
上の画像の通りですが、腕時計のバンド留め具の種類は、ピンバックルとフォールディングバックルがあります。当然、種類があるのには理由があります。今回は、そのメリット・デメリットも含めて、ピンバックルとフォールディングバックルを紹介します。
■「ピンバックル」、「フォールディングバックル」とは?
まずは、ピンバックルとフォールディングバックルについて解説します。
①ピンバックル
ピンバックルは、「ピン/Pin(留め針)」という言葉からわかるように、穴をピンで通して固定する方式の留め具のことです。日本語で「尾錠(びじょう)」と呼ばれます。
ピンバックルは、昔から普及している方式で、腕時計のベルト留め具の基本的なスタイルです。かつては、革ベルトの腕時計であれば、このピンバックル式を採用していることが多い状況でした。しかし、最近はフォールディングバックルも増えているため、現在はピンバックル式が主流とも言えなくなってきています。
では、ピンバックルの実際の使い方を紹介します。
こちらは、“腰に巻くベルト”でよく採用される留め方ですので、わかりやすいと思います。6時側のベルトにいくつか穴を開けておき、12時側のベルト先にある尾錠のピン(つく棒)をその穴に通して固定する方式です。ピンをつける穴の位置を変えれば、簡単に腕周りサイズを変更できるので、ユーザーには有り難い方式です。
②フォールディングバックル
フォールデングバックルは、「フォールディング/folding(折りたたみ)」という名の通り、折りたたみ式の留め具です。別名、ディプロイメントバックル(Dバックル)と呼ばれます。こちらの名称では、「ディプロイメント/deployment(展開する/広げる)」という表現が使われています。つまり、「折りたたんだり、広げたりするもの」であり、「開閉式の留め具」と意訳できます。
フォールディングバックルは、20世紀初頭にカルティエの「サントスウォッチ」に採用されたことが有名で、カルティエの十八番とも言える方式です。かつては、複雑な作りであることもあり、マイナーな存在でした。しかし、工作機の発達により製造の難易度も下がり、現在では実用性の高さから、多くの腕時計に採用されるようになりました。
こちらも、実際の使い方を紹介します。
上の画像のように、“くの字”に2つ折りされている留め具を開くことで、腕周りサイズを大きくして、手首から着脱する使い方をします。“2つ折り”タイプ以外に、観音開きの“3つ折り”タイプもあります。留め具の開け方にも種類があり、「ボタンを押して開けるタイプ」と「力で引っ張り開けるタイプ」があります。
フォールディングバックルは、革ベルトよりメタルバンドの方でシェアを占めています。ロレックスを筆頭に、ほとんどのメタルバンドにはフォールディングバックルが採用されています。
↑多くのメタルバンドに採用される
■ピンバックルとフォールディングバックルのメリット・デメリット
次に、ピンバックルとフォールディングバックルのメリットとデメリットを紹介します。
<ピンバックル(尾錠)>
①メリット
・留め具の大きさがコンパクトであるために、手首周りがすっきりとした印象になる
・留め具が厚くないので、デスクワークなど腕を机に乗せる際に、手首の内側への負担が少ない
・デザイン的に、クラシックモデルと相性が良い
・フォールディングバックルよりも、価格が安い
・毎回、ピンを任意のベルト穴へ入れて固定するので、腕周りサイズの変更が容易
②デメリット
・革ベルトの場合、留め具をつけるたびに穴にピンを通すので、革への負担が大きい
・ピンを穴に通す作業は、フォールディングバックルに比べると手間がかかる
・ピンを穴に通す作業をする際に、手が滑って時計を落とすリスクがある
<フォールディングバックル(Dバックル)>
①メリット
・革ベルトの場合、毎回、ベルトの穴を通さないので、革への負担が少ない
・開け閉めだけで着け外しができるので、ピンバックルに比べると、着け外しが楽
・ピンを穴に通す作業がないので、手が滑って時計を落とすリスクが少ない
・サイズの大きなモデルと相性が良い
②デメリット
・留め具に大きさがあるため、手首周りがボリュームのある印象になる
・留め具に厚みがあるので、デスクワークなど腕を机に乗せる際に、手首の内側で留め具が邪魔に感じることがある
・ピンバックルよりも、価格が高い
・留め具は常に固定してあるので、腕周りサイズの変更に手間がかかる
上で挙げたものが、ピンバックルとフォールディングバックルのメリットとデメリットです。ただ、「クラシックモデルと相性が良い」「サイズの大きなモデルと相性が良い」という点がわかり難いかもしれませんので、補足させていただきます。
クラシックモデルは、フェイスサイズが小ぶりです。小ぶりサイズのために、クラシックモデルは、少し華奢(きゃしゃ)に見えると思います。“華奢な”クラシックモデルに、“大きさのある”フォールディングバックルを合わせると、デザインバランスがおかしくなります。そのため、ピンバックルの方が、クラシックモデルによく合います。
逆に、大きなサイズのモデルには、デザインバランスとしても、大きさのあるフォールディングバックルが合います。
さらに、重さのバランスもあります。フェイスサイズが大きな時計は、もちろん、フェイス部分が重くなります。フェイス部分が重い腕時計の場合、装着時にその反対側にあるベルト留め具が軽いとバランスが悪く、「フェイス部分だけが過度に下に下がる」現象が起こります。そのため、フェイスが重い腕時計には、より重量のあるフォールディングバックルの方がベターです。
■最後に
今回は、腕時計のベルト留め具の2つの種類「ピンバックル」と「フォールディングバックル」を紹介しました。
時計通の方は、“留め具”にも関心をもっており、「ピンバックルかフォールディングバックルか」を気にすることがあります。例えば、IWCのポルトギーゼクロノグラフは、新旧の違いがピンバックルとフォールディングバックルであることでも有名です。
↑ポルトギーゼクロノグラフ
さらに、パテックフィリップの場合は、革ベルト用のフォールディングバックルに、2つのデザインがあります(※スポーティモデルを除くと)。愛好家の方は、「こちらのフォールディングバックルが好き」といった具合に、好みが分かれるのです。
↑パテックフィリップのDバックルは種類がある
やはり高級時計において、“留め具”は興味の対象なのです。皆さんも、是非、腕時計の留め具に注目してみてください!
※おすすめ記事
TAGLIST
- A.LANGE&SOHNE
- , AUDEMARS PIGUET
- , Bell&Ross
- , BLANCPAIN
- , Breguet
- , BREITLING
- , BVLGARI
- , CARTIER
- , CASIO
- , CHANEL
- , CHOPARD
- , CITIZEN
- , F.P.JOURNE
- , FRANCK MULLER
- , G-SHOCK
- , Girard-Perregaux
- , Glashütte Original
- , HAMILTON
- , HERMES
- , HUBLOT
- , IWC
- , Jaeger-LeCoultre
- , Longines
- , MAURICE LACROIX
- , MORITZ GROSSMANN
- , NEXT VINTAGE
- , NOMOS
- , OMEGA
- , ORIS
- , PANERAI
- , PATEK PHILIPPE
- , PIAGET
- , RICHARD MILLE
- , ROLEX
- , SEIKO
- , SINN
- , SWATCH
- , TAG HEUER
- , TISSOT
- , TUDOR
- , Ulysse Nardin
- , VACHERON CONSTANTIN
- , VINTAGE
- , ZENITH
- , その他
- , パテックフィリップ
- , ファッション
- , 人物
- , 時計一般知識
- , 独立時計師
- , 筆記具
- , 革靴
more
-
NEXT ARTICLE
次の記事へ
19.7.2019
【ロレックスのレア品を紹介】エクスプローラーⅠ「ブラックアウト」とは?
-
PREVIOUS ARTICLE
前の記事へ
24.6.2019
実用性バツグン。使いやすいLAMYの筆記具