21.12.2018
分かりやすいロレックスの用語集(後編) ~ロレックスの専門用語を解説~
Komehyo
ブログ担当者:須川
※前回の投稿
「分かりやすいロレックスの用語集(前編) ~ロレックスの専門用語の使い方~」
上にリンクを設けた前回の投稿では、「ロレックスの専門用語の必要性や使い方」を紹介しました。
その中で、“ロレックス用語”を理解することによって、「機能」「外観」「製造年」の違いを把握することができ、例えば「価格差の理由が分かる」というような役立ちがあることを紹介しました。
今回は、さらに踏み込んで、ロレックスの専門用語を解説していきます。
是非、最後まで読んでみてください。
■皆さんが覚えるべきロレックス用語とは?
では、ロレックスの専門用語、“ロレックス用語”を解説していきます。しかし、そのロレックス用語もたくさんありますので、この投稿の中で全部を紹介することはできません。そこで、優先的に覚えるべきロレックス用語を設定します。
今回私は、“新旧”を理解するために有用なロレックス用語を、覚えるべき用語にさせていただきます。なぜなら、そのロレックスが「古いか、新しいか」という点は、中古価格にも影響します。そのため、この要素は実際に使う場面が多いのです。
イメージしやすいように例を出しましょう。例えば、皆さんが普段使っている「10円玉」には、「ギザ10」という専門用語があります。これは、過去に存在した「縁がギザギザした10円玉」を指しています。つまり、10円玉にも仕様違いがあるのです。
ここで私が言いたいのは、「10円玉にも違いがある」という事実に気付くには、「ギザ10」という用語を知っていることが近道になるということです。そしてもし、ギザ10が「1950年代に作られた」という知識があれば、「古いものである」ということにも思い至るでしょう。実際は10円玉には製造年が入っていますので、硬貨を読めば年代の特定は可能です。ただ、その用語を知っていることで、より簡単に「古いものである」と判断できるのです。
ロレックスも同じです。「ギザ10」のように、“仕様の違いを把握できる専門用語”を知っていれば、新旧が瞬時に判断できるのです。
例えば、上の画像では、「トリチウム」「ルミノバ」という専門用語を持ち出しました。これも“仕様の違いを把握できる専門用語”です。これは夜光塗料に関する用語ですが、「旧:トリチウム、新:ルミノバ」という知識があれば、新旧の違いが容易に判断できるのです。
■“仕様の違いを判断できる”ロレックス用語を解説!
ここからは、“仕様の違いを把握できる”ロレックス用語を解説していきます。例えば歴史の授業も、最初に年表を見て、「全体を俯瞰する」ところから始めると思います。私の解説も同じようなイメージで、“仕様変更の全体像”を把握するところから始めたいと思います。
下に、1970年代以降の「スポーツロレックスの認識すべき変遷」のリストを用意しました。このリストは、“上の方が過去”、“下の方が現在”となっており、時系列で“当時の仕様”をリストアップしたものです。今回は分かりやすくするために、皆さんの多くが憧れるスポーツモデルに絞り、まとめさせていただきました。
これが、“仕様変更の全体像”です。ただし、今回、割愛した変更点もあります。それは、「モデルチェンジ(型式変更)時の変更点」です。なぜなら、それは当たり前な要素だからです。つまり、ここで取り上げた変更点は、主に「同じ世代(型式)のモデルで起こる変更点」ということです。
※リストに登場する「5桁」「6桁」という用語は以前の投稿で解説しています。ご参照ください(ロレックスの型式の知識)。
では以降で、それぞれの用語を解説していきます。
1.風防(ふうぼう)
※風防とは、いわゆる「ガラス部」のことです。
<覚えるべき新旧仕様>
①プラスチック風防(~1990年前後)
②サファイアガラス(1990年前後~)
③サファイアガラス(透かし王冠あり、2000年前半~)
※年代はおおよその目安です
プラスチック風防を採用する世代は、世間で“ヴィンテージロレックス”というイメージを持たれています。
そして、現代の主流であるサファイアガラスは、より傷に強く、透明度の高い素材です。詳しくは過去の投稿で紹介していますので、ご参照ください(サファイアガラスとは?)。
また、2000年~2003年ごろにかけて、サファイアガラスの6時位置には、“透かし王冠”が入るようになります。これは、偽造防止のためと言われており、レーザーで王冠マークを刻まれるのです。ただし、ガラス交換をする場合もありますので、2000年より古いモデルに透かし王冠が入っていることもあり得ます。
↑透かし王冠(ある角度で見える)
2.夜光塗料
<覚えるべき新旧仕様>
①自発光(トリチウム、~1990年代後半)
②蓄光(ルミノバ、1990年代後半~)
→蓄光(クロマライト、2007年~)
基本的にロレックスのスポーツモデルは、針やアワーマーカーなどに夜光塗料が塗布されています。その夜光塗料にも種類があります。
「光を蓄え、蓄えた分だけ光る夜光塗料」が、蓄光塗料の「ルミノバ」です。正確には「スーパールミノバ」や「N夜光」と呼びますが、今回は「ルミノバ」と表現します。この蓄光のタイプは1990年代後半ごろに登場します。理論上、半永久的に使える夜光塗料です。
ルミノバ文字盤の6時位置には、
「SWISS」
「SWISS MADE」
と印字されます。
蓄光塗料が登場する前は、「トリチウム」と呼ばれる自発光の夜光塗料でした。これは、「光を蓄えなくても光る夜光塗料」です。その代わりに、寿命があります。12年ぐらい経過すると、変色が起こり、ほとんど光らなくなります。
トリチウム文字盤の6時位置には「T」表記が入り、
「SWISS-T<25」
「T SWISS-T<25」
「T SWISS T」
「T SWISS MADE T」
「T SWISS < 25 T」
と印字されます。
基本的には「トリチウム」と「ルミノバ」を理解できれば十分ですが、実は、「クロマライト」という種類も存在します。これは現在の最新の夜光塗料で、“ルミノバの高性能版”です。「ルミノバ→クロマライト」という変更は、116710LNなどを除けば、ほとんどが“モデルチェンジ(型式変更)時”に起こっています。そのため、“同じ型式内の仕様変更”という意味では、それほど重要度は高くありません。
3.ルーレット刻印
<覚えるべき新旧仕様>
①無地(~2000年代半ば)
②ルーレット刻印(2000年代半ば~)
2000年代にロレックスは、見返し(文字盤の外周にある“壁”部)にシリアル番号を刻印するようになります。これを、「ルーレット刻印」と呼んでいます。それまでは見返しが無地だったため、分かりやすい変更点と言えるでしょう。
4.横穴
<覚えるべき新旧仕様>
①横穴(~2003年ごろ)
②横穴なし(2003年ごろ~)
※横穴の有無、横穴がなくなる時期は、モデルによって異なります。ただし、変更が起こるモデルは、2003年ごろに横穴をなくしたモデルが多いです。
5.ブレスレット
<覚えるべき新旧仕様>
①リベット(~1960年代半ば)
②巻き(1960年代半ば~)
③ハード(シングルバックル、1970年代半ば~)
④ハード(ダブルバックル、1990年代半ば~)
⑤現行(サテンクラスプ、2010年前後~)
⑥現行(鏡面クラスプ、2015年~現在)
※年代はおおよその目安です
スポーツロレックスのブレスレットは、「オイスターブレス」と呼ばれる、3列コマのタイプが基本です。種類は以下の通りです。
・リベットブレス
→側面にリベット(鋲/びょう)がある
・巻きブレス
→側面を見ると、巻き込んだ板状である
・ハードブレス
→側面を見ると、マイナスネジが見える
リベットブレスや巻きブレスはヴィンテージ時代の仕様です。サイズ調整のたびに変形が伴い、“たわみ”も大きなタイプです。ハードブレスになってからたわみが軽減され、サイズ調整もネジを外すだけでできるようになりましたので、実用性が大きく向上しました。
そして、ハードブレスにはマイナーチェンジがあります。最初は、シンプルな留め具のシングルバックルでした。しかし、意図しないタイミングで留め具が外れるリスクもありましたので、途中からロック機能が付いたダブルバックルに変更になりました。
・シングルバックル(シングルロック式)
→留め具がシンプルな被せ式
・ダブルバックル(ダブルロック式)
→留め具を被せた後に、さらに、もう一つの留め具でロックする
そして現在は、ハードブレスが現行のオイスターブレスに変わっています。
・オイスターブレス(オイスターロック式/現行)
→現在の最新のブレスは、下の画像のように、より剛性のあるタイプになっています。
↑左:現行ブレス、右:旧ハードブレス
現行のブレスは、より強固な作りになっていますが、重量がかなり増えた印象です。2015年ごろからは、留め具を開けた部分の見た目が変更となります。光沢のない“サテンクラスプ”から、光沢のある“鏡面クラスプ”に変更となりました。
↑2015年のクラスプ仕様変更
6.フラッシュフィット(弓管、FF)
<覚えるべき新旧仕様>
①分離型(~2000年前後)
→ブレスとフラッシュフィットの間に、“繋ぎの部品”がある
②一体型(2000年前後~)
→ブレスとフラッシュフィットが、直接繋がっている
まず基本的な話ですが、時計本体ケースとブレスレットの“繋ぎ目の部品”は「弓管」と呼びます。しかし、ロレックスは「フラッシュフィット(FF)」と呼んでいます。このフラッシュフィットの構造が変更になるのです。その変更の時期は、先のブレス変遷で言うと「ハードブレス」の時期です。つまりこの変更は、ハードブレスのマイナーチェンジの一種であり、「ブレスとフラッシュフィットを“一繋ぎ”にしよう」という発想から行われたものです。
元々のフラッシュフィットは分離型タイプで、ある程度のブレスの“遊び(たわみ)がありました。しかし一体型になった新タイプは、直接繋がるようになったため、ブレスの“遊び(たわみ)”が軽減されました。
■2010年以降、重要度を増したのは「保証書」!
ここまでは、“時計本体の仕様変更”に焦点を当てていましたが、ここからは付属品である「保証書」が登場します。
7.保証書
<覚えるべき新旧仕様>
①グリーンギャラ(以前の旧保証カード、~2014年)
②ホワイトギャラ(現行の保証カード、2014年~現在)
※2020年に、新しいタイプの保証書に切り替わりました。そのため、現行の保証カードは下の画像のものです(2020/7/14加筆)。
↑2020年からの新しい保証カード
急に付属品の話となりますので、ちょっと補足させてください。先に述べましたが、ロレックスの仕様変更を把握する目的のひとつは、「新旧を把握するため」です。なぜなら、「古いか、新しいか」という点は、中古価格にも影響するからです。ただし、ロレックスは“シリアル番号の法則”から、より細かな製造年を特定できます。つまり、ロレックスの「古いか、新しいか」は、“仕様変更”と“シリアル番号の法則”の両軸で判断ができるのです。
しかし2010年以降は、“シリアル番号の法則”がなくなってしまいました(ランダム品番の登場)(※1)。そのため、シリアル番号では「2010年~現在」という大まかな特定しかできません。そこで、「2010年~現在」という幅を狭める手がかりとして、“仕様変更”の重要性が一層高まりました。そこで注目されているのが、先に紹介した「サテン→鏡面クラスプ(2015年)」という仕様変更です。
そして「2010年~現在」の幅を狭めるもう一つの手がかりとして、“保証書”が重要視されています。2010年以降に限定するのであれば、ロレックスの保証書はカード式です。以前は緑色を基調とした「グリーンギャラ」でしたが、2014年以降は大部分に白色を配色した「ホワイトギャラ」になっています(表面の話です。裏面は色が異なります)。
そして、そもそも保証書には“購入日”の記載欄があります。そのため、より具体的に「古いか、新しいか」が特定できるのです。もちろん、“製造された年”と“販売された年”はイコールではありませんが、大きな手がかりになります。
■最後に
今回、たくさんの“ロレックス用語”を説明しました。全部理解する必要まではありませんが、大まかなイメージが掴めれば十分だと思います。
ここで、練習問題を出しましょう。
下の画像のモデルは、以下の特徴があります。
・ラグに横穴がある
・文字盤6時には「SWISS MADE」と印字されている
・フラッシュフィットは分離型である
製造年は、いつ頃だと推測できるでしょうか?
(答え)
1990年代後半~2000年ごろ
夜光塗料が「ルミノバ」ですので、「1990年代後半以降」だと推測できます。
フラッシュフィットが分離型ですので、「2000年ごろより前」と推測できます。
練習問題、いかがでしたか?分かるようになれば、ロレックスの見方が変わると思います。
最後に、注意点を追加しておきます。サブマリーナの“日付無しモデル”は、仕様変更があまり行われない“例外的な存在”です。これについては、過去の投稿で紹介しています(ロレックス2種類のサブマリーナどっちを選ぶ?)。このモデルが“例外的な存在”であることも、今回紹介をしたことが基本知識にあれば、より分かることでしょう。
皆さんも、是非、“ロレックス用語”を頑張って“覚えてみてください!
※1・・・シリアル番号については、過去の投稿でも紹介しています。是非、ご覧ください。
↓↓↓
「生まれ年のロレックスを選ぼう ~シリアル番号(製番)から製造年を調べる~」
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