6.12.2018
なぜジャガールクルトの「ビッグレベルソ」は傑作と言われるのか?
Komehyo
ブログ担当者:伊達
ジャガールクルト(Jaeger-LeCoultre)には、「レベルソ」という人気モデルがあります。
そのレベルソには様々な種類があるのですが、日本の時計愛好家からしばしば傑作と評価されるレベルソがあります。
それが、「ビッグレベルソ」です。
↑ビッグレベルソ(左:表面、右:裏面)
もちろん、このビッグレベルソが傑作と評価されるのには、ちゃんと理由があります。その理由は、「絶妙なサイズだから」です。
「えっ、そんな理由?」と思われるかもしれませんが、“サイズ”を侮ってはいけません。実は私も、自分の時計選びの時に、かなりサイズを気にして選びます。なぜなら、サイズ感は“センスの見せ所”だからです。
例えば、洋服をお洒落に着こなしている人は、サイズにこだわりを持っています。そのため、その方々はミリ単位にこだわって裾直しをするような行動をするのです。彼らがお洒落でかっこよく見えるのは、そのようなサイズへのこだわりの結果なのです。
時計においても、同じことが言えます。例えば、細身の人が大きな時計していても不恰好ですし、体格の良い方がユニセックスサイズの時計をしていても不恰好です。つまり、センス良く腕時計を着けている人は、基本的にサイズのマッチングが上手なのです。
そして、日本の時計愛好家がレベルソを選ぶ際に、その方々の洗練された感性では、ビッグレベルソこそがしっくりとくるサイズなのでしょう。だからこそ、「傑作」という声が上がるのだと思います。
では以降で、ビッグレベルソの絶妙なサイズ感について解説しましょう。
■「ビッグレベルソ」はどんなモデル?
ではまず、ビッグレベルソについての理解を深めるところから始めましょう。
↑ビッグレベルソ
「ビッグレベルソ」は1992年に登場します。ビッグレベルソには「ビッグ(大きい)」という表現があることからも分かりますが、「“従来のレベルソ”より大きいレベルソ」ということです。このビッグレベルソが登場したことにより、従来のレベルソは「伝統的なサイズ」という感覚となり、「レベルソクラシック」と表現されているのです。その後、ビッグレベルソよりもさらに大きな「グランドレベルソ」が登場し、ビッグレベルソは“男性用の中間サイズ”という立ち位置になります。
レベルソクラシック(小)
↓
ビッグレベルソ(中)
↓
グランドレベルソ(大)
もちろん、さらに小ぶりな女性用の「レベルソレディ」も存在しますが、紳士用は、最近まで上のようなサイズ感で展開されていました。
つまり、ビッグレベルソは過去の製品展開から見ても、「小さ過ぎず、大き過ぎず」という存在なのです。
この絶妙なサイズのビッグレベルソですが、2016年の“レベルソのラインナップ刷新”により、生産終了となりました(詳しくは過去の投稿をご覧ください(⇒こちら)。現在は、ビッグレベルソと同じようなサイズのレベルソはありますが、まったく同じというわけではありません。そのため、ビッグレベルソのサイズ感は現行モデルにはないものとなります。
■ビッグレベルソが傑作である理由は、絶妙なサイズ感!
では、ここからが本題です。つまり、「なぜビッグレベルソは傑作と言われるのか」という点についてです。これは、冒頭でも書きましたが、「絶妙なサイズだから」です。ここでは、そのビッグレベルソの「絶妙なサイズ」を分かりやすく説明するために、他のレベルソと比較してみます。
<“ビッグレベルソ”と“その他のレベルソ”を比較>
では、ビッグレベルソとその他のレベルソのサイズを比較してみましょう。ビッグレベルソは手巻式ですので、今回の比較は、他の“手巻モデル”のレベルソを対象にしました。
まずは、下の画像で、ビッグレベルソのサイズを表しています。ここで縦横の長さを示しましたので、計算で面積を割り出すことができます。そこで、イメージしやすいように、「“同じ面積のラウンドウォッチ”があった場合のサイズ」を算出しておきましょう。ビッグレベルソの面積であれば、ケース径が「約37.4mm」ぐらいのラウンドウォッチが相当するサイズです。このサイズを基準として、他のレベルソのサイズも見てみましょう。
↑基準となるビッグレベルソ
・比較① :レベルソクラシック(男性用の最小サイズ)
「男性用の最小サイズ」のレベルソクラシックとの比較です。伝統的なサイズではありますが、今の私達の感覚からすると、やはり少し小ぶりに感じます。もし同面積のラウンドウォッチがあれば、「約33.6mm」径の時計となります。
具体的なサイズの違いを見ましょう。レベルソクラシックは、ビッグレベルソよりもケースの横幅が約3mm小さいサイズです。この感覚を例えるちょうど良い例があります。それは、10円玉と500円玉です。この2つの硬貨もちょうど3mmほど直径が違うのです。
しかも、具合の良いことに、
「レベルソクラシックの横幅≒10円玉の直径」
「ビッグレベルソの横幅≒500円玉の直径」
なのです。
皆さんも10円玉と500円玉のサイズを比較すると、「かなり500円玉の方が大きい」と感じるのではないでしょうか。レベルソクラシックとビッグレベルソには、それと同じイメージのサイズの違いがあるのです。その“現代風ではないサイズ”のために、レベルソクラシックは「ヴィンテージウォッチのようなレベルソ」というイメージになるのです。
・比較②:グランドレベルソ976(男性用最大クラス)
次に、「男性用最大クラス」のグランドレベルソ976とも比較しましょう。グランドレベルソ976は、ビッグレベルソよりケースの横幅が約4mm大きいです。これはかなり大きいと感じます。もし同面積のラウンドウォッチの時計があれば、「約42.9mm」径の時計となります。
角型ウォッチとしては、そのサイズ感を文章で伝えるのは簡単ではありませんので、身の周りのもので同じサイズ感のものを探してみました。
すると、ちょうど“ホッチキスの替え芯の箱”が近いサイズでした。
もし皆さんの近くに“ホッチキスの替え芯の箱”があれば、是非、腕の上に乗せてみてください。きっと、かなり大きく感じるでしょう。そのサイズのため、グランドレベルソ976の印象は「迫力のあるレベルソ」という感じなのです。
・比較③:レベルソクラシック・ミディアム(近いサイズの後継機種)
最後に、「近いサイズの後継機」であるレベルソクラシック・ミディアムと比較してみます。レベルソクラシック・ミディアムは、縦横サイズ比はビッグレベルソとおおよそ同じです。もし同面積のラウンドウォッチがあれば、「約37.3mm」径の時計となります。
ただし、厚みが違います。レベルソクラシック・ミディアムは、ビッグレベルソより薄くなり、「9.3mm→7.5mm」になりました。
その厚みの変化により、かなり「スタイリッシュなレベルソ」になった印象です。ビッグレベルソは“丸み”や“膨らみ”を感じるケースデザインでしたが、レベルソクラシック・ミディアムは“平たんさ”を感じるケースデザインになりました。
結果、レベルとクラシック・ミディアムに対する私の評価は、薄くなったことにより“カジュアルさ”がなくなり、より「ドレスウォッチ寄りデザイン」になったと感じます。
<まとめ>
ここまでの他モデルとの比較から、ビッグレベルソの特徴を炙り出します。
他モデルの印象は以下のようでした。
・レベルソクラシック
→ヴィンテージウォッチのような、「小ぶりな印象」
・グランドレベルソ
→迫力があり、「大ぶりな印象」
・レベルソクラシック・ミディアム
→薄さがあり、「ドレスウォッチ感が強い印象」
これを見ると、他のレベルソは分かりやすい特徴、言い換えると、“ある種の癖(くせ)の強さ”があります。ここが重要です。
つまり、ビッグレベルソは“変に癖がない”のです。
私が感じる「レベルソを選ぶ人」の印象ですが、どちらかというと、“やや細身の方”がレベルソを選ぶイメージがあります。そして、その方々は、完全なドレスウォッチが欲しいのではなく、ある程度「日常使いをしたい」と考えている節があります。
そのような方のニーズに、ビッグレベルソは上手く応えてくれます。例えば、ビッグレベルソは、大きさも「大き過ぎず、小さ過ぎず」です。特に、レベルソはアールデコ調のクラシックな時計なので、大きさが小ぶりになると、「ザ・クラシック」という印象の渋い時計になってしまいます。さらにビッグレベルソは、厚みも「薄過ぎず、厚過ぎず」です。ある程度の厚みがあることによって、デザインに「多少のカジュアルさ」を感じることができるのです。
つまり、デザイン的に“普段使いしやすいレベルソ”という点が、ビッグレベルソの大きな魅力です。
これが、「傑作」と言われる理由なのだと思います!
※おすすめ投稿記事
「【世界に500本しかない歴史的名作】ジャガールクルト「レベルソ トゥールビヨン」(レベルソ コンプリカシオン第2弾)」
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