17.4.2015
オメガの強みとは何か? ~スウォッチグループとオメガのパイオニア精神~
Komehyo
ブログ担当者:須川
「オメガ(OMEGA)の知名度はロレックスに匹敵している」
と、私は考えています。
そもそも昔の日本では、ロレックスよりもオメガやロンジンの方が馴染みのあるメーカーだったと聞きます。ただ、オメガも時代とともに変化しているのです。つまり、「かつてのオメガ」と「現在のオメガ」ではイメージが異なります。
↑オメガの代表作のスピードマスター
「かつてのオメガ」は、高レベルな自社ムーブメントの技術を武器に、天文台コンクールで好成績を収めていました。そして、その技術を普及版の実用時計にも還元し、ユーザーからの信頼を勝ち取っていた印象があります。では、「現在のオメガ」の強みはどこにあるのでしょうか? 下に、私が考えるオメガの2つの強みを挙げます。
<現在のオメガの強み>
①所属する「スウォッチグループ」
②オメガの持つ「パイオニア精神」
①から解説します。オメガは時計業界内で最も大きなコングリマリットであるスウォッチグループに所属しています。スウォッチグループ内にはたくさんの時計メーカーが属しており、その時計メーカー各社は切磋琢磨しています。しかし、ムーブメントや部品の供給などは、グループ内で戦略的に協力関係を作っていると思われます。 下に、スウォッチグループ内のムーブメント関連の協力関係の例を挙げます。
<主なスウォッチグループ内のムーブメント関連供給会社>
・ETA社
→ムーブメント供給
・旧レマニア(現ブレゲ内)
→ムーブメント供給
・旧フレデリックピゲ(現ブランパンマニュファクチュール)
→ムーブメント供給
・ニヴァロックス-FAR社
→ヒゲゼンマイなどムーブメント部品供給
上の供給会社からのサポートはオメガの優位性の源泉になっています。もちろん上の各社はグループ外メーカーにも供給していますが、スウォッチグループ内の時計メーカーにとっては上の各社と連携やコスト面での協力関係があることが大きな武器になります。なぜならば、上に挙げた各社は、スイスの時計業界のムーブメントなどの供給において大きなシェアをもっているからです。「スイス内にこれらに勝る供給元はない」と言えるほどの供給元が、スウォッチグループに集中していることは凄いの一言です。
スウォッチグループといえば、オメガ以外に「スウォッチ」、「ブレゲ」、「ブランパン」、「ロンジン」、「ラドー」、「グラスヒュッテ・オリジナル」、「ジャケドロー」、「ハミルトン」などが所属しています。この中でオメガは、グループ内の最重要メーカーであり、オメガに対してグループの戦略的な協力が厚いであろうことが想像できます。
<オメガのムーブメントがグループ内の協力を受けている例>
・オメガの自社ムーブメントCal.8500系
→ETAの全面バックアップ
・Cal.1120や2500など
→ETAムーブメントがベース
・Cal.3300系
→旧フレデリックピゲとの共同開発(FP1185のノウハウ投入)
・Cal.1861
→レマニアベースのムーブメント
オメガの主要ムーブメントには上の例のように、各社の協力があることが分かります。
オメガは昔から“高精度な実用時計”として世界に認識され、今の地位を確立しています。その地位を維持するためには、ムーブメントの信頼性は絶対条件としてオメガには必要です。そんなオメガにとって、グループ内にムーブメント専門会社があり、それらと協力できるメリットは非常に大きいといえます。信頼性のあるムーブメント供給元を他のライバルメーカー達よりも有利な条件で使えるオメガは、時計業界で明らかに優位に立っています。
オメガが優位な立場にある好例として、「コーアクシャル脱進機(※1)」の採用があります。この機構は、他の時計メーカーは採用を見送ったのですが、オメガは採用を決断しました。そして、ただ採用しただけではなく、それを量産機ムーブメントで実現させた事実はがあります。これが実現できたのは、スウォッチグループというバックボーンがあるからに他なりません。
また、このコーアクシャル脱進機採用の根底にあるものは、「現在のオメガの強み②」として前述した、オメガの持つ「時計メーカーとしてのパイオニア精神」です。コーアクシャル脱進機の件も、オメガが業界の先導をする立場であることを証明するための矜持であると感じます。
■最後に
新しい発明を“一部の高額モデル”に投入して、「こんなこともできますよ」と、メーカーの開発力アピールにすることはよくあります。しかしオメガのように、新しい発明を“一般モデル”にまで落とし込んでしまうメーカーは多くはありません。発明王エジソンも、「発明の普及」という結果があったからこそ評価されているのです。
私がオメガを偉大なメーカーだと評価するのは、オメガが「発明の普及」を重要視しているであろうと感じるからです。
普及した結果があってこそ「パイオニア」と呼べるのではないでしょうか。 オメガの「時計メーカーとしてのパイオニア精神」と「スウォッチグループの総合力」が加わったコーアクシャル脱進機は、今ではオメガの代名詞として存在しています。
↑マスターコーアクシャル搭載モデル
※画像は「シーマスター300」
そして、オメガがこれから普及させようとしている「マスターコーアクシャル(※2)」は時計業界にとって衝撃のイノベーションです。もちろんオメガは今回もユーザーにとって購入し得る価格で供給を開始しています。オメガの強みが存分に発揮された今回の「発明」は、時計業界の歴史の大きなハイライトになりそうな気がしています。これからのオメガに目が離せません。
※1・・・1974年にジョージ・ダニエルズ博士が考案。2枚のガンギ車を同軸上に配置することでガンギ車歯先にかかる摩擦を最小限に抑える発明。脱進機への注油メンテナンスを減らすソリューション。
※2・・・コーアクシャル脱進機+耐磁ムーブメント。通常の耐磁時計はムーブメントまで磁気が到達しないようにするが、オメガはムーブメント自体に耐磁性能を持たせた。
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