14.8.2015
ランゲ&ゾーネが強調する数字「1815」の意味とは? ~アドルフ・ランゲの功績~
Komehyo
ブログ担当者:須川
時計が好きな方であれば、「時計の聖地」と言われるといくつかの地域が思い浮かぶと思います。スイスのジュネーブやジュウ渓谷、ドイツのグラスヒュッテなどが真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか?その「時計の聖地」の一つであるグラスヒュッテで活躍するメーカーがランゲ&ゾーネ(A.LANGE&SOHNE)です。
ランゲ&ゾーネの代表モデルと言えば「ランゲ1」ですが、その他にも「ダトグラフ」「サクソニア」「1815」「アーケード」「ランゲマティック」「リヒャルトランゲ」「ツァイトベルク」などがあります。その中でも数字のモデル名である「1815」というモデルは、私たちに「何の数字かな?」と想像させるモデルです。ランゲ&ゾーネの創業年は1845年ですので、創業年とは関係ありません。今週はランゲ&ゾーネが強調する数字「1815」について考えてみたいと思います。
↑代表作の「ランゲ1」
■ランゲ&ゾーネとは?
フェルディナント・アドルフ・ランゲ(F.A.ランゲ)が1845年にドイツのグラスヒュッテに興した時計工房が「A・ランゲ・ドレスデン」です。その後、息子のリヒャルト・ランゲ(長男)やフリードリヒ・エミール・ランゲ(次男)も参加し、「A・ランゲ&ゾーネ・ドレスデン」に商号を変更します。「ゾーネ」は「息子たち」という意味であり、アドルフ・ランゲの息子たちと共に工房を発展させようという意図が見えます。
数々の優れた懐中時計を世に送り出し、ランゲ&ゾーネは高い名声を得ます。しかし、永世中立国のスイスと違い、ドイツにあるランゲ&ゾーネは戦争の影響を大きく受けてしまいます。空襲によって工場を失っただけでなく、戦後の1948年にはグラスヒュッテ国営時計会社に統合されて、国営化されてしまいます。
ランゲ&ゾーネ復興を願うアドルフ・ランゲの曾孫にあたるヴァルター・ランゲは、紆余曲折はありましたが、ベルリンの壁崩壊の翌年の1990年にA.ランゲ & ゾーネを再興します。そして、復興後の最初の作品として1994年に登場した「ランゲ1」の成功から現在の地位に至る快進撃が始まります。今ではパテック・フィリップとも肩を並べることのできるブランドになりました。
■「1815」の意味は?
「1815」の意味ですが、これは創業者アドルフ・ランゲの誕生年です。何の偶然か、アドルフ・ランゲの時計師としての師匠であり、義理の父にあたるヨハン・フリードリヒ・グートケスがドレスデンに工房を構えた年でもあります。
ランゲ&ゾーネが「1815」というモデルを作り、この年号を強調している理由は創業者であるアドルフ・ランゲを世にアピールしたいからだと思います。
私はこの人物のプロフィールを見たときに思いました。この人物の最大の偉業は、「グラスヒュッテという未来のない村を時計の聖地に変えたこと」だと。元々、グラスヒュッテは銀の採掘場として町が発展しました。しかし、19世紀の前半には鉱脈が枯渇し始めます。このままでは寂れた村になってしまうだけです。もちろん、アドルフ・ランゲの真意は分かりかねますが、この未来のない村に時計工房を構え、人々に時計作りの職を与え、結果的にこの地を「時計の聖地」の一つに挙げられるほどの町にします。このプロフィールを見ると、アドルフ・ランゲは「優秀な時計師」という評価よりも「歴史上の偉人」と言った方がしっくりきます。
■今年はアドルフ・ランゲ誕生200周年
今年は2015年ですので、アドルフ・ランゲが誕生した1815年から200年目にあたる記念の年です。もちろん、ランゲ&ゾーネもこの記念の年を重要と考えています。グラスヒュッテではアドルフ・ランゲ誕生200年式典が開催されました。
そして、アドルフ・ランゲ誕生200年記念の限定モデルも登場しています。もちろん、モデルは「1815」で、ケース素材はプラチナ仕様。そして、引き締まったブラック文字盤。200年記念に引っ掛けて、限定数は200本です。BOXも特別仕様。
↑「1815」F.A.ランゲ誕生200年記念
(型式:236.049/LS2362AM)
幸運にも、このモデルを手に取る機会があったのですが、素晴しく雰囲気のある時計でした。最新の「1815」はケース径が38.5mmにサイズダウンしましたが、こちらは40mmタイプです。中央を一段低くした文字盤は、立体感を出すと共に文字盤の間延び感を押さえます。そして、上質な黒文字盤が更にこのモデルを引き締めます。もちろん、ランゲ&ゾーネ最大の特徴である「美しい洋銀製ムーブメント」は、このメーカーの時計の品格を一段と引き上げています。個人的な好みもありますが、やはり洋銀で作られたムーブメントはメッキ処理された真鍮製ムーブメントより味があり好ましいです。メッキを施さない洋銀ムーブメントの方が職人による「仕上げの表情」がより伝わりやすく、ムーブメントに「職人の技」を感じることができます。
この記念モデルは200本限定ですので、実物を見れる機会があれば幸運だと思います。もし出会うことがあれば、「1815」の意味を思い出し、アドルフ・ランゲの偉業に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?
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