5.7.2018
グランドセイコーが巻き起こす「初代復刻モデル」論争
Komehyo
ブログ担当者:後藤
以前の投稿(※1)でも紹介しましたが、近年、グランドセイコーが盛り上がっています。
グランドセイコーが盛り上がっている理由には様々ありますが、その理由のひとつは“世界進出”をしたことでしょう。そして、世界進出により、グランドセイコーを蒐集する愛好家が増えたと考えられます。
そこで、今、大きく注目される存在が、グランドセイコーの“レアピース”です。
↑初代グランドセイコー復刻モデル
特に、上の画像の「初代グランドセイコーの復刻モデル」は、グランドセイコーのレアピースの中でも最も人気が集中するモデルかもしれません。
少し紹介すると、画像の左のモデルは“2011年の初代復刻モデル”、右のモデルが“2017年の初代復刻モデル”です。その二つのモデルは、同じモデルを再現しているわけですから、当然似た外観になります。しかし、トレンドに合わせて細部を変更しており、違ったテイストをもっています。
この初代モデルを復刻した2つのモデルが、グランドセイコー愛好家の論争につながっているのです。
つまり、同じ初代復刻モデルでも、
“2011年の初代復刻モデル”支持派
と
“2017年の初代復刻モデル”支持派
に分かれるのです(※2)。
今週は、この「グランドセイコーの初代復刻モデルはどちらが良いのか」という論争について紹介しましょう。そして、是非皆さんも、どちらが好みかを考えてみてください。
■2011年の初代復刻モデル
↑SBGW033
今回の焦点になる2つの“初代グランドセイコー復刻モデル”のひとつが、2011年に登場した復刻モデルです。まずは、こちらのモデルを紹介しましょう。
2011年は、セイコーにとって創業130周年のメモリアルイヤーでした。それを記念し、1960年に登場した初代モデルを再現して復刻させたのです。
↑元となるオリジナル(初代)モデル
2011年の初代復刻モデルのラインナップは、
・イエローゴールド製
(SBGW040/130本限定)
・プラチナ製
(SBGW039/130本限定)
・ステンレス製
(SBGW033/1300本限定)
の三種類です。
このモデルの特徴を紹介しましょう。まず、1960年発売の初代グランドセイコーは“手巻式”メカニカルモデルだったので、その精神を継承し、現在の手巻式ムーブメントCal.9S64を搭載します。このムーブメントは、自動巻きムーブメントであるCal.9S65をベースにしており、マニュファクチュールであるセイコーの最新技術を搭載した作りとなっています。この最新の仕様による大きな恩恵として、従来の手巻きムーブメントCal.9S54よりもパワーリザーブ時間が約20時間増えたとこが挙げられます。つまり、ゼンマイを全部巻き上げてある状態なら、およそ72時間動いてくれるのです。
もちろん外観は初代グランドセイコーのデザインを再現していますが、ケース径も初代を意識しています。1960年の初代モデルは約35mmのケース径ですが、2011年モデルは35.8mmに仕上げられています。「サイズ感が初代モデルに近い」という点は特徴的です。
■2017年の初代復刻モデル
↑SBGW253
そして、もうひとつの“初代復刻モデル”が、2017年に発表されたモデルです。
ラインナップは、
・イエローゴールド製
(SBGW252/136本限定)
・プラチナ製
(SBGW251/136本限定)
・ステンレス製
(SBGW253/1960本限定)
の三種類です。
ムーブメントには2011年同様に、手巻式のCal.9S64が搭載されています。ただし、2011年モデルから変更された点もいくつか見られます。最初に挙げられるのがケース径の変更です。前回モデルが35.8mmなのに対して、2017年モデルは38mmに拡大されました。より現代的かつ、着用時に程よい存在感を感じる大きさになりました。
ちなみに、プラチナモデルだけには、別の変更が加えられております。2011年のプラチナモデルがPT950(プラチナ純度95%)だったのに対して、2017年モデルは最高純度のPT999(プラチナ純度99.9%)を採用しました。また、文字盤のグランドセイコーの“ロゴ部分”も、プラチナモデルだけ凹形状と特別な仕様となっております。
■“2011年モデル”か、“2017年モデル”か?
冒頭でも書きましたが、この2つの初代復刻モデルを巡って、グランドセイコー愛好家は“2011年モデル支持派”と“2017年モデル支持派”に分かれます。その争点をまとめましょう。
①サイズ感と文字盤カラー
↑左:2011年モデル、右:2017年モデル
前述したように、2011年モデルと2017年モデルではサイズが異なります。「35.8mm→38mm」と大きくなったのです。
ここでのそれぞれの主張は、
「1960年のオリジナルに近いサイズの方が良い」
という“2011年モデル支持派”と
「現代風なサイズ感の方が良い」
という“2017年モデル支持派”です。
特に、日本人より体格の良い人が多い欧米人は、後者の方か現実的なサイズ感かもしれません。ただし、オリジナリティという点では、前者の方が優位でしょう。
また、どうしても出回る数の多いステンレスモデルでの話ですが、文字盤カラーが違います。
・2011年モデルはアイボリー色
・2017年モデルはホワイト色
という違いがあります。
前者は色味として“焼け感”があるので、ヴィンテージ色が強くなります。後者は、より爽やかなイメージとなります。文字盤色に関しては、感覚的な好みが出る要素かもしれません。
②裏蓋デザインと風防デザイン
さらに、細かな仕様の違いも争点です。ステンレスモデルの裏蓋は2017年モデルの方が豪華です。2017年モデルには、裏蓋の中央に18金で作られたメダリオン(ワッペン)が取り付けられています。2011年モデルにはその金のメダリオンがありませんので、大きな違いとなります。
「豪華な仕様の2017年モデルが良い」
という“2017年モデル支持派”がいる一方で、
「2017年モデルは価格が高い」
という“2011年モデル支持派”もいるのです。
つまり、豪華な仕様にした分、2017年モデルはメーカー価格が高価になったのです。もちろんサイズの拡大も価格上昇の要因であると思いますが、金のメダリオンを省けばより安価にできたことも事実です。
時代の違いもあるので参考値ですが、ステンレス製モデルなら、2011年モデルが新品のメーカー価格43万円(税抜き)、2017年モデルが60万円(税抜き)でした。現在の状況は、中古市場ではプレミア価格化している状況です。しかし、もちろんファーストオーナーはメーカー価格で購入しているので、発売当時にその価格の上昇が気になった人もいたのです。
また、細かな点ですが、風防の形状も違います。2011年モデルが“ボックス型”、2017年が“デュアルカーブ”です。ヴィンテージ感のある形状の前者と、これまでになかった広々とした開放感と視認性ある後者とでも、好みが分かれるでしょう(※3)。
このように、いくつかのポイントで、2011年モデルと2017年モデルは違いがあるのです。そのために、同じ“初代復刻モデル”でありながら、好みの違いが出るのです。
■最後に
ここまでで、2つの復刻モデルを比較してきました。
ざっくりと表現すると、
・ヴィンテージテイストを重視した復刻モデル
=2011年モデル
・現代性を上手く取り入れた復刻モデル
=2017年モデル
ということです。
皆さんは、どちらがお好みでしょうか?
私の受けるイメージとしては、日本の愛好家は2011年モデルを支持する傾向にあり、海外の愛好家は2017年モデルが受け入れやすいイメージがあります。
ただし、日本人である私が2011年モデルにより惹かれるのかというと、また違います。個人的には、2017年の復刻モデルの方が好みです。最大の理由としては、「デュアルカーブサファイアガラスを採用しているから」です。私は、今までありそうでなかった形状のこのガラスが、感覚的に好きなのです。
皆さんも、是非、2つの“初代グランドセイコー復刻モデル”を比べてみてください。どちらも“こだわりの仕様”を与えられているため、案外その違いが気になるはずです。ただし、それらのレアピースに出会えるかどうかが、最大の問題ですが…。もし、出会えたなら、それはチャンスです!
※1・・・以前の投稿で、「近年、グランドセイコーが人気である理由」を紹介しています。是非ご覧ください。
↓↓↓
「オメガやタグホイヤーではなく、なぜグランドセイコーを選ぶのか? ~長く使えるコストパフォーマンスに優れた高級時計~」
※2・・・初代グランドセイコー復刻モデルは、創業120周年に当たる2001年に第一弾が発売されています。この時のモデルは、300本限定のイエローゴールド製モデルでした。2001年モデルは希少ではありますが、生産数の少なさ、そして、ステンレス製モデルがないという状況です。そのため、第二弾の2011年モデルや第三弾の2017年モデルほどの盛り上がりはありませんでした。この理由もあり、今回は2001年モデルを省き、2011年モデルと2017年モデルを比較する構図で書かせていただいています。
↑2001年初代復刻モデル
※SBGW004(Cal.9S54)
※3・・・ボックス型とデュアルカーブ風防の違いについては、以前の投稿の中に比較画像があります。
↓↓↓
「何が違う? グランドセイコーの“手巻モデル” ~「手巻式=面倒」というイメージを覆すモデル~」
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「【時計業界分析】セイコーの腕時計から見る、今の時計業界のトレンド」
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