26.6.2015
オメガ「スピードマスタープロフェッショナル」が手巻式である理由とは?
Komehyo
ブログ担当者:須川
手巻式クロノグラフである「スピードマスタープロフェッショナル」はオメガの顔とも言えるモデルです。
NASAのアポロ計画で月へ同行する栄誉を与えられた時計であり、「ムーンウォッチ」という別名でも呼ばれていました。現行モデルでは、正式に「スピードマスタームーンウォッチ」と呼ばれています。
1957年に登場した初期モデルの「CK2915」からマイナーチェンジを繰り返し、現行モデルの「311.30.42.30.01.005」に至るまで長きに渡りオメガの代表モデルとして君臨しています。特に一世代前の「3570.50」は近年のロングセラーモデルとしてあまりにも有名です。
↑スピードマスタープロフェッショナル
※画像は型式3570.50
しかし、その長い歴史の中で時代も変化し、今の機械式時計の主流は「手巻式」ではなく「自動巻式」となっています。そのような状況の中でも、スピードマスタープロフェッショナルは「手巻式」にこだわりランナップを続けています。
今週は「なぜスピードマスタープロフェッショナルが『手巻式』であり続けているのか?」を説明させていただきます。
まずは、スピードマスターというモデルを理解するために、スピードマスターシリーズの派生モデルを紹介しましょう。
<スピードマスターの派生モデル>
スピードマスターデイト
日付つき自動巻クロノグラフ
スピードマスターデイデイト
トリプルカレンダー自動巻クロノグラフ
スピードマスターブロードアロー
針を初期型にした上位機種
(自動巻のCal.3300系)
スピードマスターリデュースド
自動巻にしてサイズダウンした普及版
上に紹介したモデルはスピードマスターシリーズの派生モデルの一例です。ただし、これらは「自動巻式」の時計です。つまり、「手巻式」の時計ではありません。
オメガ以外のメーカーに目を向けても手巻式クロノグラフのラインナップはほとんどない状態ですし、時計業界全体でも手巻クロノグラフムーブメント自体も数多くは生産されていません。それでも、スピードマスタープロフェッショナルは手巻式を貫いています。
■なぜスピードマスタープロフェッショナルは手巻式として誕生し、現在も手巻式なのか?
初期のスピードマスター※1が登場した1957年当時は、まだ自動巻のクロノグラフがない時代でした。当然、クロノグラフといえば手巻クロノグラフということになります。
では何故、「自動巻式」が全盛になった時代でも「手巻式」を廃番にせず継続しているのでしょうか?
このモデルが現在でも手巻式である理由は「月に行ったという偉業を達成したモデルを現代まで保存する」という戦略をオメガがとっているからだと思います。
実際、オメガは「スピードマスタープロフェッショナルはアイデンティティとして継続していく」というアナウンスをしています。もう少し具体的に言うと、オメガはスピードマスタープロフェッショナルを「オメガのコマーシャルモデル」として存在させ、このモデルのスピンオフを多く作ることによってラインナップを広げる戦略をとっているということです。
上で紹介した派生モデルはその戦略で登場したモデルであり、中でも「スピードマスターデイト」や「スピードマスターデイデイト」はスピードマスータープロフェッショナルに匹敵するほど成功したモデルです。多くの派生モデルがあることにより、スピードマスターの購入を検討している消費者は「自分のスタイルに合ったスピードマスター」を選ぶことができる状況が作り出されています。
通常であれば、ラインナップを増やせば増やすほど消費者は迷ってしまいやすくなるのですが、スピードマスタープロフェッショナルという「中心軸」があることで、オメガのラインナップは均衡を保っています。
消費者には「伝説のモデル(=オメガの主役)」を選ぶのか、それとも「自動巻という実用性」を選ぶのかという選択肢があります。そして、自動巻式を選べば、外装デザイン・機能・文字盤の種類など選択肢が更に広がります。
<スピードマスターラインの選び方>
→①伝説のモデル(オメガの主役)を選択する
つまり、「スピードマスタープロフェッショナル」
→②自動巻の実用モデルを選択する
つまり、「スピードマスタープロフェッショナル以外のモデル」
⇒「スピードマスタープロフェッショナルを選ぶか選ばないか」という選択が選び方のスタート地点となる
ただ誤解のないように説明を加えると、スピードマスタープロフェッショナルは外装やムーブメントの改善を、目立たない範囲で行っています。ユーザーのために改良を加えている意図と、現在のコストに見合った生産ができるようにしている意図で、マイナーチェンジが行われています。
いろいろ書きましたが、純粋に私たちにとって嬉しいことは、NASAに公式採用され、月への着陸に同行し、伝説になったモデルは今後も大きな変更や廃盤もなくオメガの主力モデルとして君臨していくであろう点です。
■スピードマスタープロフェッショナルの良さとは?
最後に、私が思うスピードマスタープロフェッショナルの良さを紹介したいと思います。
簡単に言うと「昔ながらの要素を残している」という点が、スピードマスタープロフェッショナルの最大の良さだと感じます。私の感じる「昔ながらの要素」とは以下の2点です。
①アクリルガラス(プラスチック風防)の採用
②レマニアの手巻クロノグラフ
(Cal.321→861→1861)
※画像はCal.1861のシースルーバック用
ムーブメントのCal.1863です
この2つの要素が、このモデルに良質なヴィンテージ感を与え、スピードマスタープロフェッショナルを雰囲気の良い時計として構築しています。
「現行モデルでありながら、ヴィンテージ感を表現する」
スピードマスタープロフェッショナルは、今後も多くの時計愛好家を魅了することでしょう。
※1・・・当時はプロフェッショナルとは言わなかった。
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