5.5.2023
【腕時計の基本知識】よく登場する用語「GMT」とは何のこと? ~GMT機能の使い方~
Komehyo
ブログ担当者:篠田
リライト(2023/5/5):須川
時計用語としてしばしば登場する「GMT」という言葉を、皆さんはご存知ですか?
高級時計の世界に踏み込んだばかりの方は、時計雑誌などでもよく見かける用語ですので、気になる用語だと思います。
有名なところでは、ロレックスの人気モデル「GMTマスターⅡ」にも、この「GMT」という用語が入っています。こういった人気モデルの名称にも使われる用語であるため、高級時計の世界では、頻繁に耳にする用語ではないでしょうか。
↑GMTマスターⅡ
今回は、この「GMT」という用語について説明をしましょう。
結論から言うと、GMTは
第二時間帯を表示できる機能
です。
例えば、よく「日本との時差が○○時間ある」のように、“時差”という言葉を聞くと思います。GMT機能のある時計は、時差によって異なる“2つの国(都市)の時間”を同時に表示できるのです。
以降で、GMTについて、分かりやすく解説しましょう。
■「GMT」を分かりやすく解説
冒頭で紹介したように、「GMT」は、時計用語で言うと「第二時間帯を表示できる機能」です。しかし実は、「GMT」という言葉は、時計だけの用語ではなく一般用語です。
GMT=Greenwich Mean Time(グリニッジ・ミーン・タイム)
→グリニッジ標準時
これは、1884年の国際子午線会議で始まり、その後普及に至った世界の時刻表示の統一規格です。具体的には、「経度が15度ずれるごとに、時刻が1時間ずれる」というものが基本的な発想にあるのですが、この基準となる位置をイギリスのグリニッジ天文台にしました。例えば、イギリスが基準時の「±0時間」になりますので、経度+135度にある日本は「+9時間」となります。そのため、もしイギリス時間が1時だとすると、日本時間は「+9」をして10時ということになります(※サマータイム時期は1時間変わり、「+8時間」となります)。
ただし、グリニッジ標準時は既に過去のものとなり、現在は、原子時計を利用したUTC(協定世界時)がスタンダードになっています。
これが、「GMT」の本来の意味です。より簡単に表現すると、「イギリスを0位置とした、“時差”による世界の時間表示」ということです。
■時計における「GMT機能」を分かりやすく解説
「GMT」の意味が分かったところで、次は、時計のGMT機能についてです。
時計におけるGMT機能とは、「2つの国(都市)の時間を同時に示す機能」です。種類によっては、3つの国(都市)の時刻を表示することもできます。
GMTは、「イギリスを基準とした“時差”による世界の時間表示」ですので、2つの場所の時刻を示すには、“時針”が2つあれば十分です。
上の画像は、GMT機能をもつGMTマスターⅡですが、通常の時計より針が多いのが分かるでしょうか。“時針”に相当するものが2つあるのです。
・時針①=「通常の時針」
→12時間で一周する。通常は、現在いる場所の時刻(ローカルタイム)にしておく。
・時針②=「GMT針」
→もう一つの時針。「GMT針」と呼ばれる。昼夜の区別を分かりやすくするために、24時間で一周する。時刻の読み取りは、外周にある「24時間目盛り」を利用する。通常は、自国/祖国時間(ホームタイム)にしておく。
※現在いる国(都市)が自国であれば、時針とGMT針は同じ時間を示すことになります。
例えば、上の画像の場合なら、現在滞在している場所が10時、ホームタイムが13時という表示です。
2つの時針で“2つの国(都市)の時刻”が表示できますので、海外に滞在する場合や、取引や交信で海外時間を気にする場合などで、役に立つ機能です。
■GMT機能の使い方(操作方法)
最後に、GMT機能の操作方法も説明しておきましょう(※過去の投稿でも紹介しています→GMT機能の使い方)。
まずは、GMTウォッチの基本操作を把握します。
<GMTウォッチの基本操作とポイント>
●リューズを引いてできること
・リューズを「1段」引いて操作
→時針だけが単独で動く(移動した分の時差を修正)
※「時針」のみを単独で変更することにより、ホームタイム(GMT針)はそのままの時刻で維持したまま、時計の時刻を現地時間に設定できます。ただし操作方法が異なるモデルもあり、リューズ1段引きで単独変更できる針が、時針ではなく「GMT針」であることがあります。この場合は、現地時間への設定はリューズ2段引きで行い、ホームタイムを1段引きで設定します。
・リューズを「2段」引いて操作
→時針・分針・GMT針の全てが連動して動く(通常の時間合わせ)
※操作が異なるモデルもあります
●回転ベゼル
・「3カ国時刻表示ができるタイプ」は、可動するベゼルで第三の時間帯を設定するため、24時間表示が記された回転ベゼルが備わります(逆に、回転ベゼルがないものは「2カ国時刻表示タイプ」ということです)。
※ただし例外があり、ロレックスの「GMTマスターⅠ」は、回転ベゼルがありますが「2カ国時刻表示タイプ」です。
●その他注意点
・時針が単独で変更できるタイプは、日付の設定を単独で行うことができません。日付を設定したい場合は、時針を回し続け、24時間分動かすことで日付変更をすることになります。
<具体的なGMTの設定方法>
上の状況を理解していただいたところで、具体的な操作を説明します。
まずは、日本がホームの人が、ニューヨークに行った時の時刻の表示に挑戦しましょう。
日本とニューヨークの時差は13時間です(サマータイム時)。つまり、ニューヨークの方が日本と比べて、13時間遅れています。例えば、画像のように、ホームタイムである日本の時刻は、GMT針で23時を指しており、訪れたニューヨークの時間は、分針と時針により午前10時となるような表示を作りたいのです。
時計をしばらく使っていなかった前提で、初期合わせから行ってみます。
それでは操作してみます。
①時針とGMT針の同期
→どの時間で時針とGMT針を同期しても良いですが、今回は分かりやすいように、午前0時で同期させます。まずは、リューズを2段引きして針を動かすと、連動してGMT針も回るので、GMT針が24時の位置にくるようにします。そして、リューズを1段引きにして、時針を単独で回転させて、時針を0時(日付が変わるタイミングの12時)に合わせる。これで、両方が同じ時間になりました。
②ホームタイム(いつも合わせる日本時間)の設定
→リューズを2段引いた状態で針を回し、現在の日本時刻に合わせる。
③ローカルタイム(滞在する海外時間)の設定
→リューズを1段引いて、時差分だけ時針を単独で動かし(13時間分戻す)、ニューヨーク時刻に合わせる。
これで、時計のメインの時刻表示はニューヨーク時刻となり、GMT針が指し示す時刻は日本になりました。これが、GMT機能を使う具体的な方法です。
※今回は初期設定から説明しましたが、普段は①②を済ませた状態で時計を使っているはずです。そのため、普段使いの状況からGMTを設定するなら、③の操作のみとなります。
<第3カ国目の時刻を設定する場合>
さらに回転ベゼルがあるモデルでは、第3ヵ国目の時刻を表示することもできます。これも、挑戦してみましょう。
これは回転ベゼルを回すことで、「GMT針の読み取り目盛りの位置を変える」ことがポイントになります。
もし、設定したい時間がホームタイムよりも遅れていれば、遅れている分だけ回転ベゼルを「右に」回します。進んでいれば、進んでいる分だけ「左に」回すのです。そうすれば、読み取り目盛りの位置が変わります。
例えば、ホームタイムである日本時間が午後12時、現在の滞在地がロンドンで午前3時だったとしましょう。その時に、ニューヨークの取引先のことを気にする必要があり、ニューヨーク時間も把握したい状況があったとします(今回はサマータイムではないことにします)。
この場合、回転ベゼルを使い、ニューヨーク時間(午後10時)を表示できれば、第3時間帯の設定ができたことになります。では、やってみましょう。
①ホームタイムと滞在国時間は設定済みにする
※先に説明した方法です
②ホームタイムと第3国の時差を調べる
→日本とニューヨークは14時間の時差
③回転ベゼルを第3国との時差分ずらす
→回転ベゼルを14時間分ずらす
④GMT針を回転ベゼルの目盛りで読む
→ニューヨーク時間が分かる
⑤回転ベゼルを元に戻す
※再びホームタイムが読めるように
これで、瞬間的ですが、第3国の時間が分かります。第3国の時間は、あくまで「瞬間的な」表示であり、簡易的なものです。
しかし、ロンドンにいながら、ホームである日本の時間も把握し、サッと操作するだけでニューヨークの時間も把握できたのです。これが、“回転ベゼル付きGMTウォッチ”の実力です。
いかがでしょうか。今回は、「GMT」という用語と、その一般的な操作方法を紹介しました。操作は覚えてしまえば、難しくないと思います。
皆さん、機械式時計の醍醐味として、機能付きウォッチにも触手を伸ばしてはどうでしょうか。その有力な選択肢として、私なら、“GMTウォッチ”を強く推します。
なぜなら、機能付きの機械式時計の中で“GMTウォッチ”は、
・実用性の高い機能である
・GMT針がデザインアクセントになる
・メンテナンス費用も高くない
という利点があるからです。
そう、GMTウォッチは、最初の機能付きウォッチには最適なのです!
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