高級腕時計の時計通信

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17.8.2023

最近のエルメスの機械式時計は凄い!「アルソー ル タン ヴォヤジャー」が実現する最強のワールドタイム

Komehyo

ブログ担当者:須川

 

■最近のエルメスの機械式時計は凄い!「アルソー ル タン ヴォヤジャー」が実現する最強のワールドタイム

 

エルメス専属のデザイナーとして高名なアンリ・ドリニーさんによって考案された腕時計のひとつが、

 

アルソー

です。

 

12時側のみワイヤーラグ」「傾いたアラビアインデックス」というスタイルは、一般的な腕時計デザインとは一線を画すもので、とてもアイコニックな時計です。

 

この腕時計の誕生は1978年とかなり前ですが、今でも製造が続けられており、エルメスが大事に作り続けているシリーズです。

 

そして、このアルソーから2022年の新作として登場したのが、

 

アルソー ル タン ヴォヤジャー

 

です。

↑画像はステンレス製38mmタイプ

※メーカー価格2,695,000円

 

上の写真をご覧いただくとお判りになると思いますが、この作品は特徴的なデザインをしています。

 

例えば、時刻表示は、中心からずらした位置に文字盤を持つ“オフセンター式”で、このオフセンターされた文字盤は、操作によって位置が変わります

↑操作によって、文字盤位置が変わる

 

さらに、その背後には“地図”が描かれており、外観面でも興味深い時計だと思います。因みに、この地図は、エルメスのスカーフに描かれる想像の世界地図で、「乗馬の世界地図」と呼ばれるものです。

↑「乗馬の世界地図」が描かれる

 

 

 

 

 

 

■機能が凄い、アルソー ル タン ヴォヤジャー

 

先に説明したように、アルソー ル タン ヴォヤジャーの外観は、多くの人の目を引くデザインです。しかし、この時計の凄さは、これだけではありません。むしろ、私としては、“機能”にこそ驚きを感じます。

 

具体的に言うと、アルソー ル タン ヴォヤジャーには、第二時間帯表示の機能があります。これは、「GMT機能」や「ワールドタイム機能」に近いもので、海外に行ったときなどに、自国時間と現地時間を両方知ることができる機能です。

 

アルソー ル タン ヴォヤジャーは、この第二時間帯表示の機能が、画期的なのです。

 

例えば、下の写真は日本(東京)の時間を表示している状態です。文字盤に付く赤いマーカーが「TOKYO」を指しており、時刻は6時を指しています。そして、12時位置にある「ホームタイム時刻表示」も、同じく6時(18時)を指しています。

そして、例えば、ロンドンに行ったとしましょう。ここで、側面についたボタンを押します。すると、文字盤がが赤いマーカーとともに動きますので、赤マーカーが「LONDON」を指すまでボタンを押します。

↑側面のボタンを押す

 

下の写真は、ボタンを押して「TOKYO→LONDON」に文字盤(赤マーカー)を動かした状況です。すると、文字盤の時刻が自動的にロンドン時間(9時)になっています。ただし、12時位置のホームタイム表示は、東京の時刻(18時)のままです。

これで、ロンドンに居ながら、ロンドン時間と東京時間を同時に知ることができる状況になりました。もちろん、時間の経過に合わせて、この2つの時刻表示も変わっていきますので、一度設定すれば、その後は何も操作する必要はありません。

 

この機能は画期的で、これまでにあった第二時間帯表示よりも優れていると感じます。そこで、アルソー ル タン ヴォヤジャーの第二時間帯表示の優れている点を知るために、比較対象となる、“従来の第二時間帯表示機能”を紹介します。

 

まず、GMT機能は、シンプルに時針とGMT針で2つの時刻を表示するので、「一目で2か国の時刻がわかる」という利点があります。しかし逆に、「第二時間帯を知るには、時差を調べて設定しないとけない」という設定時の手間があります。

↑GMT機能

 

次に、ワールドタイム機能は、文字盤内に世界各地の都市と時刻が一括表示されるので、「設定をしなくても、別の国の時刻が分かる」という利点があります。しかし逆に、「文字盤内から、該当都市名を探して読まないといけない」という時刻を知るまでの煩雑さがあります。

↑ワールドタイム機能

 

そして、現在の第二時間帯の表示には、「サマータイム(DST)」の対応も求められます。GMTの時計では、その都市のサマータイムを調べて設定することになりますが、ワールドタイムの時計の場合は、対応しているものと対応していないものがあります。対応しているものの場合は、都市表示の欄に「サマータイムの場合には、こちらを見る」ということがわかるような目印が付けられています。

 

ここまでをまとめると、

 

・GMT機能

→時刻は読み取りやすいが、設定が大変

 

・ワールドタイム機能
→設定面では楽だが、時刻の読み取りに煩雑さがある

 

という印象です。

下の表に、まとめてみました。

 

そして、アルソー ル タン ヴォヤジャーは、この表にある通り、

 

「2か国の時刻が読み取りやすい」

「設定は容易」

「サマータイムがわかりやすい」

 

という特徴があり、GMTやワールドタイム機能がもつ短所が解決された優れた機構です。

 

アルソー ル タン ヴォヤジャーの時刻の読み取りやすさは、時刻表示を、オフセンターされた「文字盤」と12時位置の「ホームタイム表示」の離れた位置にしたことも大きいと思います。さらに、その2つの表示は、“針”と“ディスク”で別のタイプなので、より読みやすさを感じます。

 

そして、第二時間帯表示の設定は容易で、GMT機能のときのように時差を調べる必要はありません。単純に、ボタンを押して希望の都市に赤マーカーを持っていくだけです。

 

さらに、アルソー ル タン ヴォヤジャーは、サマータイムが優れています。都市名部にサマータイムを表す表記(「S」「V」など)があるので、ボタン設定でその位置に設定してあげるだけで、その都市のサマータイム時刻を自動表示します。サマータイム時間を調べる必要もありませんし、一度設定すれば、常にその都市の時刻を表示するので、優れたサマータイムです。

 

 

 

 

 

 

■最後に

 

今回ご紹介したように、アルソー ル タン ヴォヤジャーは、デザインが特徴的なだけではなく、第二時間帯表示の機能が優れています。

これほどまでに使いやすい第二時間帯表示の時計は、本当に珍しいと思います。ただし、実はこれまでに、アルソー ル タン ヴォヤジャーの機能に近いものは存在していました。それは、ジャガールクルトの「マスタージオグラフィーク」です。マスタージオグラフィークも、簡単に第二時間帯表示が設定でき、メインダイヤルとは別のインダイヤルでもう一つの時刻を表示します。

↑マスタージオグラフィーク

 

このライバル機も、優れた第二時間帯表示を持っていますが、「時刻の読みやすさ」では、アルソー ル タン ヴォヤジャーに大きなアドバンテージがあります。それは、前述のように、「2つの時刻表示を離れた位置に置いたこと」、さらに、「“針”と“デジタル”表示を使い分けたこと」が大きいでしょう。これらの要素により、マスタージオグラフィークよりも時刻が読みやすくなっています。

 

さらに何といっても、「オフセンター文字盤が移動する」という、ギミックの面白さは、アルソー ル タン ヴォヤジャーがもつ大きな魅力です。そのギミックの面白さに、ドリニー氏のデザインが掛け合わされ、唯一無二の存在になっています。

↑文字盤が移動するギミックが面白い

 

今回、写真で紹介をしているアルソー ル タン ヴォヤジャーは38mmモデルですが、その他に、41mmのモデルが存在し、寡作ですが選択肢があります。そして、ムーブメントにも、ヴォーシェ3002ベースにクロノード製モジュールが組み合わされたCal.H1837が使われています。

 

この作品は、きっと、時計愛好家の方に響くはずです。しかしその方々だけでなく、私としては、愛好家でない方にも、この名作の素晴らしさが伝われば嬉しいと思っています!

 

 

 

 

 

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