8.1.2016
えっ!? ロレックスに電池式時計があるの? ~ロレックス「オイスタークォーツ」のすすめ~
Komehyo
ブログ担当者:山口
「ロレックス=自動巻式時計」
そんなイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。そのイメージが故に、ときどきお客様からある質問を受けます。それは「ロレックスにクォーツ時計はありますか?」という質問です。ここで簡単に時計の動力について説明します。自動巻式時計などの機械式時計はゼンマイで動いており、放って置くとゼンマイが解けて止まってしまいます。一方、クォーツ時計は電池で動いており、電池がなくなるまで時計は時を刻み続けます。このことを考えると、先ほどの質問がお客様から出るのも頷けるところです。つまり、機械式時計が止まった際のゼンマイの巻上げ作業はこの種の時計の醍醐味ではありますが、それを億劫だと感じる方はクォーツ時計を好むのではないでしょうか。要するに、「高級時計の代名詞であるロレックスを所有してみたいけど、しばしば止まってしまうゼンマイ式の時計は避けたい」という考えを持たれるのではないでしょうか。結論から言うと、ロレックスにクォーツ時計は何種類かあります。その中でも代表的なモデルは「オイスタークォーツ」と呼ばれるモデルです。生産時期も限られており、ある種珍しいロレックスです。
今週は、ロレックスの「オイスタークォーツ」を紹介しながら、「電池式ロレックス」の存在をアピールさせていただきます。
↑ロレックスにもクォーツ時計がある
◆「オイスタークォーツ」は時代の流れに乗って誕生!
ロレックスは「3大発明」でその地位を確立したと言われています。そのことは以前のブログ(なぜロレックスが時計業界のTOPにいるのか?)で書いた通りです。その3大発明のひとつである「パーペチュアル」は1931年に発表されました。それは、世界初の360度回転ローターをもつ自動巻機構です。その「パーペチュアル」の成功もあり、ロレックスは「自動巻式時計のトップメーカー」としての地位を確固たるものとしました。今では、「ロレックス=自動巻き」というイメージが定着しています。
時は流れ、自動巻式時計が全盛だった時代が急に終わります。そのきっかけは、1969年にセイコーが世界初のクォーツ腕時計を発表したことでした。登場したクォーツ腕時計は「最新のテクロノジーが搭載された次世代の腕時計」という立場であり、次第に人々に受け入れられていきます。もちろんロレックスも手をこまねいていたわけではありません。セイコーが発表した僅か1年後※1、ロレックスもムーブメント「ベータ21」を搭載した、クォーツ腕時計「ベータクォーツ(型式5100)」を発表したのです。まさに時代の流れに乗って誕生しました。しかし、ベータクォーツは量産モデルとして生産をしませんでした。おそらくベータクォーツはロレックスのクォーツ腕時計史の第一歩を踏み出すための試験的なモデルであったのでしょう。ベータクォーツは寡少な生産で打ち止め、すぐにその主役を「オイスタークォーツ」に譲ります。その後、「チェリーニ」ラインでもクォーツ時計を生産し、ロレックスは消費者に対して幅広い選択肢を提供すべく尽力します。下でロレックスのクォーツ時計ラインをまとめておきます。
↑左:オイスタークォーツ「デイトジャスト」(型式17000)
↑右:オイスタークォーツ「デイデイト」(型式19018)
<クォーツ式ロレックス>
①ベータクォーツ
上で述べた「ベータ21」キャリバーを搭載し、1000本限定で発表されたと言われます。ロレックス初のクォーツモデル。秒針がスイープ運針というのも大きな特徴です。ロレックスで初めてサファイアガラスを採用したモデルでもあります。ホワイトゴールドとイエローゴールドの金無垢素材のみのラインナップや、限定本数があったことから、まだまだ大衆向けとは程遠かったのではないかと思われます。今現在では目にするのも困難なレアモデルです。
②オイスタークォーツ
1977年に発売された、ロレックスを代表するクォーツモデルです。上のキャリバー「ベータ21」が共同開発だったのに対し、当モデルは自社製クォーツムーブメントを搭載しています。秒針は一般的なステップ運針になりました。種類としては「デイトジャスト」モデルの他に「デイデイト」モデルも存在します。フラッシュフィットを採用せず、エッジの利いたデザインはまさに70年代スタイル。既に生産終了していますが、現在でも中古品としてときどき市場に登場するまだまだ入手が可能なクォーツ式ロレックスです。2000年代初頭まで生産されました。
↑ロレックスが誇るクォーツキャリバー5035
③チェリーニ
実用性を追究するロレックスが例外的に実用性を外すドレスラインです。つまり、「オイスター(防水性能)」や「パーペチュアル(自動巻機構)」などのロレックスを代表する実用性が省かれています。その代わりに、ドレスウォッチらしい「薄さ」や「革ベルトへのフィット感」を実現しています。現行品の「チェリーニタイム」は現代風なサイズ感に自動巻ムーブメントを採用していますが、従来のモデルはケース径も比較的小ぶりで手巻き式とクォーツ式の両方が存在しています。バリエーションも豊富であり、クォーツ式ロレックスを入手したい方にとっては、中古品であれば比較的手に入りやすいモデルと言えます。
◆敢えてロレックスでオイスタークォーツを選ぶ!
先にも述べたように、現在では「ロレックス=自動巻き」という図式は非常に色濃いものとなっています。かつて、利便性や高い精度を求めて開発されたクォーツ時計ですが、現在ではロレックスのラインナップ内では下火になっています。つまり、多くの方はロレックスを選択する際に「自動巻式」を選び、「クォーツ式」を選ぶ方が少ないのが現実です。しかしその反面、敢えて流通の少なくなったクォーツロレックスを選ぶことで、多くの方が持っていないロレックスを所有するチャンスとも捉えることができます。特にオイスタークォーツの外装は角にエッジをもっており、70年代の時計がもつような雰囲気をまとっています。そのヴィンテージ感は現行品とは一線を画しています。さらに、短い期間しか生産されなかった点もオイスタークォーツの価値となります。「嗜好品」として高級時計を求める方にとっては、この「知る人ぞ知る」というモデルを所有する満足感はとても高いと思います。
↑エッジが効いたデザインはヴィンテージ感をまとう
いかがでしょうか?なかなか話題に上らないオイスタークォーツですが、皆さんの中でその存在感は増したでしょうか?もちろん自動巻式と比べると物量が少ないことは事実ですので、入手が難しいタイミングもあります。ただ、店頭にさりげなく並ぶこともありますので、幸運な方には出会いがあると思います。ステンレス、コンビネーション、ゴールドと素材のバリエーションもあり、価格的にも幅があります。文字盤にも種類があり、とても興味深いモデルです。もし手に取るチャンスがあれば、是非、その「一風変わったロレックス」の雰囲気を感じてみてください!
※1・・・「ベータクォーツ」の発表年は諸説あります。ここでは1970年説で書いていますが、慎重に表現すると1970~1972年ごろという表現になります。
※おすすめ記事
「【ロレックス】2022年、オイスターパーペチュアルに何が起こったのか? ~残念ながら一部が生産終了~」
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