11.5.2021
なぜブレゲ「クラシック3350」は時計愛好家に評価されるのか? ~デザインで魅せた、最初の腕時計トゥールビヨン~
Komehyo
ブログ担当者:須川
■なぜブレゲ「クラシック3350」は時計愛好家に評価されるのか? ~デザインで魅せた、最初の腕時計トゥールビヨン~
1980~1990年代は機械式時計の人気の復興期にあたります。この時期の時計は、「完全なヴィンテージ品でもなく、最近のモデルでもない」という絶妙な時期の作品であり、この時期に高級時計の名作が多く誕生しています。
この1980~1990年代という復興期の作品を、当社では「ネクストヴィンテージ」と呼び、特別な評価をしています。
そして、このネクストヴィンテージの作品で、私が筆頭格として評価しているモデルのひとつが、
ブレゲ「クラシック3350」
です。
このモデルについて、私は「時計愛好家にデザインで魅せた、最初の腕時計トゥールビヨン」という認識があります。この私の評価については、説明が必要だと思いますので、以降で解説します。
■「クラシック3350」の評価は?
冒頭で触れたように、私のクラシック3350への評価は
「時計愛好家にデザインで魅せた、最初の腕時計トゥールビヨン」
というものです。
ここでは、私がこのように評価している理由を説明します。その説明のためには、少し時計の歴史にも触れる必要がありますので、歴史的な内容も含めて説明します。
クラシック3350は、1988年に発表された「トゥールビヨン機構搭載の腕時計」です。この時代は、“腕時計”にトゥールビヨンが搭載され始めたばかりのころで、まさに黎明期です。
そもそも、トゥールビヨンという機構自体は初代ブレゲが1800年ごろ(1795年に発明し、1801年に特許が取得された)に作り上げた、歴史的な複雑機構です。この初代ブレゲの時代は“懐中時計”の時代でしたので、今よりもムーブメントを収めるスペースが多くとれました。しかし、より小ぶりな“腕時計”はムーブメントを収めるスペースが小さく、そこにトゥールビヨンを組み込むことに成功しただけでも偉業だと思います。
しかし、この「腕時計にトゥールビヨンを搭載した」という偉業は、ブレゲだけのものではありません。腕時計トゥールビヨンの黎明期の各メーカーの切磋琢磨が感じれるように、下に、腕時計トゥールビヨン黎明期の作品をリストアップしましたので、ご覧ください。
<腕時計トゥールビヨン初期の作品>
・フランクミュラー「オシレータートゥールビヨン」(1984年)
・オーデマピゲ「カナペ」(1986年)
・ブレゲ「クラシック3350」(1988年 ※発売は1990年)
・ブランパン「トゥールビヨン(ヴィルレ/6マスターピースのひとつ)」(1989年)
・FPジュルヌ「トゥールビヨン・スブラン(前身)」(1991年 ※製品版は1999年)
↑オーデマピゲ「カナペ」
↑ブランパン「トゥールビヨン」
上に挙げた作品を見るだけでも、ブレゲのクラシック3350より前に登場した腕時計トゥールビヨンは2作品も存在します。その全てに共通しているのは、文字盤側からトゥールビヨンの機構を見えるようにしている点です。
しかし、ブレゲのクラシック3350は、その他の作品と異なる点があります。
それは、
「大きなキャリッジを、大きなブリッジで支えて、大きなオープンワークで見せている」
という点です。
ブレゲ以外の腕時計トゥールビヨンは、文字盤に丸く穴を開けて、その穴からコンパクトなキャリッジ(テンプ)が見えるようになっています。これは、トゥールビヨン機構の見せ方としては「シンプルな見せ方」です。
しかし、ブレゲのクラシック3350は、懐中時計の時代に見られたオープンワークのトゥールビヨンのように、「美しくトゥールビヨンを見せる」ことにこだわった印象です。大きく開いたオープンワークには、大きなブリッジを取り付け、さらに、地板にはエングレービングがされています。まさに、芸術の域にあると思います。
懐中時計の時代には、ジラールペルゴの「スリー・ゴールド・ブリッジ・トゥールビヨン」が、1867年と1889年のパリ万国博覧会で金賞を獲得したことがあります。この懐中時計トゥールビヨンは、大きなブリッジとオープンワークで、「美しいトゥールビヨン」として知られています。つまり、懐中時計の時代には、トゥールビヨンという複雑機構を搭載することだけに満足せず、「美しさを追及する姿勢」も見られたのです。
↑スリーゴールドブリッジトゥールビヨン
※1999年の腕時計版
私は、ブレゲの腕時計トゥールビヨンの初作の中に、この「美しさを追及する姿勢」が既に見られることに驚きを感じます。なぜなら、先に書いたように、腕時計のサイズにトゥールビヨン機構を収めるだけでも凄いことです。特に、黎明期ではその意識は強かったでしょう。その初期の時期において、トゥールビヨンを搭載するだけでなく、「美しさも追求する」余力があることは凄いことです。
その証拠に、クラシック3350は、裏面にまで美しさを見せています。下に画像を用意しましたが、クラシック3350の裏面はシースルーになっており、ムーブメント受けに美しいエングレービングがされています。
↑裏面には美しいエングレービング
この裏面の見事なエングレービングの中に、「BREVET DU 7 MESSIDOR AN 9」と記されています。これは、初代ブレゲがトゥールビヨンの特許を取得した日を表しており、当事の暦で「共和暦第9年メシドール7日(1801年6月26日)の特許」という意味です。このような、歴史的なつながりを感じることができる点も、ブレゲのトゥールビヨンの魅力かもしれません。
このような美しい腕時計トゥールビヨンが黎明期に登場すれば、それは時計愛好家の琴線に触れるでしょう。実際、私は、時計愛好家の方から「クラシック3350は、一番、トゥールビヨンらしさを感じるデザインだよね」と言われたことがあります。そして、私もそれに同意します。だからこそ、私はクラシック3350を、「時計愛好家にデザインで魅せた、最初の腕時計トゥールビヨン」と評価しているのです。
■最後に
今回は、ブレゲのクラシック3350を取り上げました。ただし、この「3350」は初期のレファレンスなので、なかなか出会える機会はないかもしれません。
しかし、クラシック3350には後継モデルがあります。それは、「3357」というレファレンスのものです。これは、リューズやエングレービングなどのマイナーチェンジだけなので、ほとんど同じに見えると思います。そして、ロングセラーモデルでしたので、こちらの方が出会えるチャンスは大きいでしょう。
もし気になる方は、「3350」または「3357」で中古マーケットを探してみると、出会えることもあるかもしれません!
※おすすめ動画
※おすすめ投稿記事
「【世界に500本しかない歴史的名作】ジャガールクルト「レベルソ トゥールビヨン」(レベルソ コンプリカシオン第2弾)」
TAGLIST
- A.LANGE&SOHNE
- , AUDEMARS PIGUET
- , Bell&Ross
- , BLANCPAIN
- , Breguet
- , BREITLING
- , BVLGARI
- , CARTIER
- , CASIO
- , CHANEL
- , CHOPARD
- , CITIZEN
- , F.P.JOURNE
- , FRANCK MULLER
- , G-SHOCK
- , Girard-Perregaux
- , Glashütte Original
- , HAMILTON
- , HERMES
- , HUBLOT
- , IWC
- , Jaeger-LeCoultre
- , Longines
- , MAURICE LACROIX
- , MORITZ GROSSMANN
- , NEXT VINTAGE
- , NOMOS
- , OMEGA
- , ORIS
- , PANERAI
- , PATEK PHILIPPE
- , PIAGET
- , RICHARD MILLE
- , ROLEX
- , SEIKO
- , SINN
- , SWATCH
- , TAG HEUER
- , TISSOT
- , TUDOR
- , Ulysse Nardin
- , VACHERON CONSTANTIN
- , VINTAGE
- , ZENITH
- , その他
- , パテックフィリップ
- , ファッション
- , 人物
- , 時計一般知識
- , 独立時計師
- , 筆記具
- , 革靴
more
-
NEXT ARTICLE
次の記事へ
27.5.2021
【2021年新作】チューダー|ブラックベイ クロノ「79360N」 ~人気の“反転色”を取り入れる新たなモデル~
-
PREVIOUS ARTICLE
前の記事へ
24.4.2021
失敗しない方法お教えします!初めてのヴィンテージウォッチ入門