11.7.2020
時計好きにサプライズをあたえる時計!ジャガールクルトの「ジオフィジック トゥルーセコンド」
Komehyo
ブログ担当者:須川
■時計好きにサプライズをあたえる時計!ジャガールクルトの「ジオフィジック トゥルーセコンド」
今回は、ジャガールクルトの「ジオフィジック トゥルーセコンド」についてです。
↑ジオフィジック トゥルーセコンド
(Ref.Q8018420)
上に、ジオフィジック トゥルーセコンドの画像を用意しました。2015年に登場した、このジオフィジック トゥルーセコンドの外観は、シンプルな3針の自動巻時計です。しかし実は、この時計は見る人を驚かせる要素があります。
そのサプライズ要素は、
「秒針の動き」
にあります。
実は、ジオフィジック トゥルーセコンドには、デッドビートセコンド(ジャンピングセコンド)と呼ばれる機構が搭載され、秒針の動きがクォーツ時計のようになっています。この機構が、このモデルの最大の見どころです。以降で、詳しく紹介します。
↑デッドビートセコンド機構のムーブメント
■「ジオフィジック」とは?
まずは、先にジャガールクルトの「ジオフィジック」シリーズについて説明しておきます。
1958年は、国際地球観測年と位置づけられました。これは、地球物理現象をより深く理解するため、世界が国際協力をして取り組もうというものでした。この機に、ジャガールクルトは研究者や科学者に向けて時計を作りました。それが、「ジオフィジック」です。
この1950年代に登場したジオフィジックは、磁気に強く、防水性があり、さらに、暗所でも時間が読めるよう夜光塗料を備えた時計でした。このモデルの現代復刻モデルが、2014年に限定品として登場し、時計業界でも話題になりました。
そして、今回、取り上げるジオフィジックは、“2015年に登場したジオフィジック”です。これは、「ジオフィジック トゥルーセコンド」と「ジオフィジック ユニバーサルタイム」のことで、明らかにそれまでとは異なる特徴のジオフィジックです。具体的に言うと、これらは耐磁時計のスタンダードである“軟鉄製インナーケース”をもたず、シースルーバックにされています。そして、何よりも、デッドビートセコンドを採用していたのです。
↑ジオフィジック トゥルーセコンド
↑ジオフィジック ユニバーサルタイム
このデッドビートセコンドが、この新たなジオフィジックの特徴でもありますので、次で説明します。
■新たなジオフィジックが搭載する「デッドビートセコンド」とは?
では、新たなジオフィジックがもつ特徴である、「デッドビートセコンド」を説明します。これは、別名「ジャンピングセコンド」とも呼ばれ、ジャガールクルトは「トゥルーセコンド」と呼んでいます。
これは、簡単に言うと、
「一秒、一秒、止まりながら動く秒針」
のことです。
もう少し噛み砕いた言い方をすると、
「皆さんがよく目にするクォーツ時計の秒針の動き(ステップ運針)と同じですよ」
ということになります。
↑一秒、一秒、止まりながら
秒針が動く
おそらく、多くの方はデッドビートセコンドを見て、「よくある秒針の動き」、と思うかもしれません。しかし、それは、クォーツ時計の場合の話です。自動巻などの機械式時計は、クォーツ時計のような秒針の動きはしないのです。
具体的に言うと、一般的な自動巻時計の秒針は、クォーツ時計とは違い、「1秒、1秒、止まらずに、連続的に動く」のです。
↑自動巻の秒針は連続的に動く
つまり、一般的な常識は、
・一般的な“クォーツ時計”
→1秒、1秒、止まる秒針
・一般的な“自動巻時計”
→連続的に動く秒針
ですが、ジオフィジック トゥルーセコンドは、その常識から外れ、
・ジオフィジック トゥルーセコンド
→“自動巻時計”なのに、1秒、1秒、止まる秒針
なのです。
この点において、ジオフィジック トゥルーセコンドは、「見る人を驚かせる要素がある」時計なのです。
■自動巻時計をクォーツ時計と同じ秒針にするのは、簡単ではない!
ここまでで説明したように、ジャガールクルトはジオフィジック トゥルーセコンドで、敢えて秒針をクォーツ時計と同じような運針にしました。
ここでは、
「自動巻時計を“クォーツ時計と同じ秒針”にするのは、簡単ではない」
という点を説明します。
↑Cal.770
上の画像は、ジオフィジック トゥルーセコンドの裏蓋の画像です。透明のガラス越しに、ジャガールクルトの自社ムーブメントCal.770が見えます。Cal.770は、新たに作られたムーブメントで、その特徴はもちろん「デッドビートセコンド」です。下に、スペックを書き出します。
<cal.770のスペック>
部品数:275個
振動数:毎時28,800振動
パワーリザーブ:40時間
厚み:6.57mm
テンプ:ジャイロラボ
Cal.770は、振動数も一般的なハイビートで、パワーリザーブも昔ながらの“約1日半”相当です。しかし、テンプに「ジャイロラボ」という新たな形状のものを持ち込み、空気力学的に有利なテンプを搭載しています。
もちろん、ジャイロラボを採用したこともCal.770の注目点のひとつですが、私としては、“部品点数”に注目すべきだと思います。なんと、シンプルな“3針+デイト”のムーブメントでありながら、部品点数が「275個」もあるのです。比較対象を挙げるなら、従来のジャガールクルトの“3針+デイト”ムーブメントのCal.899でしょうが、こちらは部品点数「219個」です。比較をすると、いかにCal.770の部品点数が多いかわかります。
では、「なぜ、部品点数が増えたのか」という点です。これは、いろいろな要因がありそうですが、最大の要因は、
「デッドビートセコンドを搭載したから」
でしょう。
実際にムーブメントを見ても、Cal.770は、“基本的な歯車の構造部”(基本輪列)以外に、“デッドビートセコンドにするための歯車の構造部”(デッドビートセコンド輪列)をもっています。イメージにすると、ムーブメントの文字盤側に基本輪列があり、裏蓋側にデッドビートセコンド輪列があるイメージです。
少しマニアックに説明します。デッドビードセコンドを実現するには、自動巻時計の“主ゼンマイの解ける力”を、1秒、1秒、分割する必要があります。そのために、秒針まで至る歯車の間に“特殊な装置”を設けています。それが、デッドビートセコンド輪列の正体です。
その“特殊な装置”について少し触れると、デッドビートセコンド輪列では、ガンギ車の同軸にある星型歯車(スターホイール)に棒状部品をかませて、歯車の連続的な力を分割しています。そして、その輪列内には、バネ入りの専用歯車が組み込まれていて、主ゼンマイの力のカウンターパワーとして、その連続的な力の分割に貢献しています。
ちょっと難しい話ですので、これを説明するのは簡単ではありません。私なりに補足をすると、この連続的な力の分割方法は、基本輪列の“調速脱進機”と同じように考えると分かりやすいかもしれません。例えば、「星型歯車=ガンギ車」、「棒状部品=アンクル」、「バネ入り専用歯車=ヒゲゼンマイ」と考えるのです。
この説明で、理解していただければ幸いですが、理解できなくても問題ありません。
「自動巻時計を“クォーツ時計と同じ秒針”にするのは、簡単ではない」
ということが伝われば十分です。
■最後に
今回は、ジオフィジック トゥルーセコンドを紹介しました。
シンプルな見た目とは裏腹な、「デッドビートセコンド」というサプライズ機構は、きっと時計愛好家の琴線に触れることでしょう。
そのような面白い作品を生み出せるジャガールクルトに、賞賛を送りたいと思います!
※おすすめ投稿記事
「【世界に500本しかない歴史的名作】ジャガールクルト「レベルソ トゥールビヨン」(レベルソ コンプリカシオン第2弾)」
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