7.6.2019
なぜ今、ゼンマイで動く機械式腕時計が人気なのか?
Komehyo
ブログ担当者:須川
■なぜ今、ゼンマイで動く機械式腕時計が人気なのか?
現在は、スマートフォンなど携帯電話の普及で、腕時計をしていなくても外出先で時間を知ることができます。そのため、「腕時計はいらない」という意見の方も増えています。
↑現在はスマートフォンで時間が分かる
しかし一方で、現在は、ロレックスやオメガなどの高級腕時計の人気も高まっています。実際、1970~80年代はスイスの高級時計メーカーの多くは倒産の危機にあったほど凋落しましたが、その時期から比較すると、今は多くの人がスイスの高級時計に憧れをもち購入する人が増えています。
↑現在は高級腕時計の人気も高い
つまり、「腕時計はいらない」という意見がある一方で、「高級腕時計が人気」という現象も起こっているのです。特にその高級腕時計については、ロレックスやオメガなど、ゼンマイで動く“機械式時計”の需要が高い現象を感じます。
では、なぜスマートフォンなどで時間が分かるにもかかわらず、高級腕時計を購入する人が多いのでしょうか?
その答えは、「現在の機械式腕時計が、どのような存在なのか」を考えると理解できます。以降で、詳しく説明します。
■“機械式腕時計”がもつ3つのメリット
今回は、現在の“機械式腕時計”の存在を明らかにすることによって、「なぜ機械式腕時計が人気なのか」を説明したいと思います。
結論から言うと、機械式腕時計の存在は、
①時間を知る装置
→時間を知ることができる基本機能
②より便利な時計
→他の行動をしながらでも時間を確認できる
③ステイタスシンボル
→所有することの特別感がある
という3つの点で説明できます。
まず、機械式腕時計の存在を知るには、それ以外の“携帯時計”と比較することが近道でしょう。下で、“携帯時計の種類とメリット(便益)”を紹介しますので、それぞれを比較してみましょう。
まず、“携帯時計”についてですが、これは「持ち運びができる時計」のことです。持ち運びができる時計は、古くはトラベル用クロックなどもありますが、今回は懐中時計以降を対象にしました。そして、携帯電話(スマートフォン)も“時計機能”がありますので、携帯時計に含めています。
歴史的に登場する携帯時計の順番は、
「懐中時計」
↓
「機械式腕時計」
↓
「クォーツ式腕時計」
↓
「携帯電話」
です。
説明します。はるか昔は、外出先で使う時計は、ポケットに入れて持ち歩く「懐中時計」でした。もちろんこれは、ゼンマイで動く機械式懐中時計です。そして、20世紀に入って、腕につける「機械式腕時計」が普及するようになり、1970年代以降は、電池で動く「クォーツ式腕時計」が普及します。
↑ポケット内で持ち歩く懐中時計
そして、1990年代からは「携帯電話」が普及し始めます。この携帯電話の普及は、携帯時計に大きな変革をもたらします。それは、「腕時計がなくても時間が確認できるようになった」ことです。
携帯電話が普及した時点で、多くの人が「時間を知る装置」を持ったことになります。そのため、通常の発想であれば、腕時計は製品のライフサイクルを終えたことになるでしょう。現に時計の歴史は、「機械式腕時計の登場」が懐中時計を淘汰し、「クォーツ式腕時計の登場」が機械式腕時計を淘汰してきました。
しかし実際は、「携帯電話の登場」が腕時計を淘汰することはありませんでした。つまり、携帯電話が普及した以降も、まだまだ多くの方が腕時計を使っているのです。
“携帯電話の普及以降にも腕時計が使われる理由”を考える場合、「携帯電話にはなくて、腕時計にはある要素」を考えればよいでしょう。では、先の「携帯時計の種類と便益」の表を、今一度見て下さい。
この表を見ることで、「携帯電話にはなくて、腕時計にはある要素」がよく分かります。その要素のひとつは、腕時計には「他の行動をしながらでも時間を確認できる」メリットがあることです。
↑他の行動をしながらでも時間を確認できる
もうひとつの「携帯電話にはなくて、腕時計にはある要素」は、機械式腕時計に限った要素ですが、ステイタスシンボルとしての要素です。つまり、“所有する特別感”があることです。
このステイタスシンボルという要素について、少し説明をします。まず、時計の誕生経緯を見ると、“一部の有力者が持つ”ことから始まりました。例えば、寺院や大聖堂の塔時計はその代表例です。つまり、最初は支配層が時計を所有するようになり、その後、多くの富裕層も時計を所有するようになるのです。そして、懐中時計の時代になると、より多くの人々が時計を所有するようになります。しかし、懐中時計の時代も、まだ時計は、“富裕層が持つもの”でした。
つまり、昔から「時計は、庶民ではなく富裕層や支配層が所有する特別なもの」でした。
その理由は、手作業で作る機械式時計の生産数は少なく、高価だったからです。しかし、どんどんと製造の効率化が進み、徐々に、一般の方にも時計が普及するようになります。その普及が決定的に進んだのは、「クォーツ式腕時計の登場」によるものです。クォーツ式腕時計は、手作業の工程が少なく、ほとんど機械生産が可能です。つまり、大量生産ができるのです。クォーツ式腕時計は安価で普及し、“子供でも時計が持てる時代”が到来しました。
↑クォーツ式時計は安価で普及した
子供でも時計が持てるような時代がくると、もう「時計を持っている」ことに特別感はありません。なぜなら、皆がもっているからです。それを象徴するものが、ファッションウォッチの「スウォッチ」かもしれません。クォーツ腕時計は皆がもつものですので、ファッション化が進み、“デザインでの差別化”が基本的な戦略になったのです。
そのファッションアイテムと化したクォーツ式腕時計に反発して復権したのが、機械式腕時計です。
つまり、クォーツ式腕時計という製品の登場で失われた、“所有することの特別感のある時計”を、再び富裕層が求めたのです。クォーツ式腕時計は「安価で大量生産できる」点が特徴と考えると、機械式腕時計の「高価で生産数が限られている」点が評価されるのは頷けます。
その後、携帯電話が普及する時代になっても、現象は同じです。携帯電話を所有することでは、“所有することの特別感”は得られませんので、やはり機械式腕時計に需要があるのです。
これが、今でも機械式腕時計が人気である理由です。
■最後に
今回は、「機械式腕時計が人気である理由」について、私の考えを書きました。それは、機械式腕時計が、クォーツ式腕時計や携帯電話にはない「ステータス性」を持っているからです。
しかし、もちろん人の意見はそれぞれで、「時間さえ分かれば良い」という考えの方は、携帯電話やスマートフォンがあれば十分と考えるでしょう。そして、「ステータス性はいらないけど、仕事中などに気軽に時間をチェックしたい」という方は、クォーツ式腕時計を選ぶでしょう。それも、しっかりとした考えです。
ただ、特に男性の方は、「男性が身につける、唯一の“不自然ではないアクセサリー”が腕時計」という考え方も浸透しており、腕時計にこだわる男性が多いことも事実です。その方々は、「腕にロレックスを…」「腕にパテックフィリップを…」と憧れるのです。
今回は以上です。
この投稿が、“携帯時計”について、皆さんがどのようなポリシーを持っているのか、整理できる機会になれば幸いです。
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