高級腕時計の時計通信

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3.5.2019

【時計の基礎知識】ご存知ですか?「スモールセコンド」と「センターセコンド」という時計用語

Komehyo

ブログ担当者:須川

 

今週は、時計業界で使われる独特な用語を紹介しようと思います。

 

今回取り上げるのは、「スモセコ」と「センセコ」という用語。

 

実は、この用語は略語であり、それぞれ「スモールセコンド」と「センターセコンド」を表します。ただし、省略表現を止めてフルスペルで表現しても、きっと一般の方にとっては、「意味不明」な言葉だと思います。

 

そこで、今回は、この「スモセコ」「センセコ」について紹介させていただきます。きっと、この言葉が使われる背景を知ると、“高級時計の世界のこだわり”に触れることができると思います。是非、最後まで読んでみてください。

↑「スモセコ」と「センセコ」

※画像はパテックフィリップのカラトラバ

(左:Ref.5196、右:Ref.5296)

 

 

 

 

 

 

■「スモセコ」と「センセコ」とは?

 

では、「スモセコ」と「センセコ」について説明します。前提として押えておきたい点ですが、今回の話は、時計の“秒針の位置”の話です。

 

まず、秒針がない“時針と分針だけの時計”は、「2針」と呼ばれます。これは、ドレスウォッチによく採用されるタイプです。そして、“時針、分針、秒針がある時計”は、「3針」と呼ばれます。現在ではこちらの方がメジャーだと思います。3針時計は“秒針”を備えていますので、高い精度を売りにする時計の場合は、基本的にこちらのタイプを選択します。

 

そして、「3針」の時計は、“秒針を取り付ける場所”によって種類があります。それが、今回の「スモセコ」と「センセコ」です。次をご覧ください。

 

 

 

①スモールセコンド(スモセコ)

冒頭でも書きましたが、スモセコは「スモールセコンド(ハンド)」のことです。「スモール」は「小さい」、「セコンド」は「秒」、「ハンド」は「針」という意味です。つまり、“小さい秒針”という意味です。実際に、和訳で「小秒針」という場合もあります。

一般的に、スモセコは、文字盤の6時位置に置かれることが多いです。しかし、モデルによっては、9時位置など、他の場所に置かれることもあります。懐中時計の時代には、「レピーヌ式」や「サボネット式」と呼ばれるタイプがあり、リューズ位置とスモセコ位置の関係は、今よりも注目される要素だったように感じます。

 

例えば、ETA社の6497/6498(通称“ユニタス”と言われるムーブメント)は、スモセコの位置の違いで2つのバリエーションを設けています。腕時計にこのムーブメントを乗せる場合なら、Cal.6497が“9時位置スモセコ”、Cal.6498が“6時位置スモセコ”ということになります。

↑同じムーブメントの秒針位置違い

左:パネライ「ルミノールマリーナロゴ」

右:モンブラン「1858マニュアルスモールセコンド」

 

 

 

②センターセコンド(センセコ)

こちらも冒頭で書きましたが、センセコは「センターセコンド(ハンド)」のことです。「センター」は「中央」という意味ですので、“中央秒針”という意味になります。このタイプは、「中3針」と言われることもあります。

スモセコは、“中央以外に秒針を付ける”ということですので、「どこに付けるか」という要素が生まれました。しかしセンセコは、“中央に秒針を取り付ける”ということですので、「秒針の位置が・・・」という話題にはなりません。強いて言うならば、ムーブメントの設計で種類があるぐらいです。通常は“4番車”という歯車が秒針用歯車になりますが、4番車が中央にある設計であれば「ダイレクトセンターセコンド」、4番車が中央にない設計であれば「インダイレクトセンターセコンド」です。

 

 

 

 

 

 

■時計愛好家には、秒針によるこだわりがある!

 

今回、スモセコとセンセコのことを取り上げましたが、実は、皆さんに伝えたいことがあって書きました。

 

それは、「一部の時計愛好家は、秒針によるこだわりをもっている」ということです。

例えば、皆さんは、この上の画像の2つのモデルのうち、どちらがバランスが良いと感じるでしょうか?特に、秒針の位置に注目して判断してみてください。

 

実は、この画像のモデルは、どちらもパテックフィリップのカラトラバで、上が「Ref.96」、下が「Ref.5196」という型式です。もちろんいろいろな意見があると思いますが、愛好家がよく口にするのは、次のようなものです。

 

「Ref.96はバランスが最高」

 

「Ref.5196は、スモセコ位置が中央に寄り過ぎ」

 

これは、大型化したカラトラバであるRef.5196が、“昔ながらの小ぶりな大きさのムーブメント”を採用しているという事実からも、明らかに言えることです。

 

例えば、人間の顔のパーツも、少し位置が変わるだけで、別人のように感じると思います。それと同じです。時計愛好家は、時計のフェイスに対して、「イケメン」「アンバランス」のような評価をすることがあるのです。それは、たくさんの時計を見てきた審美眼がなせる技です。

 

また、歴史上、センセコが主流になるのは近年になってからです。

 

大まかに時計史の流れを捉えると、

 

“手巻式+スモセコ”

→伝統的

 

“自動巻式+センセコ”

→現代的

 

というイメージで良いでしょう。

つまり、時計愛好家にとって、「スモセコかセンセコか」という点は、「クラシカルかモダンか」という点に繋がる判断要素にもなっているのです。

 

このように、“秒針の位置”は、時計愛好家にとって、時計を評価する1つのチェックポイントになっています。

 

 

 

 

 

 

■最後に

 

今回は、「スモセコ」「センセコ」について紹介しました。そして、一部の時計愛好家は、“秒針の位置”にも注目して時計を評価していることも、併せて紹介しました。

 

今回は特に“3針”時計について書きましたが、もっと話を膨らませると、クロノグラフのインダイヤルの位置の話にも繋がります。

 

例えば、ロレックスのデイトナは2000年にモデルチェンジを行いますが、その際にインダイヤルの位置を微妙に変更します。具体的には、3時と9時のインダイヤルの位置を、少し上に動かしたのです。

↑インダイヤルを上げるロレックス

 

他の例としては、パテックフィリップがあります。パテックフィリップはデイトナと逆で、自社製クロノグラフを作り上げた際に、インダイアルを下げました。これらの例で分かるように、時計愛好家だけでなく、メーカー側も“針の位置”にこだわっているのです。

↑インダイヤルを下げるパテックフィリップ

 

これまで時計の“針の位置”まで気を配らなかった方も、是非、今後は気にして見るようにしてみてください!

 

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