15.2.2019
【周りに話したくなるロレックス知識】ロレックスが今頑張っていることは、「3200化」! ~ロレックスの未来予想図~
Komehyo
ブログ担当者:須川
皆さんの周りで、ロレックス(ROLEX)が話題にのぼったとしましょう。その時に、「今のロレックスの状況って、○○なんだよ」と話すことができると、鼻が高いのではないでしょうか。今回は、そのような時のお役立ち知識として、「周りに話したくなるロレックス知識」をテーマに書かせていただきます。
このテーマに対する具体的な内容として、今回は「ロレックスが今頑張っていること」を紹介させていただきます。
ロレックスが頑張っていることとは?
先に結論を言っておきます。実は現在、ロレックスは「3200化」を頑張っています。ただ、これを聞いて、多くの方は「3200化?」と理解が追いつかないかもしれません。もちろん以降でしっかり説明させていただきますので、是非最後まで読んでみてください。
■ロレックスが頑張っている「3200化」とは何のこと?
では、最近のロレックスの動きである「3200化」について理解していただくために、近年登場したロレックスの新モデルを紹介します。まずは、下をご覧ください。
<近年登場したロレックスの新モデル>
2015年
・新型デイデイト40mm
(228238など/Cal.3255)
2016年
・新型デイトジャスト41mm
(126333など/Cal.3235)
2017年
・新型シードゥエラー
(126600/Cal.3235)
2018年
・新型GMTマスターⅡ
(126710BLROなど/Cal.3285)
・新型ディープシー
(126660/Cal.3235)
・新型デイトジャスト36mm
(126233など/Cal.3235)
もちろん、上で紹介した新モデル以外にも、登場した作品はあります。ただ今回は、「3200化」について関係あるもののみを抜粋しました。
私が注目してもらいたい点は、作品紹介の中に書いた「Cal.○○」という部分です。これは、搭載される内部の機械、つまり、ムーブメントの種類のことです。それらを見ると、全て「Cal.32~」となっているのが分かります。
要するに、「3200化」とは、ムーブメントをCal.3200系に置き換えていることなのです。
実は、従来のロレックスの基幹ムーブメントは、「Cal.3100系」と呼ばれる種類でした。その状況が、2015年の「Cal.3200系」の登場により変わってきました。2015年から2018年の新作モデルを見ても、毎年何かのモデルをCal.3200系に置き換えているのです。これが、近年のロレックスの動向です。
■なぜロレックスはムーブメントを「Cal.3200系」に置き換えるのか?
では、なぜロレックスは「3200化」、つまり、「Cal.3100系→Cal.3200系への移行」を行うのでしょうか?
その答えは単純で、「従来の基幹ムーブメントであるCal.3100が時代遅れになってきたから」です。少し説明しましょう。
パソコンやスマートフォンでイメージすると分かりやすいかもしれませんが、機械ものは、時代とともにスペックを向上させます。例えばパソコンのCPUなら、「Core 2 Duo」「Core i3 」「Core i5 」「Core i7 」などと、どんどんと性能が向上したものが登場しました。そしてI-PHONEのCPUの場合なら、I-PHONE5の時代は「APPLE A7」でしたが、最新のI-PHONE XSは「APPLE A12」になっています。
パソコンやスマートフォンの場合は、“処理速度の向上”が主な目的で、内部を置き換えていきます。一方、ロレックスなど機械式時計の場合は、主に“精度”や“ゼンマイ持続時間”の改善のために、ムーブメントを置き換えていきます。では、ロレックスが「Cal.3100系→Cal.3200系」にしたときに、どのような改善があったか見てみましょう。
●Cal.3100系
・登場:1989年~
・振動数:28800振動/時
・ゼンマイ持続時間:48時間(※1)
・基本精度:スイス公式クロノメーター相当(※2)
※後年、“高精度クロノメーター”という社内基準に移行します(※3)
●Cal.3200系
・登場:2015年~
・振動数:28800振動/時
・ゼンマイ持続時間:70時間
・基本精度:スイス公式クロノメーターの2倍
上のスペックを見ると、Cal.3100系からCal.3200系に変わることで、
・ゼンマイ持続時間が約1.5倍(48時間→70時間)
・基本精度が2倍
になるということが分かります。
スイス公式クロノメーターの精度基準は、「+6~-4秒/日以内」です。その2倍というと、とんでもない精度です。精度については、もともと高精度だったところをさらに超えてきたのがロレックスらしいです。なぜなら、ロレックスは歴史上、「機械式腕時計を実用化した第一人者」という存在だからです。この改善については、「精度を追求する」というアイデンティティをもつロレックスの性(さが)なのでしょう。
そして、重要な点が、ゼンマイ持続時間の改善です。私の意見としては、この「ゼンマイの持続時間の改善」こそが、ロレックスがムーブメントを刷新する最大の動機だと思います。なぜなら、現在の時計業界では、自社製ムーブメントのゼンマイ持続時間は「約70時間」が標準になってきているからです。
ここで、分かりやすいように、他社の自社製ムーブメントのゼンマイ持続時間を見てみましょう。
<ロレックス以外の自社製ムーブメントのゼンマイ持続時間>
・ブライトリング/Cal.01
→70時間以上
・グランドセイコー/Cal.9S65
→72時間
・パネライ/Cal.P.9000系
→72時間
・ウブロ/Cal.HUB1242
→72時間
・オメガ/Cal.8500/8900
→60時間
↑グランドセイコー/Cal.9S65
このように、最近の各社の自社製ムーブメントは、70時間ほどゼンマイが持つものが多い状況なのです。オメガは少し劣りますが、それでも60時間あります。この状況に対して、ロレックスはデイトナに搭載されるクロノグラフムーブメントは72時間のスペックをもっていますが、通常の3針時計はずっと「約48時間」のスペックでした。これは、ETA社の一般ムーブメントと同等のスペックで、従来の標準値のままなのです。
つまり、ロレックスは他社に対して、ゼンマイ持続時間の点で劣っていたのです。
業界のトップランナーであるロレックスが、この状況を「良し」とするはずがありません。そこで、Cal.3200系を開発し、他社と同等のゼンマイ持続時間を実現しながら、精度面で上回るムーブメントを開発したのです。これで、ロレックスは自社製ムーブメントのスペックにおいて、“業界トップクラス”の位置に着けたのです。
■最後に
今回は、「ロレックスが今頑張っていること」として、“3200化”を紹介しました。この話を知っていれば、もし皆さんの周りでロレックスの話題があったときに、
「ロレックスって今、頑張って中の機械を新しいものにしているんだよ!」
と、言うことができます。
さらに、“ロレックスの未来予想図”も描けるでしょう。それは、まだ“3200化”が道半ばであることから、見えてくるのです。つまり、「サブマリーナ、エクスプローラーなど、まだ“3200化”が済んでいないシリーズに、今後、Cal.3200系を搭載させる」と、容易に予想できるのです!
<注釈>
※1・・・「ゼンマイ持続時間」は、その時間が長いほど、より実用性が高くなります。少し説明します。自動巻式の腕時計であれば、基本的に、着用している日に“ゼンマイの巻き足し”が起こります。しかし、着用しない日が続くと、ゼンマイが全て解けて止まってしまいます。分かりやすいように、「腕時計を月~金曜日のみ使い、土日には使わない」という行動習慣の方で考えてみましょう。ゼンマイ持続時間が48時間の場合、金曜の夜に腕時計を外したとすると、日曜日の夜までには時計が止まることになります。そのため、また使う時に、時刻合わせを行う必要があります。しかし、70時間持続する場合ならば、週明けの月曜日に腕時計を使おうとしたときに、まだ時計が動いているのです。
※2・・・「クロノメーター」とは、外部の公的機関による時計の“精度”検査です。スイスの時計であれば、スイス公式クロノメーター検査協会(COSC)という機関が行います。
※3・・・「高精度クロノメーター」は、2015年以降に行われるようになった、スイス公式クロノメーターよりも厳格な基準を設定した“ロレックス独自の社内検査”のことす。ムーブメントだけで行われるスイス公式クロノメーターもパスした上で、さらにケースに収めた状態での検査も行います。
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