7.9.2018
【玄人のみが知る隠れた名作】ジラールペルゴ「ヴィラ・マルガリータ」 ~IWCのポルトギーゼに匹敵する美しい時計~
Komehyo
ブログ担当者:志津
今週は、時計玄人の方にしか知られていない“隠れた名作”を紹介させていただきます。
それは、ジラールペルゴ(Girard-Perregaux)の「ヴィラ・マルガリータ」という時計です。このモデルは、1999年に日本限定で登場した、大変希少な存在です。
↑ヴィラ・マルガリータ
私は、このヴィラ・マルガリータを「IWCの名作“ポルトギーゼ”に匹敵する時計」だと考えています。
それほどの作品なのです。実際に、私の周りにいる目の肥えたスタッフからも、ヴィラ・マルガリータは“隠れた名作”として評価されています。しかし問題は、ヴィラ・マルガリータがとてもマイナーな存在であることです。IWCのポルトギーゼに比べると、よほど時計に詳しい人以外には、あまり知られていないでしょう。
「そんな“隠れた名作”を表舞台に立たせてあげたい」
そのような想いから、今回はジラール・ペルゴの「ヴィラ・マルガリータ」を紹介しようと考えました。是非、最後まで読んでみてください。
■1990年代ジラールペルゴのイメージ
私にとってヴィラ・マルガリータは、「1990年代に突然現れた、“ジラールペルゴらしからぬモデル”」というイメージです。
この私のイメージを理解していただくためには、“1990年代のジラールペルゴ”のイメージを掴んでいただく必要があります。少し“1990年代のジラールペルゴ”を見てみましょう。
1990年代のジラールペルゴは、シンプルな「フラットウォッチ」、クロノグラフの主力である「GP7000」、トノー型の「リシュビル」などのレギュラーシリーズがありました。
↑1990年代のレギュラーシリーズ
そして、現在の主力に成長する「ヴィンテージコレクション」も登場します。また、「フェラーリとのコラボレーションモデル」を投入したり、「自社ムーブメントの開発」にも取り組んでいた時代でもあります。
↑上段:ヴィンテージコレクション
下段:フェラーリモデルと自社ムーブメント
このように、ジラールペルゴは1990年代に活発な活動を見せています。つまり、多くのモデルを栄枯盛衰させながら「レギュラーラインの確立」に注力し、同時に、様々なチャレンジを行うことで「魅力的な時計づくりをするブランド」というアピールにも注力していた時代だったと言えます。当時の時計雑誌を見ても、ジラールペルゴは現在と比べるとかなりの頻度で露出していることからも、その状況が伺えます(※1)。
要するに、1990年代のジラールペルゴからは、「新しい作品と話題をたくさん生み出す」という姿勢を感じるのです。ただし、この姿勢をとるために、「“ひとつのモデルに対する作りこみ度”は高くない」という印象があることも事実です。
■「ヴィラ・マルガリータ」の登場
上で1990年代のジラールペルゴの話をしました。その年代の最後の年である1999年、ジラールペルゴは突如として「ヴィラ・マルガリータ(Ref.4945)」を発表します。
↑シルバー:120本限定
↑ブラック:50本限定
このモデルは、創業からの歴代モデルを展示したプライベートミュージアム「ヴィラ・マルガリータ」のオープン記念として作られたもので、日本限定モデルとして発表されました。生産本数も少なく、シルバーダイヤルが120本、ブラックダイヤルが50本。まさに希少な限定モデルとして作られたのです。
↑裏蓋にはミュージアムの姿が彫刻される
いかがでしょうか?ヴィラ・マルガリータから、1990年代のジラールペルゴ作品と印象の違いを感じませんか。先に「1990年代のジラールペルゴは、“ひとつのモデルに対する作りこみ度”は高くない」と述べましたが、ヴィラ・マルガリータはとても「高級感」があり、総合的に「美しさ」を感じる時計だと思います。
そして、ヴィラ・マルガリータのデザインは「クラシカル」です。1990年代のジラールペルゴからは、「新しい作品と話題をたくさん生み出す」という姿勢を感じていましたが、その逆を行くような「落ち着きのあるデザイン」です。
これらの理由で、私にとってヴィラ・マルガリータは、「1990年代に突然現れた、“ジラールペルゴらしからぬモデル”」なのです。
■ポルトギーゼに匹敵!「隠れた名作」ヴィラ・マルガリータ
では、ヴィラ・マルガリータが“名作”である理由を挙げたいと思います。
ヴィラ・マルガリータが名作たる理由で、最も大きな要素は、何といっても「総合的な美しさ」にあります。
・美しい形状のケース
・クラシカルな横目3カウンタークロノグラフ
・ジラールペルゴらしいロングサイズのラグ
・カーブ形状が与えられた風防
・丁寧に仕上げられた針と文字盤
・ブレゲ数字の植字インデックス
本当に隙がありません。総合的に見ても、「デザインのバランスが美しくとれている時計」であると思います。当時のジラールペルゴのクロノグラフ(ステンレス製)はメーカー価格が40万円前後のイメージですが、ヴィラ・マルガリータは当時55万円でした。とてもこだわって作ったのでしょう。
個人的な意見ではありますが、ヴィラ・マルガリータの「美しさ」「高級感」は、IWCの名作“ポルトギーゼ”に匹敵すると感じます。
↑左:ヴィラ・マルガリータ
右:ポルトギーゼ
ヴィラ・マルガリータも、ポルトギーゼ(クロノグラフ)も、クラシカルな革ベルトのクロノグラフです。信頼のあるETA社製をベースムーブメントに採用している点も同じです(キャリバーは異なります)。そして、登場のタイミングも近く、ポルトギーゼは1998年、ヴィラ・マルガリータは1999年です。1990年代に登場した“上質なクロノグラフ”として、どうしても私はこの2つのモデルを比較してしまうのです。
ただし、共通点の多いこの2つのモデルですが、ヴィラ・マルガリータは生産数に限りがあり、その存在は大きなものになりませんでした。一方、ポルトギーゼはその美しさと高級感を武器に、大ヒットモデルとして現在も大きな存在感を放っています。
もちろん私も、ヴィラ・マルガリータの存在感を一気に高めることは難しいことは分かっています。ただし、ヴィラ・マルガリータは、その存在を証明する決定的な武器をもっています。それは、いわゆる「百聞は一見にしかず」という武器です。高い質感、高級感、そして秀逸なデザインバランスが売りなモデルがゆえに、その実力で存在感を証明できます。
つまり、ヴィラ・マルガリータの素晴らしさは、「見れば分かる」ということです。
■最後に
今回は、ヴィラ・マルガリータが名作であることを主張するために書いてきました。もちろんヴィラ・マルガリータは、合計で170本しか作られていない日本限定モデルのため、“隠れた名作”になってしまっています。私は、ポルトギーゼのような他の名作たちの影に埋もれてしまっているのが残念でなりません。
しかしヴィラ・マルガリータが、「突然変異かのように生まれた、“当時の水準を超える上質なクロノグラフ”」であることは、間違いのない事実です。是非、皆さんにもその魅力を分かっていただけると嬉しいです!
また、当ブログでは“1980~1990年代ごろの名作”を「ネクストヴィンテージ」と呼んでいます。この秀逸なデザインをもちながら日の目をみることのなかったヴィラ・マルガリータに、是非、「ネクストヴィンテージ」の称号を与えたいと思います。
※1・・・前述のように、1990年代のジラールペルゴは“活動期”でしたが、2000年代以降は“安定期”に入った印象です。2000年代以降のメディアの注目度、製品バリエーション数を考えると、少しその存在感が薄れた印象を受けてしまいます。また“活動期”に入ることを期待しています。
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