14.6.2018
ヴァシュロンコンスタンタンの世界観を理解するなら、「コメモレーション」モデルから!! ~其の一、「コメモレーション」とはどんなモデル?~
Komehyo
ブログ担当者:須川
高級時計の世界で“世界三大メーカー”に数えられるヴァシュロンコンスタンタン(Vacheron Constantin)。
↑ヴァシュロンコンスタンタン
「パトリモニー」
私がヴァシュロンコンスタンタンに対して抱くイメージですが、“本物志向の時計愛好家”に受け入れられている印象があります。それが、特徴かもしれません。きっと、同社の持つ独特の世界観が、その愛好家の方々を魅了しているのだと思います。
しかし一般の方にとっては、きっとヴァシュロンコンスタンタンは遠い存在なのかもしれません。実際に、一般の高級時計所有者の方が、「パテックフィリップやオーデマピゲよりも、ヴァシュロンコンスタンタンを優先的に選ぶ」という状況は少ないと感じます。
私は、「なぜ一般の方にとって、ヴァシュロンコンスタンタンがなぜ遠い存在なのか?」と、その理由を考えてみました。そして、私はその理由に思い至りました。単純に、「一般の方にとって、ヴァシュロンコンスタンタンはよく分からないブランドだから」という理由だと思います。
そこで、私からの提案です。
ヴァシュロンコンスタンタンの世界観を理解するために、「コメモレーション」モデルを把握してはどうでしょうか
↑「コメモレーション」モデル
「コメモレーション」モデル(以下、コメモレーション)については後ほど紹介しますが、私は皆さんに、このモデル知っていただきたいです。
なぜなら、例えばこのモデルを音楽CDに例えると、
“ヴァシュロンコンスタンタンのベスト盤”
というイメージだからです。
つまり、このモデルを知ると、ヴァシュロンコンスタンタンの世界観がよく分かるのです。
では、以降で掘り下げてコメモレーションを紹介します。今回は前編と後編に分けますが、この前編では「コメモレーションとはどんなモデル?」という点を紹介します。
■コメモレーションとは、どんなモデル?
まずは、「コメモレーションとは、どんなモデル?」という疑問から解消しましょう。
コメモレーションを簡単に言うと、
“その年限定の記念モデル”
であり
“過去のデザインのオマージュモデル”
です。
↑最初のコメモレーション
「モデル230」(1985年)
上の画像のモデルが、1985年に登場した初のコメモレーションです。これは、ヴァシュロンコンスタンタンが創業した1755年から230年を記念したモデルです。実は、コメモレーション(commemoration)は「記念するもの」という意味があり、コメモレーションモデルも純粋に「記念モデル」と表現されることもあります。
つまり、コメモレーションは、基本的に何かを記念してつくられてるモデルなのです。
また、その記念は、“過去のヴァシュロンコンスタンタン”に対する記念です。そのため、デザインが過去のヴァシュロンコンスタンタン作品をオマージュしたものになります。上の画像の「モデル230」も、過去の作品に習ったものです。
そして、この1985年に登場した230周年記念のコメモレーションに続き、1990年に第二弾の235周年記念モデル「ジュビリ」が登場します(※1)。この235周年記念モデルを皮切りに、毎年の恒例としてコメモレーションを発表するようになります。
↑235周年記念「ジュビリ」(1990年)
そして、私たち日本人に嬉しい点として、ヴァシュロンコンスタンタンはコメモレーションに「日本市場向けモデル」を用意します。上のジュビリの画像なら、左の画像が、日本市場向けのタイプです。
戦後以降、日本は大きく経済的に成長しました。さらに、日本人は“手間をかけたもの”や“歴史を紡ぐもの”に価値を見出す気質があります。きっとヴァシュロンコンスタンタンは、「日本は完全にヴァシュロンコンスタンタンに合うマーケット」と考えたはずです。そのため、“日本びいき”とも言える対応である「日本市場向けモデル」を投入したのでしょう。
もちろん上で紹介した日本市場向けモデルは一例であり、様々なモデルで日本市場向けのコメモレーションが登場しました。いつしか、これらのモデルは「ジャパン・コメモレーション」と呼ばれるようになります。
■「コメモレーション」モデルの紹介
全ては網羅できませんが、できる範囲でコメモレーションモデルを紹介します。全て生産数も少なく、なかなか情報が少ないという状況があります。そのため私が整理する中でも、「○○年のコメモレーションと言われている」という、多少曖昧な情報もありました。しかし、そこは勇気を持って、今回は裏付けが取れていない情報も含めさせていただきました。ご了承ください。
<歴代コメモレーション>
※「モデル230」(1985年)、「ジュビリ」(1990年)は先に紹介済みです
↑左「リベルテ」(1991年)
↑右「トゥールドイル」(1992年)
↑左「ルネサンス」(1993年)
↑右「ノスタルジー」(1994年)
↑左「ジュビリ240」(1995年)
※創業240周年記念
↑右「キャビノチェ」(1996年)
↑左「シャンベラン」(1997年)
↑右「クロノメーターロワイヤル」(1998年)
↑左「サブリエ」(1999年)
↑右「ソレイユルバン」(2000年)
↑左「エヴァジオン」(2001年)
↑右「エリタージュ」(2002年)
↑左「デイデイト」(2003年)
↑右「ミレジム」(2004年)
↑左「ジュビレ1755」(2005年)
※創業250周年記念
↑右「エリタージュ」(2006年)
↑「オーヴァーシーズ・クロノデフィメール」
(2007年、挿し色に種類あり)
※他・・・「マルタ・スケルトン」(2008年)、「ダミエノアール」(2009年)
これらの歴代コメモレーションを見て、皆さんはどのように感じられましたか?きっと、「デザインがいろいろある」と感じたのではないでしょうか。
後年のモデルは、例えばオーヴァーシーズシリーズ(1996年初出)をベースにしたりと、過去のオマージュという雰囲気はなくなります。しかし、従来のコメモレーションは、基本的に機械式時計の全盛期(1920〜1950年代ごろ)の作品をオマージュしています。
そのため、コメモレーションは
“過去のヴァシュロンコンスタンタンの歴史的名作”を味わうことができるモデル
なのです。
これが、「コメモレーションとはどんなモデル?」という質問への回答であり、最大の魅力です。現在、コメモレーションは終了となっており、もう新たなモデルは登場しません。そのため、入手する方法は中古市場のみとなります。
◼︎最後に
今回は、「ヴァシュロンコンスタンタンの世界観を理解するために、コメモレーションを把握してはどうか」という私の提案を発端として書いています。その前編として、「コメモレーションとはどんなモデル?」という点に焦点を当てました。
さて後編ですが、
「なぜ、コメモレーションによりヴァシュロンコンスタンタンの世界観が理解できるのか」
そして、
「コメモレーションの代表モデルはどれ」
という点を紹介します。是非、ご覧ください!
※1・・・235周年記念モデル「ジュビリ」は、後にディテールを変更してレギュラーモデルになります。そのため、コメモレーションではないタイプも存在します。
※次回投稿
「ヴァシュロンコンスタンタンの世界観を理解するなら、「コメモレーション」モデルから!! ~其の二、コメモレーションの主役は「シャンベラン」~」
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