16.2.2018
【高級時計を知る】車好きのための腕時計!? ~「ドライバーズウォッチ」って何?~
Komehyo
ブログ担当者:亀田
今回は、高級時計の魅力を知ってもらうために、ひとつ興味深い腕時計の種類を紹介しましょう。
皆さんは、「ドライバーズウォッチ」をご存知でしょうか?
例えば、
このような時計です。
時には、「ドライビングウォッチ」と呼ばれることもありますが、要するに
車を運転しながらでも、容易に時刻を確認することができる時計
です。
現在は、自動車のダッシュボードに時計が設置されていることが一般的です。そのため皆さんは、運転中に手首に巻かれた腕時計を見なくても時刻がわかることでしょう。
しかし、今と昔は違います。昔は必ずしもダッシュボードに時計があるとも限りませんでしたし、ダッシュボードクロックが備えられている自動車でも、ゼンマイを巻き上げて使用する時計でした。そのため、昔は運転中に時刻確認をするなら、腕時計が便利だったのです。
そんな状況で登場するのが、ドライバーズウォッチです。とはいえ、皆さんの多くは、「ドライバーズウォッチ?」と首をかしげることでしょう。実はドライバーズウォッチは、今だけでなく、当時もメジャーな存在ではありませんでした。しかし、“車好き”の方は、きっと好奇の目を輝かすことでしょう。
今週は、高級時計の魅力的な一面の紹介として、ドライバーズウォッチに注目したいと思います。
■ドライバーズウォッチの特徴と種類
ではまず、ドライバーズウォッチの特徴と種類を紹介しましょう。
その特徴を把握するために、まずドライバーズウォッチが作られた経緯の紹介です。
ドライバーズウォッチの誕生は、1900年代初頭までさかのぼります。当時、自動車としては、大衆車が登場し始めるころです。特に、フォードが台頭するアメリカでは、どんどん自動車が普及していきます。そして当時、腕時計も、普及過程にあたる時期です。その頃に、「自動車を運転中に、見やすい時計を作って欲しい」という依頼があり誕生したのが、ドライバーズウォッチです。
そのような経緯で誕生したドライバーズウォッチの使命を具体的に表現すると、
「ハンドルを握りながら、そして一瞬の確認で、時刻を読み取りできること」
ということです。
この使命を果たすために、大きく分けると2つの種類のドライバーズウォッチが制作されました。次で、その2つのドライバーズウォッチの種類を紹介しましょう。
①文字盤を傾ける
この画像のモデルは、ヴァシュロンコンスタンタンが1920年代のドライバーズウォッチを復刻させた、「ヒストリークアメリカン1921」(型式82035/000R-9359)です。
一見、文字盤の向きを間違えてつけてしまったかのようなデザインですが、もちろん、意図的に作ったものです。通常の文字盤は“12時が上”ですが、こちらは“12時が通常の2時位置”です。
これは“文字盤を傾ける”ことで、運転中の見やすさを実現したドライバーズウォッチなのです。
このモデルのオリジナルは、1921年、あるアメリカ人が車のハンドルを握ったままでも見やすい腕時計の制作を依頼したことで誕生します。特にアメリカでは左ハンドルが義務付けられていますので、右手でギア操作などを行うため、左手は常にハンドルを握った状態になります。もし一般的な腕時計で時刻を確認しようとすると、どうしてもハンドルを握った左手の腕時計は、“傾いた角度”になります。
そこで、そのハンドルを握ることで“傾いた角度”になってしまう腕時計の角度を補正するために作られたのが、このヒストリークアメリカン1921です。この“文字盤を傾ける”タイプのドライバーズウォッチは、ハンドルを握った左腕の腕時計の文字盤が、ちょうど読みやすい角度になるように作られているのです。ヴァシュロンコンスタンタン以外にも、オメガ、ハミルトン、ウォルサムなど、アメリカで人気のある時計メーカーもこのタイプのドライバーズウォッチを作っていました。
②手首の横側にフェイスをつける
上の画像のモデルは、カルティエのドライバーズウォッチの復刻モデルです。正面からの画像を見るよりも、横からの画像を見る方が、その特徴がわかりやすいかと思います。“極端にカーブしている”のがお分かりいただけるでしょうか。
これは、腕時計のフェイスを、手首の上ではなく、“手首の横側”におくことのできるドライバーズウォッチです。
手首の形状を思い返してみてください。一般的な手首まわりの形は、楕円形(だえんけい)なはずです。つまり、手首の上側はなだらかな曲面で、手首の横側はより強い曲面となっています。その手首の横側の“強い曲面”にフィットするスタイルで作られるのが、このドライバーズウォッチです。この時計を着用するときは、この手首の横側の“強い曲面”の部分に、時計のフェイスをもってくるのです。
例えば、車のハンドルを握り、自分の腕時計を見ます。きっとハンドルを握った時計を見ようとすると、最も目に入る部分は、“腕時計の側面”だと思います。この状況を想定してドライバーズウォッチを作るならば、“側面がフェイス”となる腕時計が理想です。
また、このカルティエのドライバーズウォッチは、留め具の位置も独特です。通常のバンドの留め具は、時計のフェイスの逆側にありますが、この時計はフェイスの6時側に隣接する形で留め具があります。
この“手首の横側にフェイスをつける”タイプのドライバーズウォッチは、カルティエ以外でも作られました。ただし、手首の側面にフィットするドライバーズウォッチを実現するために、カルティエは“フェイスをカーブさせる”方法をとったのに対し、多くの他メーカーは“稼働域のあるラグ(時計とバンドの接合部)を設ける”、または、“縦幅が短いフェイスデザインを採用する”方法をとりました。
■最後に
冒頭でも触れましたが、ドライバーズウォッチはメジャーな存在ではありません。そのため、多くの人が欲しがるような時計ではありません。
では、どういう人が好むのでしょうか?
もちろん、車好きの方が興味をもつ時計だと思います。しかし、“車好き、かつ、時計好き”という方が購入する時計かというと、そうではないと感じます。
私見ですが、ドライバーズウォッチを購入する方は、いわゆる時計コレクターです。色々な時計を手にしてきて、遊び心を持った個性的な一本を求めて選ぶように感じます。もちろん、時計コレクターの方は、ドライバーズウォッチの背景まで知った上で、なのでしょう。
そして最後に一言。今回この投稿を読んでいただいた方は、読む前より高級時計に詳しくなったはずです。
皆さんはもう、
「傾いた文字盤の腕時計」
「手首の横側にフェイスがくる腕時計」
という変わった時計に出くわしても、驚かなくなっているはずですから!
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