高級腕時計の時計通信

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5.9.2017

【番外編】はじめての高級筆記具の選び方 その④~万年筆のボディのバランスについて~

Komehyo

ブログ担当:那須

 

万年筆の世界は奥深いもので、たとえ高価なモデルであっても必ずしも書きやすいとは限らない場合があります。私も万年筆を数本使用していますが、数万円の値段がする高額品よりも数千円クラスの入門モデルの方が書きやすく感じたことが何度もありました。

筆圧やペンの持ち方、使うシーンなどは人により多種多様なので、値段にかかわらず合う・合わないがあることは至極もっともなことだと思います。それでは、自分にいちばんピッタリな万年筆を見つけるためにはどこに着目して選べばよいのでしょうか?

今回は私が考える答えの一つとして、書きやすさを左右する万年筆の「ボディのバランス」について取り上げてみたいと思います。

 

 

 

「ボディのバランス」を語るうえで重要なポイントとして、次の3つが挙げられます。

・軸の太さ

・軸の重さ

・本体の重心(キャップの位置)

それぞれについて見ていきましょう。

 

 

 

◆万年筆の「太さ」は、使うシーンで決める!

使うシーンにより、最適な万年筆の太さ(ここでいう「太さ」とは字幅のことではなく、私たちが字を書くときに握る部分である胴軸の太さのことを指します)は異なります。

例えば手帳などに差して出先でサッと使用したい場合は持ち歩きに適したコンパクトさが求められるため、軸が短く細いものが良いでしょう。逆に長く机に座って文字を書く場合は、多くの著名な作家が太軸の「モンブラン マイスターシュテュック149」を愛用していたという話からも伺えるように、太い軸を持った万年筆の方が疲れにくく適していると言われています

 

 

 

◆重さに大きく影響する、「軸の素材」

ペン軸の素材は、主に次の5つに分類されます。

・樹脂系(レジン・プラスチック・アクリル)
・セルロイド
・エボナイト
・木
・金属

 

この中で最も多く出回っているのはプラスチックなど樹脂系のものです。軽く加工が容易で、年数経過による変化が少ないことが特長です。近年では若年層のユーザーを取り込むため、各社がプラスチックやアクリルを使った手頃な価格帯のものを出しています。

 

↑独自開発のレジンを使用したモンブランの「マイスターシュテュック」

 

 

セルロイドは、プラスチックが発明されるまでその発色の良さから主に使用されていた素材です。長く使用すると素材自体が磨り減っていくという欠点がありますが、独特の手触りの良さや趣きがあり、愛好家の間で根強い人気がある素材です。

 

↑発色が美しいセルロイド軸の万年筆

 

 

エボナイトはゴムの化合物の一種で、加工が難しく製造に高度な技術を要することから最近では少なくなってきている素材です。インクへの耐性が高く万年筆向けの素材である一方、紫外線に弱く劣化しやすい素材のため、漆で表面が加工されたものも多くあります。それゆえ金額的には高価なものが多いですが、筆記具という枠を超えた工芸品としての美しさを味わえます。

 

↑パイロットの「カスタム845」はエボナイトを削り出し漆加工で仕上げた一品

 

 

木製の軸は、人口の素材では得られない温かみのある質感が魅力です。また、使い込むほどに深みが出てくる味わいが魅力的で、愛着の湧く素材ナンバーワンかもしれません。使われている木の種類によっても書き味が異なり、自分だけの1本を求める方向けと言えるでしょう。

↑独特の温かみがある木軸の万年筆

 

 

金属製はたいへん丈夫ですが重量があります。書き味という観点では軸の重さは非常に大切な要素ですが、一般的には、重い金属製のペンは長時間の使用には不向きと言えます。

 

↑シャープな雰囲気をもつ金属製の万年筆

 

使われている素材によってデザインはもちろん、軸の重さが変わってきます。
この5つの素材の中で重さに順位付けをするなら、金属が一番重く、次に木、最後にエボナイト・セルロイド・樹脂の3つ、といった順番でしょうか。

万年筆の軸は、筆圧をかけなくても筆記できるようにするための「重みづけ」の役割も担っていることから、筆圧が高い人には軽め、弱い人には重めの軸の万年筆がオススメです。

一方で、重い万年筆は長時間使用すると疲れてしまうというデメリットもあるため、そこは自分が優先したいポイントに合わせて選ぶとよいと思います。

 

 

 

 ◆キャップは書くときの「重心」を左右する!

万年筆を使用する際、外したキャップをペンのお尻に付けるかどうかで当然重心は変わります。これは実際どうするのが正解なのか疑問を持つ人が多いようですが、実は決まった答えは存在しません。

一般的に、ペンを前の方(ペン先側)で持つ人はキャップを外した方がバランスが良く、後ろの方を持つ人は付けたままが良いと言われています。

ちなみに国産メーカーの万年筆は、キャップを付けたままの方がバランスが良いように設計されているようです。

 

 

 

いかがでしたか?自分にはどんな万年筆が向いているか、何となくイメージできたのではないでしょうか。
少しまとめてみましょう。

 

【使うシーン別】
・断続的な筆記を行う人向け : 軸が細く、軽いものがおすすめ
・長時間の筆記を行う人向け  : 軸が太く、軽いものがおすすめ

 

【筆圧別】
・筆圧が高い人向け : 軸が細く、軽いものがおすすめ
・筆圧が弱い人向け : 軸が太く、重いものがおすすめ

 

 

しかし、どんなにイメージを膨らませたところで、実際にお店で手に持ってみたら思っていたのと全然違った!というのはよくある話です。ここまでのお話を念頭に置いたうえで、店頭で試し書きされることを強くおすすめします。

 

ぜひ、「自分だけの一本」を探してみてください!

 

 

【はじめての高級筆記具の選び方 バックナンバーはこちら】
その①~筆記具の「種類」から選ぶ!~
その②~万年筆 最初の1本の選び方~
その③~万年筆のインク補充形式について~

 

 

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